『ステラ』,エンジョイ
冒険者ギルドでの用事を終え外に出る3人
「いやーまさかあんなかっこいいパーティ名になるとはなぁ」
「前回が適当すぎたんでしょ…」
「喜んでもらえて嬉しいよ!」
テンションは文字どおり三者三様なようだ
「そういえばステラは魔力あるんだよな。ダンジョン攻略の時は前衛と後衛どっちがいい?」
「うーーーん………。」
長い沈黙。記憶を失くした少女にとってその質問はとても難題で、すぐに返事ができるようなものではなかった。
そこでアーシェが口を開く
「トモ、私たち冒険者は高校で一通りの魔法の知識は習うけど、ステラにはそれがないのよ。だから本屋に寄って魔法書とか見てみるのはどう?」
「そうだな…。そうするか!ステラもそれでいいか?」
「うん!そうしよ!」
元気な返事が返ってくる。
本屋へ入りめぼしい棚を見てみることになった3人
「えっと…魔法書だから…この辺かしら」
「さっすがうちの魔法使い〜」
「勉強に必要だっただけよ。」
「てか俺ラノベ見てきていい?」
「ダメよ。ちゃんとステラと一緒にいなさい」
小声でワイワイする大人2人をよそ目に分厚い本を手に取る少女。金色の目を輝かせてページをめくる
「『基礎魔法』…。うーんと、これはこう……。」
興味津々といった様子で食い入るように本を読み進める。
「……トモカズ!私この本ほしい!」
「おぉ、そんなに気に入ったか。どれどれ…」
ステラが開いていたページを見てみるとそこには『上級魔法の取り扱い方法』と書かれていた
「…?いや、まてよ。上級魔法って高校レベルはおろか大学レベルの知識だったよな?」
「えぇ、そうね…。ステラ、本当にちゃんと理解できてるの?その、実力を疑っているわけではないのだけど…」
幼い少女にこの本は難解すぎるのではないかと心配している2人にこう言い放つ
「2人とも!わたしエルフだから!」
ルンルンで本を抱き抱えて歩く少女
「ステラ、重くない?」
「大丈夫!」
満面の笑みでそう答える。さながらその姿は気に入ったぬいぐるみを大事そうに抱えて歩く子供のようだ。
「次はお洋服買うの?」
「そうだな、冒険用の服と私服が何着かあればいいだろ。ステラの分だからアーシェはあんま口出しすんなよ。」
「わかってるわよ。でもちょっと色々着せてみるのは…?」
「本人確認の元行ってくださーい。」
「りょーかい。でもステラの今の服って神話の時代の服装みたいよね」
少女の服装は白いノースリーブのワンピースに革のサンダル。古い時代を生きていた人々を思わせる服装をしていた
「うん、でもいつからこうなのかとか全く思い出せないから…むずかしい。」
「そうよね…。あ、お洋服屋さんについたわよ。ほらステラ、元の服装のことは一旦忘れて新しいものを選びましょ!」
そこからはアーシェ・ダリアの独壇場だった。
ステラを着せ替え人形にしてキュートな服、クールな服、ポップ、セクシー、果てはロリータまで着させる始末。
着させては新しいものを持っていき、何度も色々な服を試着させていた。
ある程度着せて満足したのか得意げなアーシェを叱るトモカズの声を聞きながら改めて店内を見回ってみた。ダークオーク壁、絨毯の敷かれた床。重い生地でシックな印象を思わせる試着室のカーテン。ショッピングモールの中とは思えないショップの雰囲気は何処か少女へ安心感をもたらした。
ふと、目を引いた1着の服
黒を基調としているが白い生地や金の刺繍が入った1着のワンピース。
控えめなパフスリーブ、スカートの裾にあしらわれたフリル。
心惹かれた服を手に取り試着室に駆け込んだ。
「あら、なにか気に入ったのかしら」
「アーシェ。まだ終わってないからな」
「はーい。」
数分経って、ステラが2人に声をかけた
「トモカズ!アーシェ!見て!」
カーテンを開けたステラは自信満々の表情で2人に服を見せる
「おー。いーんじゃね?」
「かわいいわね。でももっと…」
「アーシェ。」
「もう、なんでそんなに怒るのよ。」
「…どうかな、似合ってるかな」
「似合ってると思うぞ」
「えぇ、とっても似合ってるわ。」
「そっかぁ…!」
はにかむ少女、年相応より少し大人びて見える服装。
「んじゃ、これ買うか」
「あらトモ、今日は財布の紐が緩いのね」
「そんなことないと思うけどな。別に普段だって固くも緩くもねぇよ」
ステラの選んだワンピースに合わせた靴や小物。他の服など買い、特別に値札を切ってもらいお気に入りの1着を着て歩く。
「トモカズ、アーシェ。ありがとう!」
振り返り、花のような笑顔でお礼を言う
「どういたしまして。これからよろしくな、ステラ」
「どういたしまして。とても楽しかったわ」
2人から頭を撫でられ、帰路に着く。
今日はとっても楽しい日だったな!
くじらのはらです。今回書いててめっちゃ楽しかった
次回あたりから不定期になるかもですが作者は元気です。のんびり更新を待ってていただけると幸いです
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