2日目:『事件場所調査』p.2
庭園の中は迷路のようになっていて、花は季節ごとの物を楽しめる作りになっていた
「アーシェ!ステラ!置いていかないでくれ!!ちょ、早い早い…!お前たち2人になったら攫われかねないんだぞ!!!」
「アンナ、そんなにはしゃがないで…!ねぇ、待って!そっち行き止まり…!!!」
スタスタと進んでいく女子3人。の後を必死で追いかける男子2人。翻弄されまくっているようだ
右へ曲がり、左へ歩き、たまにUターンしたかと思えば謎のループにどハマりするなどして四苦八苦。
もはやなんのためにここへ来たかなどどうでも良くなり、楽しみ出した5人がたどり着いた迷路のゴール。
ーー実に、壮観であった。
言葉を失い、見惚れた。いや、目を奪われると言った方が正しいか。
迷路の中心部には巨大な噴水
数々の華々がとても繊細にビッシリと彫られた真っ白な大理石、綺麗に吹き上がる水、周囲の涼しさたるや。
頂上の水の出口には大きなバラの彫刻、そこから
「綺麗…だね」
「これほどまでとは…」
「すごい…」
そんな反応をよそ目に、アーシェは隣に立っているトモカズに視線を向けた。
噴水に見惚れるトモカズはあまりにも…
「…アーシェ、どうした?」
少し、遅れた反応がやってくる
「いいえ、なんでもないわ。それより、綺麗ね。」
「あぁ、すごく綺麗だ。」
こちらには目もくれず、その視線は噴水にのみ注がれ続ける。
「もう………だから……。」
その声は、水音に掻き消され、
「アーシェ、なんか言ったか?」
何かを呟いたアーシェに、ようやく目を向けたトモカズ
「なんでもないわよ、」
少し、物悲しげ表情で笑うダリアの華。
なんで、そんなに…。と、出かけた言葉を飲み込み、皆に声をかけた
「みんな、そろそろ本来の目的に戻ろう。」
長い間、噴水を眺めていた。トモカズの一言で皆、やっと噴水から目線を外した
「あ、そうだね。あたしとしたことがうっかりしてたよ」
「いいものも見れたし、そろそろ仕事しようか」
「…その前に、少しいい?」
「なに?なんかしたい?」
「えっと、みんなで写真が撮りたくて…」
「園内は撮影禁止じゃないし、オレはいいと思うよ。」
「あたしも賛成!思い出大事!」
「わたしも撮りたい!お写真撮ろ!」
「トモもいい?」
「もちろん」
5人の写真、ディユシエルの集合写真をそれぞれ撮った。満面の笑みで写る皆の写真を見て微笑むアーシェ。
「じゃあ今度こそ仕事だー!」
突っ走っていくアンナ、それを追いかけるハルター
またそれを追いかけるステラ
「待ってー!…アーシェ?トモカズ?」
「先に行っててちょうだい。あとから追いかけるわ」
そう微笑んで、ステラを送り出したアーシェ。
「いや、俺達も一緒に行った方が…」
「……ねぇ、トモ」
「ん、なんだ?」
「2人で、写真…。まだ……」
短く、言葉を切って話す。緊張して手に汗が滲む
昔からよくしていたことなのに。なんでこんなにも心臓が早いの
疑問は、溢れるばかりで
「ごめん、なんでもないわ、忘れ…」
「そうだったな。撮ろうか、写真。」
少しばかりの恐怖。返答が怖かった。そんなことって言われる恐怖が胸を支配していた。
そんな優しく答えてもらえるなんて、写真が好きな事、覚えていてもらえるなんて。
思ってもみなかった。
胸にじんわりと広がる安堵感。ほっとした。
"パシャリ"
カメラのシャッターが切られる。画面に写った2人は笑顔で。
「ありがとう、トモカズ」
「どういたしまして、アーシェちゃん」
懐かしい呼び方、呼ばれ方
急におかしくなってふふっと笑う2人
その時間は穏やかそのもので、思わず時間を忘れそうになる。
「じゃあ、俺達も追いかけるか」
「そうね、行きましょう」
幼なじみ、2人。
仲間を追いかけて行った
ーーストン
花々の彫刻が施された噴水前に、人形かの如く瓜二つな少女が
「ねぇ彼岸、アレが次のターゲット?」
「えぇ此岸、アレが次のターゲット。」
「大人しくしてくれるかな」
「大人しくしてくれるから」
そう呟き、音もなく消えた。
噴水の水は、止まらない。
くじらのはらです。
ガチガチラブコメです。2日目はこんなテンションで進みます
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