第30話:骨と骨っぽいの
右を見てもスケルトン、左を見てもスケルトンと物量で攻めてくる敵に対して、こちらも竜牙兵で対抗する。
「なんか、骨だらけです……にゃ」
「視界いっぱい、見渡す限り骨……にゃ」
竜牙兵を呼び出してすぐにこの状況に気付いたが不可抗力だ……。
断じてふざけているわけではないので、反省はしてない。
オレの創り上げた竜牙兵は、スケルトンと違って魔物のランクでいえばCランクほどの強さがある。
Cランクの魔物といえば、C級冒険者パーティーか、もしくは単独のB級冒険者ぐらいの強さがあるはずなので、単純にB級冒険者が三〇人も味方についたということになる。
その上、冒険者と違って竜牙兵はまったく疲れを知らず、一度創り出せば魔力も消費せずにずっと付き従う。
有象無象のスケルトンを蹂躙して扉の前まで押し返すぐらいわけないはずだ。
リルラの精霊魔法で纏めて薙ぎ払った方が簡単に思えるが、今の状況だと次から次へと門から出てくるので、延々と魔法を撃たないといけなくなる。
かと言って全部出てくるのを待っているとスケルトンが広範囲に散らばり対応しきれなくなりそうなので、扉の前を三〇体の竜牙兵で囲むというのは中々良い作戦だろう。
だけど見渡す限りどこを見ても骨というのは、何とも言えない空気感が漂っているな……。
「まぁアレだ……オレ、ちょっと行ってくるよ!」
とりあえず竜牙兵だけに任せていてもストレス発散……じゃなくて効率が悪いからな!
駆け出すと一瞬でスケルトン軍団の中心に躍り出た。
やはり凄まじいステータスのアップを感じる!
「黒闇穿天流槍術、【鹿威し】!」
雷槍ヴァジュランダからほとばしる雷と技の衝撃波で数体のスケルトンをまとめて粉砕して場所を作ると、黒闇穿天流槍術基本の型を演武のように披露する。
踏み込み、斬り上げ、袈裟斬りからの薙ぎ払い。
槍をぐるりと回転させて石突での三段突き。
そこからさらに回転、加速させて連続で斬り払う。
一つ一つの動きを確かめるように、丁寧に流れるように……。
徐々に集中を高め、次第に無心になっていく。
「「なんて綺麗な戦い方なの……にゃ」」
敵が向かわないように注意を払っていたのでたまたまリリーとルルーのつぶやきが聞こえたが、正直納得のいく動きはできていない。
ジルに与えられた『邪竜の加護』によって上がりすぎた自分の力を上手くコントロールできていないからだ。
しかも、これでもジルから流れてくる力をかなり絞って貰っているのだから情けないという感情の方が強かった。
ただ、それでも今自分のできる限りの技、動き、呼吸をもってスケルトンをなぎ倒していく。
どれぐらいの時間そうしていたのだろうか。
気付けば門からあふれ出していたスケルトンを扉の辺りまで押し返していた。
あとは竜牙兵だけでもなんとかなるかな。
念のため、すこし様子を見てからその場を離れた。
「よし。後は竜牙兵に任せて大丈夫だろう」
うまくいったので三人の待つ場所へと戻ったのだが……なぜかリリーとルルーからジト目で出迎えられる。
あれ? なんかしたか……?
「「コウガ。ちょっとお話があります……にゃ」」
リリーとルルーがオレを囲むと、顎をくいっとあげてなにかを催促してくる。
「えっと……説明しろってことかな?」
逆らえるような雰囲気じゃないので、頷く二人に別れている間に起こった出来事を順をおって説明していった……のだが、なぜかどんどんとジト目が強くなっていく……。
「ドラゴンをテイムするギフトっていうのも信じられない話なのですが……にゃ」
「子供の頃に聞かされた伝説の『邪竜ジルニトラ』をテイムしたっていうのが輪をかけて意味がわからない……にゃ」
大丈夫だ。オレもいまだに意味がわからない。
「まぁそう言っても、テイムしてしまったものは仕方ない」
とりあえず開き直っておこう。
「コウガ様は私が殺されそうになったところに颯爽と現れて助けて下さり、そのままあの邪竜ジルニトラを従えてみせたのですよ!」
まるで伝説の叙事詩の一説を見ているようでした~とウットリして、どこか違う世界に旅立ってしまうリルラはこの際ややこしいので置いておく……。
「あまりにスケールの大きな話過ぎて理解が及ばない……にゃ」
「それにリルラが幻のハイエルフで一二〇〇歳っていうのも……にゃ」
「そうだよな。オレもまだ実感わかないんだけど、ここにこうして存在してるからな……。なぁジル」
と言って後ろを振り返る。
ドゴォォォォォォン!!
「「きゃぁ!?」」
轟音と爆風を巻き上げながらも、どうやっているのか、砂はひと粒も飛ばさずにジルこと邪竜ジルニトラがオレの後ろに降り立った。
≪そうだな。何が信じられないのか我にはわからないが、主共々よろしく頼む≫
「「え……?」」
≪主よ。ちょっと追い付くために元の姿に戻ったのだが、やはり小さくなっておいた方が良いのか?≫
本来の大きさのジルニトラの巨躯がそこには聳え立っていた。
聞くと実際に見るのとでは大きな認識のズレがあったのだろう。
限界を超えて動きが固まってしまったリリーとルルー。
白い獣の姉妹は見上げたそのままに完全に思考を停止し、ゆっくりと後ろに倒れていったのだった。
お読み頂きありがとうございます!
すこしでもお楽しみ頂けましたら、励みになりますので
ブックマークや★評価などによる応援をよろしくお願いします!
※評価は↓広告の下にある【☆☆☆☆☆】をクリックでお願いします
※旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっています




