調査4日目:『救出作戦』p.1
─夢を見た。
衝撃音とともに家が壊され、崩れ。そこらじゅうが燃え上がり、人だったモノが無造作に転がる。
一瞬で多くの命が奪われる。それは、魔法によるもの。
爆風、熱。それは身を焼き尽くす魔の手となり。
木々が薙ぎ倒され、下敷きになるヒト、家の瓦礫に埋もれるヒト、魔族。
熱から逃げるため水辺を探すが、そこにあるのは一瞬で干上がった川や池の窪みだけである。
人も、魔族も。大勢が一瞬にして死んだ
木々は燃えてパチパチと音を立てていた。燃料となったモノは、余すことなく全てがその熱に奪われる。
赤、紅、赤。眼前の全てが赤く染まり、硝煙が満ちて。
負傷した自身も、足を引き摺りながら生き残ったモノを探す。するとそこで、見慣れた白髪の女が、頭から血を流して倒れていた。
近くに寄ると気配を察知したのか、蚊の鳴くような声で話し始める。
「…なぁ、ワタシは…ドコで、ナニを間違えたんだろうか…。」
煙を吸ったのか、掠れた声でそう呟く。
「教えてくれ…■■■■。ワタシは、ナニを間違えた…。」
女の目は、もう光をほとんど捉えていない。
自分は何も答えず、独白を聞き続ける
「あぁ、もうスグ終わりだ……。すまない、■■■■■。ワタシは…道を誤った。選択を、間違えた…。ワタシは、もう、結末を観測することは、叶わない……。キミの、望んだ平穏を、ワタシ、自身の手で、崩してしまった……。なぁ、■■■■。もし、まだ、ワタシのそばにいるのなら……、その力を、使えるのであれば、」
少しずつ、小さくなる声。周りの轟音に掻き消され、聞き取りずらさが増していく。
だが、最期にハッキリと聞こえた、彼女の願い。
「…全てを、赦してくれないか。」
そう言い残し、彼女の瞳には何も映らなくなった。
俺は、彼女の願いを聞き届ける。
そこでハッと目が覚めた。時計を見ると午前3時
早すぎる起床。
先程まで見ていた夢を思い出す。
悲惨な夢だった。血だらけの人々、街。
あの光景は戦争なのだろうか。
どこで間違えた、と言っていた女はきっと…。
纏まらない考え。本格的に目が覚めてきた。
「全然二度寝したいんだけど…。寝れねぇ」
1人呟く。とりあえず、部屋から出て水でも飲むか
そう思い、ベッドから起き上がる。
部屋のドアを開けてリビングへ行くとアーシェがいた
寝起きなのだろうがパジャマではなく、私服を着て髪を緩く束ねている。
「アーシェ、どうした?」
トモカズは不思議そうに尋ねる
「あ、トモおはよう。少し夢見が悪くて…。飲み物飲んでリフレッシュしようと思ったんだけどね、お水飲んで目が覚めちゃったから少し夜風に当たりに行きたくなっちゃったの。」
どうやら、アーシェも同じような状況のようだったようだ。
「おはよ。アーシェもなんか変な夢見たのか」
「アーシェも、ってことはトモも?」
「俺もおんなじ。なんか暗い変な夢見たんだよな…。」
「どんな夢?」
トモカズは内容を思い出そうとするが、記憶をどれだけ掘り返しても、もうその夢は思い出すことが出来なかった。
先程まで記憶にしっかりと残っていたはずなのに。
「…覚えてないな。ごめん」
「私も覚えてないのよね、不思議。」
「2人して覚えてない奇妙な夢か、予知夢とかだったら嫌だな。」
「もう、縁起の悪いこと言わないで頂戴。私は散歩行ってくるけどトモはどうする?」
「俺も行くか。なんせこの時間に女性一人は危ないからな」
そう言うとアーシェが少し微笑んで
「じゃあ待ってるから。トモは着替えてらっしゃい」
「了解。すぐ戻ってくる」
アーシェに見送られ、部屋へ戻り扉を閉める。
クローゼットを開け、パーカーとズボンを取り出し寝間着から着替える。
着替え終わった時、部屋の隙間から青白い光が見えた。
──まさか。
「アーシェ!」
ドアを思い切り開き、アーシェの名を叫ぶも、彼女の姿は忽然と消え去っていた。
キッチンにある窓から風が入りカーテンを揺らし、月明かりが部屋を照らしている。
ヴァルハラ:双子の塔
「ねぇ彼岸、捕まえたよ。『魔力の純結晶』」
「えぇ此岸、捕まえたね。『魔力の純結晶』」
向かい合い語る、瓜二つの少女。その目には愉悦が浮かんでいる
「ねぇ彼岸、これで計画も進むかしら。」
「えぇ此岸、これで計画も進むわ。」
「ワタシ達の悲願が叶うね。」
「アタシ達の宿願が叶うね。」
「「見ててね、梅花姐さん。」」
声を揃え、一人の女性の名を呼び、少女達の姿は消える
2つだけ花の開いた、1本の梅の枝を残して。
くじらのはらです。アーシェ…。
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