第25話:これからのこと
◆◇◆◇ 時は少し遡る ◆◇◆◇
オレは邪竜とハイエルフの二人(?)と、これからのことについて話し合っていた。
「ジルニトラはこれから長い付き合いになるだろうし今後のことはゆっくり話すとして、リルラはどうするんだ? ハイエルフの里……ってのがあるかどうかはわからないけど、そういう所に帰るのか?」
ジルニトラはテイムしてオレの従魔になったのだから、これからのことをしっかり話し合わなければいけない。
この巨体だから街には連れていけないだろうし食事のことも考えないといけない……食事、本当にどうしよう……。
そもそもドラゴンテイマーの冒険者なんて前代未聞だ。
英雄譚に登場する冒険者が小型の竜を従えているが、あれは御伽噺だ。
現在、この世界で唯一竜を保有しているのは『リシュテイン公国』だ。
この小さな公国が帝国に隣接しているにもかかわらず、現在も独立を保てているのは竜が守護獣として守っているのが大きな理由だと言われている。
噂では国を治める公爵家は竜の血をひいているなんて話もあったりするが、こちらの真偽はわからない。あくまでも噂だ。
また、守護獣のドラゴン以外にも小型の飛竜を駆る竜騎士団を所持しており、普通の小国とはかけ離れた戦力を保持している。
この竜騎士団と聖エリス神国の聖騎士団、帝国の機甲兵団が人類の三大戦力と言われている。
おっと……話がそれたが、竜を保有しているのが国であれば、巨体を誇る竜の食事を賄うことも問題ないだろう。だけど残念ながらオレにそんな甲斐性はない。
「いいえ。帰りません。私はコウガ様に救っていただきました。これから永いお付き合いをさせて頂くつもりです」
前世でも女の子の気持ちはわからなかったが、この世界の女の子は輪をかけてわからない。
そもそもリルラはハイエルフなので種族も違えば文化も常識も違う。だからわからなくて当たり前なのかもしれないが……。
「助けたって言っても、そんな大層なことしてないからなぁ」
「それこそ『いいえ』です。コウガ様がいなければ大精霊と契約して自惚れていた私はジルニトラ様に挑んで死んでいたのですから。そもそもハイエルフは普通のエルフと違ってどこか特定の土地に住み着くことはありません。その生の大半を精霊界で過ごす者が大半ですが、精霊界は退屈なので……ゴニョゴニョ」
こちらを上目遣いで見上げてくるリルラの瞳はすごく愛らしいのだが、その眼力に軽い畏怖を感じるのは何故だろう……。
「そ、そうか? それなら良いか」
あ……思わず圧に負けて納得してしまった。
いや、考えてみれば当然か。ジルニトラに一蹴されたとはいえ、たぶん実力で言えば人類最高峰の一角だろうし……。
「はい! では決まりですね! 不束者ですがよろしくお願いします!」
「あ。はい。こちらこそ……って、旅の仲間としてだからな!? そう言うのじゃないからな!?」
「はい。わかっております」
気まずくなってリルラから視線を逸らすと、今度は生暖かい眼でみていたジルニトラと目が合う。
≪ところで我はどうすれば良い? 主に付き従っていくつもりだが?≫
オレは若干ジルニトラに感謝しつつも話の方向を軌道修正する。
「その当たりの覚悟は決めたんだけど、その巨体がな……。残念だけど普段オレが街にいる間はどこかこの森の中とかで暮らして……」
と考えを話していると、途中でジルニトラが口を挟んだ。
≪ん? この大きさが問題なら、体はある程度小さく出来るぞ≫
「おぉ! そんなことができるのか! どの程度まで小さくなれる?」
≪ふむ。説明するより見てもらった方が早いか≫
ジルニトラはそう言うと、何か言葉にならない言葉を発する。
すると足元に巨大な魔法陣があらわれ、みるみる小さくなっていった。
「わぁ! 凄いですね!」
「あぁ、凄いな! これはいい! これなら一緒に行動出来る!」
目の前に現れたのは、一メートルにも満たない小さなドラゴン。
フェアリードラゴンほどの大きさになったジルニトラだった。
≪うむ……さすがにこの辺りが限界か。どうだろう? これなら一緒に街に入れるか? 我も今の世界がどうなっておるか興味があるので、出来れば共に街にも入ってみたい≫
もうすこし詳しく話を聞いてみると、ジルニトラは知識欲がかなり強いらしく、今の街の様子を近くから観察してみたいそうだ。また、冒険者というものにも興味を持ったようで、一緒に冒険というものも経験してみたいようだ。
うん、ジルニトラが冒険と感じるようなことはそうそう起きない……というか、そんな冒険は国が対処するようなレベルだろう。起きてもらっては困る。
「コウガ様。私もさっき教えて頂いた冒険者になることは可能でしょうか?」
ハイエルフだが見た目は一〇歳ぐらいの美少女エルフなので、いろいろ説明は必要かもしれないが登録は出来るだろう。
どうもリルラも冒険者というものに興味津々といった様子だ。
ん~……リリーとルルーには事後報告になってしまうが、もう決めてしまうか。
あの二人ならきっと喜んで受け入れてくれるはずだ!
「大丈夫だと思う。それじゃぁジルニトラにリルラ。これから二人は仲間だ。パーティー『恒久の転生竜』にようこそ!」
「はい!」
≪うむ。承知した≫
これからオレたちの冒険が始まる!
「ところでコウガ様? それでパーティーというのは何なのですか?」
≪うむ。我も知らぬ。そのぱーてぃいと言うのは喰えるのか?≫
「……え?……」
オレはこの後二時間かけて、冒険者やパーティーのことから始まり、最終的にはこの世界の常識までをも説明するはめになったのだった。
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