4日目:『救出作戦』p.8
「お、あったあった。魔法使い相手に肉弾戦はきついからな。」
俺は自分の手によく馴染む剣を手に取った。草原に寝ていた相棒とも呼べる剣。…まぁ、先程の戦闘でぶん投げた物だが。
「アキエダー、見つけたー?」
後ろからアンナが俺を呼んだ。今更だが声の通りが良い。声の調子もいつもの明るいトーンに戻っている。
俺はアンナ、そして他の仲間がいるところへ駆ける。
「あぁ、見つけた。ごめんな、空気壊して。」
俺は先程の発言を詫びる。感動の再会とも呼べる雰囲気を、俺の発言1つで華麗にぶっ壊してしまったのだ。
申し訳なさそうに俯く俺を見たアンナは笑い出した。
「あはは、いいっていいって。ハルターが見つかったことだけでいいし。剣士にとって剣は宝だからね。」
明るくそう言い放ったアンナは愛おしげに、彼女の腰ベルトに挿してある剣を大事そうに撫でる。
彼女の優しさに感激しつつ、俺は口を開く。
「とりあえずハルターは見つかった。アーシェ達の救出だな。」
「そうだね。塔は2本あって、わたし達が4人。二手にわかれて探すのはどう?」
蒼い目をしたステラが提案する。小さいステラの体はよく見ると少し震えているように見えた。上下する肩もリズムが速い。
「ステラちゃん、大丈夫?」
俺が口を開くと同時にそのことを指摘したのはハルターだった。
声をかけられたステラは目を逸らし、一瞬だけ困ったように眉を下げた。
「大丈夫だよ、ありがとう。」
「ステラ、無理しちゃダメだよ?あたしとの約束ね」
アンナが優しくステラに微笑みかける。ステラも呼応してアンナに微笑み返す。
「本題に戻ろう。チーム分けどうしようか」
ステラが話を戻した。
「姉の塔はキュンストル、弟の塔はディユシエルでどうかな」
アンナが提案する。仲間をやっと助けられる期待からか少し頬が紅潮している。
「そうするか。ハルターは塔の中身知ってるか?」
「…あ、オレ、連れ去られてからの記憶があんまりなくて…。」
申し訳なさそうに申告するハルター。目を逸らし、耳は垂れている。
「なるほどな。そこは頼れなくても、パーティメンバーとならチームワークは大丈夫だろ。」
俺はそう言って体を縦に伸ばす。ステラも何かを察知したのか少しだけ体を動かした。
軽く息を吸い、呟く。
「「飛行魔法、展開。」」
直後、浮かび上がる俺とステラの体。キュンストルの2人を見やると目をまん丸にして驚いていた。
「そんな驚くことか?」
俺は疑問を口にする。冒険科で習うよな、いや習ったはずだ。
「そんな驚くことだよ…。」
「オレたちは使えないからね…。」
口々に言うキュンストルの2人。声色や表情は驚きと困惑が隠せていない。
「ステラ、どうする」
俺はステラに問いかける。この状況はシンプルに想定外だ。
「そうだね…。わたしが2人に飛行魔法もかけるよ」
少し考えたステラはそう話すと本を開く
「大丈夫か?無理すると…」
「大丈夫だよ、大丈夫。」
俺の言葉を遮るようにしてステラが口にした言葉は、どこか自己暗示のようにも聞こえた。
「飛行魔法、展開。」
ステラが詠唱すると、アンナとハルターの体は重力を忘れたかのように宙に浮かぶ。
凄い凄いとはしゃぐ姿は幼子のようにも見える。
「じゃあ、行くか。」
向かう先は2対の塔。
もう後戻りはできない。する気なんて微塵もないけれど。
【セーブが完了しました】
「…?」
どこからか声が聞こえた。
思わず後ろを振り返る。
「トモカズ、行くよ。」
ステラの声で再び前を向く。
…気のせいか。
くじらのはらです。
Twitter:@kujirrrranohara




