『ディユシエル』,出会い
「よし、今日はディユシエル初の冒険だな。」
晴れた朝、動きやすいように作られた冒険服に身を包む3人
「楽しみ!」
「ステラ、危ないことがあったらすぐに後ろに下がるのよ」
先日とは違う高いポニーテールを揺らし歩くアーシェ、長い髪を2つにまとめたステラ。
それとは対照的に何も変わらないトモカズ
冒険者ギルドに向かう途中の3人。
和気あいあいとしながら歩みを進めていく
ーーその行く手を阻むように物陰から出てくる1人の女がいた
「ヤァ、こんにちは。キミたちはディユシエルであっているかい?」
「こんにちは、あっているけど…あんた誰よ。」
少し強い口調で話すアーシェ。警戒するのも無理は無い。自分たちのような手柄もあまり立てていない冒険者パーティを知っていることに加えて、その女の髪は白銀で、紅い瞳は瞳孔が爬虫類の目のように細い。オマケに真っ黒な装束
冒険者としての勘か、もしくはそのただならぬ気配からか警戒レベルをMAXまであげる。
「あぁ、そんなに警戒しないでくれ。ワタシはネモというモノでね。キミたちに依頼したいことがあって遠路はるばるここまで来たんだ」
唐突に自己紹介を進める眼前の女は怪しいどころの騒ぎではない。
だが彼らは冒険者。依頼という言葉を聞いたのなら
「話くらいなら聞く。」
「話が早くて助かるよ。ここで話すなんだし場所を移そうか」
ネモに連れられて辿り着いた場所は、閑静な住宅街にポツンとあるカフェ。昔ながらのレトロな雰囲気が漂っているため3人には落ち着きがない。
コーヒーを頼み静かに3人を見つめている女の不気味さたるや。
そんな中トモカズが先陣を切って話す
「んで、話っていうのは?」
「とある森を住処にしている龍を討伐してほしくてね。」
そう言って女が差し出したのは2枚の紙。
片方には地図、もう片方には龍の詳細が書かれている
「…黄鱗龍か。小型が2頭、この付近には同種、或いは別種の魔族は確認されていない…と。」
「ねぇトモ待って。」
ステラと地図をまじまじと見ていたアーシェがおもむろに口を開いた
「この場所、たぶんイザベルの北にある『人攫いの森』じゃない?巣の位置はだいぶ入口に近いところにあるけど、初めて冒険するステラもいることだしこの依頼は…」
「そのことに関しては安心してくれ。ワタシたちが龍の巣までの道のりはマークしてある上に護衛もつけよう。キミたちはただ何も考えず龍を倒してくれさえすればいいんだ。」
「いや、それだけじゃ危なすぎる。冒険の経験が浅いステラを危険な目に合わせるとか俺達には出来ないぞ。」
「トモカズ、行こう。」
じっっと静観していたステラが声を上げた。
「大人として反対だ。パーティメンバーがどうとかじゃない、子供を危険な目に合わせるのは…」
「でも冒険者パーティだよ、危険な目に遭うのを承知でわたしはトモカズたちのメンバーになったの。」
「ふむ…ここまで揉めるとは想定外…。」
ブツブツ何かを囁く女
「よし、わかった。ワタシはこんなナリだが魔法が使えるモノでね。キミたちが互いに互いの位置を把握できるようにするし、危険な目に遭わせないとワタシが神に誓おう。」
「…本当に危険じゃないのよね?」
「あぁ、ホントさ。」
「報酬の倍額支払うのと、私たちになにか危険があった際はすぐに撤退させること。その条件でならいいわ。」
「アーシェまで…」
「大丈夫よトモ、今まで危険なことが多かったけど私たちは生還できた。魔法書を難なく読み解けるステラもいる。」
「トモカズよくわたしのことを子供扱いするけどエルフは見た目に反して長寿なんだよ、忘れたの?」
自信満々に笑う少女、今まで共に死線をくぐり抜けてきた仲間に背中を押されたトモカズは結論を出す
「わかった。引き受けよう」
「ありがとう!ディユシエル。今から…は少々難しい時間になってしまったから、そうだね…。明後日の14時に我々が人攫いの森入口としている場所へ来てくれ。」
「了解した。だが、アーシェが提示した条件が守られなかったときは俺達は許可なく撤退する。」
「わかったよ、覚えておくさ。」
くじらのはらです。今回長いです、たのしかったです
次回から遂に冒険スタート!
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