『待ち合わせ』,遅刻
ザワザワと喧騒が響く大通り、待ち合わせ場所で佇むアーシェ。クォーターということもあり、その姿は様になっている。周りの人々が少しざわめいていてその中からは「お前ナンパしてこいよw」「いや無理だわw」なんて声も聞こえてくる午前10時2分。
「すまんアーシェ!!!!遅れた!!!」
ゼェゼェと息を切らしアーシェに声をかける男、
その後ろから遅れてトコトコと走って追いつく少女。
「おはよう、トモ、ステラ。別にそんなに遅れてないじゃない。」
結局待ち合わせには遅れる始末、これは確定で怒られる。
もはやそれは逃れられない運命だと悟る。
「チッ、男いるのかよ。」「残念だな」
ふと周囲からそんな声が聞こえた、きっと彼女の美貌からナンパを目論んでいた男だろう。
昔からよくあったなと一瞬思考が別の場所に飛んだ
「…アーシェってもしかしなくても美人だよな。」
「あらそう?ありがとね。」
その返答はいつも以上に淡白。彼女の耳は少し赤らんだように見えたが多分気の所為なのだろう、今日もいつもと変わらず湿度の高いジメッとした暑さだからだ。
そう解釈した俺はようやく呼吸が整い話し出す。
「おはよう。遅れてごめん、アーシェ。」
「おはようアーシェ!遅れちゃってごめんなさい」
「トモはともかくステラまでかしこまってどうしたの?」
「待ち合わせの時間に遅れちゃったから…」
しょんぼりと顔を俯かせたステラはそう話すと俺に向き直った。
「トモカズ、今度からは予定がある日の朝にそのこと教えないでね。絶対に前日までには言ってね」
「はい、すみません。」
もはや謝ることしか出来ない俺は頭を下げつつもアーシェの顔色を伺ってみると、頭上からはくすくすと軽快な笑い声が聞こえてきた。
「…もう、次からは気をつけてよね。ほら、ステラもトモも顔上げて?」
「…怒ってない?」
「怒ってないわよ。ふふ」
楽しげに顔を綻ばせたアーシェを見てホッとした。とりあえず説教からは逃れられそうだ。
過去の数々の過ち、それに伴うアーシェの説教を思い出しながら胸を撫で下ろす。
「でもトモ、さっきステラが言ってた「予定を朝に伝えた」ってのが少し気になるから、後で教えてね。」
ニッコリと笑う美人の圧は凄いと覚えておこう。
「ア、ハイ」
そう答えるしかできない。
…俺、終わったわ。
「そんなことより、冒険者ギルドに行くわよ。早めに登録を済ませてステラのお洋服を見繕う時間をいっぱい作りましょ。」
「楽しみだね!早く行こう?」
「了解。それでは冒険者ギルドにー」
「「レッツゴー!」」
息の合うトモカズとアーシェを見て、不思議な気持ちを覚えたステラだったが、気にせず前を歩く2人について行った。
「……。」
ーー何処かから送られる視線に気づく者はいない。
くじらのはらです。トモカズは遅刻魔
アーシェのAPPがわかる回ですね。16,17辺りの想像です
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