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報酬エルフとハッピーエンドを目指すたび  作者: くじらのはら
ヴァルハラ編:『幽霊騒ぎ』
32/40

4日目:『救出作戦』p.4

19:00

「じゃ、あたし一旦帰るね。またあとで」

「またあとでね!」

「またあとで。気をつけて帰れよ」

アンナは一旦帰宅し、後の合流を図ることとなった。玄関からアンナが出ていくのを見送る。

「ご飯作ろっか」

ステラが言う。若干不安そうな声色、眉も下がっている。困ったような笑顔だった

「そうするか。いつもありがとな、ステラ」

いつも家事をしてくれているステラへ感謝の言葉を述べるトモカズ。その言葉からは純粋な感謝だけではなく申し訳なさが見え隠れしている。

「どういたしまして。こちらこそいつもありがとう」

ステラからも感謝の言葉が返ってくる。その言葉を聞いてトモカズは目を見張った。

「ステラは本当に優しいな」

トモカズはそう言うとステラの頭を撫でた

鴉羽のように黒く艶めき、ストンと真っ直ぐ伸びていてクセなど知らないといった様子の髪。純粋に綺麗だなと感じた。

幼い頃、アーシェのこともこんな風に撫でていたなと懐かしさで胸がいっぱいになっていきそのまま夢中で髪を撫で続ける。

くすぐったそうに微笑むステラのことは智和の眼中に無い。


目の前にいるトモカズはさっきからずっとわたしの髪を撫で続けている。

事の発端はアンナが帰った後、突然「いつもありがとう」なんてトモカズが伝えてきたことにある。だからわたしも「こちらこそいつもありがとう」って返した。

少し驚いたような顔を見せたあと物悲しそうに微笑んで「ステラは本当に優しいな」と言ってわたしの頭を撫で始めた。これがおよそ30分前の出来事

どこか薄ぼんやりと心が遠のいてしまったみたいな面持ちで、ずっとわたしの頭を、髪を撫で続けている。アーシェがいなくなったことはトモカズにとってどれほど辛く苦しいことなのか。

わたしには想像もつかないことだった。


さすがにそろそろご飯の支度を始めないと遅れちゃいそうだし、なによりくすぐったさが勝ってきた。

「ト、トモカズ、くすぐったいよ」

そう伝えるとハッと我に返ったみたい



「ト、トモカズ、くすぐったいよ…。」

ふと下からステラの声がした

見てみると、ステラが身動ぎをしている。

その声、行動でハッと我に返った。

「ごめんな、ステラ。嫌だったよな」

謝罪の言葉を述べる。時計をチラリと横目で確認すると時刻は19時37分だった。

「ううん、大丈夫だよ。それより少しは落ち着いた?」

突然のその言葉に核心を突かれた気分になった。

…俺、今焦っていたのか。

気づいた瞬間、過去の行いを恥じた。というか反省した。

だが、ここで気づけたのが幸いだろう。焦燥感に身を任せ戦闘になっていたら目も当てられない惨状を招く可能性すらあった。

「…大丈夫?」

黙りこくる俺に不安そうに声をかけてくるステラ。

「あぁ、心配かけて悪かった。もう大丈夫だ」

トモカズは余裕を取り戻し、いつもの調子で告げる。

するとステラの顔はパッと明るくなり

「よかった、元の調子に戻ったね。」

すっかり安心した表情のステラ。

敵との戦闘の前とは思えないほど平和な時間が流れる。

「あ、もうこんな時間だ。夕飯の支度するね!」

大慌てでキッチンへ駆け込む少女を見つめ、トモカズは微笑んだ。



「獣人、貴方にはアタシたちの仕事を手伝ってもらいます。」

「獣人、貴方の仕事は時間稼ぎです。」

双子の少女、彼岸と此岸が告げる。

「時間稼ぎって具体的になんだ」

ハルターが問う

「貴方の仲間と戦ってもらいます」

彼岸がとても事務的に淡々と告げた言葉はハルターにとって存外驚くべきものだった。

その事実を、アンナたちはまだ知らない


20:30

1時間しないで食卓に並べられたものはハンバーグ

キラキラと輝くデミグラスソース、付け合せにはコーンやカットされたニンジン、ブロッコリーなど色鮮やかな野菜だった。

他にはニンジンとタマネギコンソメスープ、焼いた丸いパン。

いかにも温かいといった様子で湯気が立ちのぼる

「遅くなってごめんね」

ステラから謝罪が飛んでくる

「大丈夫だ、俺がよくわかんねぇことしてたのが悪い。」

トモカズも謝罪する

「冷めちゃう前に食べよ?」

「そうだな、いただきます」

「いただきます!」

2人は元気よく挨拶をして肉厚のハンバーグに手をつけ始める。半分に割ると中から肉汁が滝のように溢れ出し、デミグラスソースと混ざりそうで混ざらないためにソースと肉汁で2つの層になっていた。

1口サイズのハンバーグにデミグラスソースと溢れ出した肉汁をたっぷりつけて頬張ると、熱さでハフハフと息をする羽目になった。それでも頑張って噛んでいると肉の旨みとタマネギの甘さが混ざりあって最高に美味い。

次にトモカズ付け合せのニンジンに箸を近づけるニンジンはオレンジ色に輝く宝石のようで、口に放り込み噛み続けると野菜特有の甘さでハンバーグのこってりさが中和されていく。

スープを1口飲めばコンソメの風味と温かさで安心する。

やはり食事は健全な精神状態の元で行うべきだな、とぼんやり考えるトモカズだった。



「獣人、貴方に食事です」

「獣人、味わって食べなさい」

そう告げられ渡されたのは硬い干し肉と冷えて硬くなったパン。少女達はこれらをローテーブルの上へ置くといそいそとどこかへ消え去ってしまった。

食べるものはこれしかない、と思い口にする

冷えて硬くなったパンは物自体の水分が飛んでいるためボソボソとしていて飲み物が欲しくなる。

硬い干し肉を齧ってみると一度で噛み切るのが困難なほど硬く、何度か角度を変えて噛んでいってようやく一欠片噛みちぎることができた

─なぜこんな生活をしなければならないのか

否、仲間のためだろう。

─仲間を敵にするというのに?

それは最初から伝えられていたことではない

俺は自己答弁をしながら食事ともいえぬ食事を進めた。

くじらのはらです。ハンバーグ食べたくなりますね

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