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報酬エルフとハッピーエンドを目指すたび  作者: くじらのはら
ヴァルハラ編:『幽霊騒ぎ』
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5日目:『発見』sideステラ p.1

(シュヴェスター)の塔 最上階


「あぁ、来たのかぁ」


1人呟く人形のような美貌の少女。


少女、此岸が立つ部屋の奥には鉄格子で区切られた雑な作りの部屋があった。

その中では無造作に積み上げられた人間が幾重にも重なっている。


「彼岸……お姉ちゃんも何か面白いことしてたし、ワタシもなにかしたいなぁ」


此岸はニコニコとした眩しい笑顔で独り言を続けた。

月は赤く輝き、塔の窓から顔を覗かせ少女を見つめている。


そんな夜、思いついたかのように声が上がった。


「そうだ!こうしよう……」


何かを閃き悪い顔をした直後、手を目の前に(かざ)す。


無数の人間の輪郭が淡く輝き、強く光った。


次に目を開けた時、そこには数人の人間が取り残されるばかりで、他の人間の姿は無い。


「アハハ、どうなるかな」


そう呟く少女の目元は醜く歪んだ。





「これからどうする?」


トモカズ達が去ったのを確認し、わたしはアンナに問いかける。


「どうしようか……。外にも出れないし上に上ろうか」


アンナはそう言うとわたしの手を握った。

頭に?を浮かべているとアンナが話し出す。


「ほら、暗いから。はぐれちゃうでしょ?」


縦1本の塔、螺旋階段。どうやって迷うのだろうかと少し疑問が浮かぶが、アンナの善意を無碍にするわけにも行かずそのまま2人で歩き出した。



階段を上っている最中、そういえばとアンナが語り出した。


「昔、キュンストルの4人で森に肝試しに行ったの。2人1組で行動することになっててね、あたしはハルターと一緒だったんだ。その時のハルターはね、普段ビビりなくせに前に出て歩いてくれたんだ」


遠い昔の記憶に思いを馳せるアンナ。月明かりに照らされた彼女の顔はまるで……。


「それでね、ハルターがあたしの手をとって言ったの。"こうしてたらはぐれないよね"って」


キラキラと目を輝かせて、前を向く姿は年端もいかない少女のようだ。


それからの道も、キュンストルの話ばかりで微笑ましかった。




(シュヴェスター)の塔 3階


階段を上り終えた時、目を疑った。


「ひ、と……」


アンナが掠れた声で呟いた。


暗闇に紛れて、人が倒れている。

1人や2人ではない。10、20……か?


「生きてるか確認しよう」


そう告げ人々に近寄るわたしたち。

その足音にもピクリとも反応せず横たわる何人もの人。


大丈夫ですか、と大声を張り上げるも何も反応がない。

近くで見るとその顔、服装には心当たりがあった。



──幽霊騒ぎで攫われた人々。


その特徴に合致する人間ばかりだった。

よく見ると、最初に情報の手がかりとなった老齢の女性もいる。


ここまで動かないとなると、死んでいるのか?


嫌な可能性が頭をよぎる。

その思考を振り払うように、わたしはアンナの手を振りほどいて彼らの首に触れる。


ドクドクとした振動が指を伝った。生きている。


「ステラ……この人たちは……」


アンナが不安そうにわたしの名前を呼ぶ。


「大丈夫だよ、生きてる」


出来るだけその不安を取り除くように穏やかに話す。


生きているのなら、この人々はなぜ動かない?


そもそも攫われたのは皆魔法使いのはずだ。


ならば何故、被害者は逃げてこなかった?

門が開いている時間もあるのだ、逃げられないわけが……。


アーシェだって、魔力が十分以上にある。

本気出せばいくら結界が古代の術式の物だからって物量で押し切れるハズ。


考えても考えても答えに辿り着けない。


わたしに彼らを助けることは出来ないのか?


思考を巡らせる、この時間は無駄だ。早く答えを出さなければ。

だが焦燥感すらも思考を滑らせる原因で。


記憶を全て引っ掻き回す。アレも違う、コレも違う。


なんなんだ、なんでこの人たちは。


そう考えた所で、思考がパッタリと止まった。


─もう、無理だ。


急に、そんな考えが思考を支配した。

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