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報酬エルフとハッピーエンドを目指すたび  作者: くじらのはら
ヴァルハラ編:『幽霊騒ぎ』
25/40

『キュンストル』,邂逅:2

「あはは、久々に笑ったよ。」

「ふふ、そうだね。あの子たちがいなくなってからはこんなに笑えたことなかったね」

ブランコを漕いだり、靴を飛ばして遊んだあと、あたしたちはベンチの隣に座って向かい合い、話をする。

「高校の時みんなでこうやって遊んだよね」

「…懐かしいね、たまに学校抜け出して一緒に反省文書いたっけ」

「それはアンナとルーカスでしょ、オレとソフィーは探す側にいたんだよ…ほんっと大変だったんだから」

「ごめんごめん、もう反省してるから許してよ」

穏やかな空気、吹き抜けの天井みたいな空が綺麗。

足元の芝生の匂いが、優しい風に乗って鼻をくすぐる。

「……それで、本題を聞いてもいい?」

正直聞きたくなんかない。けど、

聞かなければ、先へは進めないから。

「…うん。」

ハルターも意志を固めたのだろう。一気に真面目な顔に変わった

風が、止まった。

「……結局一晩中考えても、やっぱりおかしいなって思う。彼らと共に調査を始めてから幽霊騒ぎの痕跡は見つかり続けてる。今まで言論統制とか、情報規制をかけられていたみたいになにも見つからなかったのに。不自然だ。でも、本当に、彼らが幽霊騒ぎを解決してくれるのなら

…ソフィーとルーカスを、彼らに頼んでもいいんじゃないかな。」

そこまで聞いて、びっくりした。

心を開いていた、ソフィーとルーカスを託してもいいって思えるくらい、信頼していて。

気心知れた友人とまではいかなくても。それでも信用するに値する人物たちであると。

自分は危険な茨道を歩むのではなく、適材適所があるからと身を引ける判断力。ハルターの良さだね。

ま、言ってあげないけど。

「そっか…。あたしも考えたんだけど、やっぱりあたしはあの子たちを自分の手で探し出してあげたいんだ。あの子たちを一番に見つけて、心配してたって怒るんだ。そして、みんなで、また…冒険、して、」

なんでかな、なんでだろう

幼馴染であるとか、そんなわけじゃないのに

高校時代からの、友達で、

会わない日はほとんどなかったからなのかな、

「アンナ……。」

ハルターがハンカチを取り出す。

優しいなぁ、もう。

あたしのせいで、そんな悲しそうな顔しないでよ…。

あたしは、自分の気持ちにフタをして、気づかないフリしてた。

やっぱり、寂しかったし不安だった。

1ヶ月間、いくら探し回っても見つからない幽霊騒ぎの形跡。自分たちは有名ではないから、情報を集められないのかもしれない。でも、同じような人たちが、あたしたちに出来なかったことをこなしていくのは、少し…劣等感があった。

それに、ソフィーもルーカスも、ハルターも。

ずっと、一緒だったから、かな…。

「ほら、涙拭こ?せっかくのメイクが落ちちゃうよ。」

そう言って渡される1枚のハンカチ

綺麗に畳まれて、アイロンもかけてあるシルク生地の、緑のハンカチ。

Hの金の刺繍が入っている。これ、昔誕生日にあげたやつじゃん。

「うん、ありがと…。」

震える声で、手で、ハンカチを受け取る。

涙をハンカチに吸わせるけど、涙はもっと溢れてきて。

ハルターの優しさが、心に染み渡って。

「ごめんね、ハルター。あたし、やっぱり…」

言いかけて、言葉が詰まる

嗚咽が、涙が、

溢れて止まらない。

ずっと、ずっと胸の内に秘めていたものが、とめどなく溢れて止まらない。

そのまま、あたしは大声でハルターに泣きつくことしか出来なくて。

ハルターの胸は、高校の時の華奢な体つきより大きくなってて、安心できた。


少し落ち着いてきた頃、ハルターが話し始める

「…それでね、アンナ。オレは…この調査をやめるよ。」

「…うん。」

震える、鼻の詰まった声で返事をする。

あたしの泣き腫らした目を、じっと見つめてくるハルター

その緑の瞳はとても綺麗で。

「それで…」

ハルターは、そこまで話して

「アンナ!」

急に大きな声を出した。

そのままトン、と突き飛ばされる

ベンチの端にいたから、あたしはいとも容易く地面にしりもちをついて。絶句した

ーー白い、霧…!!!

「ハルター!!!」

大きな声でそう叫ぶも、返事は来ない。

「ハルター!ねぇ!返事して!」

霧は、白く、濃く。視界を覆っていく。

あたしは知っている。1か月前、仲間を奪ったこの霧を。

目を疑いたい。これは現実じゃないって、信じたい。

「ハルター!!ねぇ!!!ハルター!!!!」

なのに、なのに。

青白い光が、瞬いて、輝く

2つの人影が見えた、気がした。

"ーーー ーーーーーー"

「ハルター…!!!ねぇ…おねがい……へんじ、して…」

5分に満たない霧の災害

直後、風が強く吹いた

手の力が抜けていた。ハルターのハンカチが風で飛びそうになるのをぎゅっと捕まえる

泣き出してしまいそうなのをこらえて、ハンカチを仕舞い、スマホを取り出す

開いた画面はグループチャット

急いで、文字を打つ、

手が震えて、上手く打てない。

でも、それでも。

"幽霊さわぎではルターがつれてかれた"

そう、送ることが出来た

くじらのはらです。

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