『報酬』 覚醒
ダンジョンを出てほどなく歩いた先は都市。
その名は『イザベル』
セントラム国中央に位置しており、人口100万人ほどの大都市。人や魔族が行き交う国屈指の観光地としても有名だ。
また『冒険者ギルドセントラム支部』が置かれている場所でもある。
「やっと着いたーーー!!!今回のダンジョン歩きだと地味に遠いんだよなぁ」
ダンジョン内の冒険で疲弊しきった体に鞭を打ち歩き続けて数十分。都市に着いたことで一息つけるとテンションが上がる男。
「一息つく前にやることがあるでしょ?」
そんな心は女にはお見通しのようだ。
「冒険者ギルドに行って依頼の完了と報酬の確認だな。また長い書類仕事の始まりか……」
依頼達成はその日のうちに報告しないとならない。
さもなくば依頼もタダ働きで終わる。
「冒険者なんだから諦めなさい」
女は慣れたように、だが呆れたように言う。
「はいはい。っつーか、ほんとにこの子どうするんだろうな」
冒険者ギルドへの道を男は歩きながら背中で寝ている少女のことを女に問う。
「さぁ……?でもエルフだし、保護施設行きかしら」
魔族が人の世で住み始めて数千年経った今でも保護施設のような制度が作られたのは最近で、未だルールが不明瞭な点が多い。
「んま、俺らが考えても仕方ねぇよなぁ」
彼らの中で結論が出たと同時に冒険者ギルドへ着いた。
「お疲れ様です、冒険者。依頼達成の手続きですね」
受付嬢が慣れた手つきで手続きを進める。
「今回の冒険はダンジョンの攻略、スライムの大群の討伐、宝の回収、との事ですので、報酬は4万円と宝……。つまりそちらのエルフです」
「「……えぇぇぇぇぇ!!!?!?!?!!!」」
男と女は驚きのあまり叫んだ。
その声はピッタリ揃っている。
「いやいや……どうするよ……」
冒険者ギルドからの帰り道、焦りながら男は呟く。
「私たちみたいな平凡な冒険者に子供のエルフが養えるのかしら……?」
女はもう手元に置くことは確定したような言葉を発する。
「アーシェの実家に頼むのは?」
男は女……アーシェへ問う。
「トモ、あんた昔から私の家が裕福だと勘違いしてるわね」
アーシェは男……トモカズに言う。
「だってそうじゃん」
トモカズはきっぱりと言う。
「違いますー!うちは親が冒険者なだけで……あ、そういえば、冒険者は魔力未保有者の10分の1のお金で生活できるの結構不思議よね」
アーシェはふと思い出したかのように呟く。
冒険者は職業柄命が幾つあっても足りないような仕事の為、金銭面の補助も多い。その中の一つに物価が魔力未保有者の10分の1で済むというものがある。
「冒険って結構ちゃんと命掛けてるし10分の1くらいじゃ足りないよな……。もっと金が欲しい」
この男、金に貪欲すぎる。
「そういう話じゃないわよ……」
アーシェは呆れたように言い放った。
トモカズとアーシェは騒ぎながら街を歩いていると。
「…………?」
少女が目を覚ました。
くじらのはらです。
面白くなってきましたね、次回もお楽しみに。
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