4日目:『救出作戦』p.6
─空が割れた。そのまま降り注いでくるのは濃紺の空…ではなく、粉々になった結界の破片だった。
結界は1枚の膜のような状態では透明であるが為、空が割れたと錯覚したのだ。
結界のない星空はとても綺麗で、満月がよく見えた
「ここから先はなにがあるかわからないから心構えだけはしておいてね」
ステラからの忠告が入る。ここから先は生きるか死ぬかの戦闘のみだ。
と考えていると突如暴風が彼らを襲う。声を上げる間もなく、地面にしがみつくように剣を刺したり魔法を展開する。
「だ、れだ…!」トモカズが叫ぶ。だがその声は届くことなくかき消される。
ただ、耐え続けるしかないのか。そう思った時、
風の威力は少しずつ弱まり、収束した
「こんばんは、人間。初めまして」
上から声がする。見上げるとそこには、髪を後ろにまとめて、和と中華の民族衣装を混ぜたかのような赤い装束に身を包んだ少女が静かに降下をしていた。
遠くから聞こえる声のはずが、耳元で囁かれたのかと錯覚するほど明瞭に聞こえた。
「ヒッ」と後ろから声がする。アンナの声だ。
チラリと後ろを確認してみると恐怖からが青ざめてしまっているようだ。
「まずは自己紹介かな。アタシは彼岸だよ」淡々と名前だけを名乗る少女。はっきりと聞こえる声だけが不気味で背筋が凍りそうだ。
「お前は何者だ」やっと自分からも声が出た。幸い、声は震えなかった。
「何者?だから、彼岸だよ。梅花姐さんのところで禿をしている…。いや、これは昔の話。忘れて」
どこか悲しそうな顔で話す少女。梅花という女性が関係しているのだろうか。いや、そんなことに思いを馳せているタイミングではない。と気持ちを切り替え、質問をする
「そんなことを聞きたいんじゃない、お前はなんで今ここにいる、なにがしたい」威嚇するように話すトモカズに彼岸は怯える様子を一切出さない。そこの神経回路が焼き切れているかのように不敵な笑みを浮かべ続けるだけだ。
「なにがしたい、か。教えてあげられない。悠長に話している時間もアタシ達にはないから。」
フレンドリーに話していたかと思えば、急にその顔から笑みが消える。何が起こるんだと警戒していると、パチンと乾いた音が鳴った。
─目を疑った。
「あ、あっ、、、。」
アンナが短く声を漏らす。それもそのはずだ。
なぜなら、指を鳴らした音と共に現れたのは満月に照らされた
「ハル、タぁ…。」
─仲間の姿だった。
くじらのはらです。ありふれはミスです、申し訳ございません。
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