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プロローグ TSするなんて聞いてないです。


 古くは古典的なファンタジー小説、最近ならネット小説。俺は異世界で冒険する話が好きだった。よくその手の物を買い漁り、一人で楽しんでいた。

 しかし、今は隣に同じ趣味の奴がいる。そいつの名前は幼馴染の龍田ユウスケ。容姿端麗、文武両道のハイスペックイケメンで性格は陽キャなのに、俺みたいな物静かな奴――要は根暗にも気さくに接してくる。


 出木〇君かと思うくらいムカつく勝ち組野郎だけど、いい奴過ぎて嫉妬すらアホらしくなる。俺がもし女だったら絶対、惚れるだろうなぁって――本気で思うくらいに。

 でも、今考えると……それがいけなかったのかもしれない。



「……どこだ? ここ」


 ユウスケはキョロキョロと辺りを見渡していた。そこは、石造りの空間だった。足元には魔法陣が描かれている。

 この状況、この展開……俺はすぐに理解できた。異世界召喚、だと。そりゃさっきまで学校で体育の授業やってて二人組作ってと言われて絶望してたら、ユウスケがイケメンスマイルでやって来て俺と組んでくれたとホッとしてたらなんか光に包まれました~、って流れだもの。一発で分かるわ。


「姫、……召喚には一応、成功したようです」

「はい……ですが――」


 そして祭壇の傍に立つ黒フードの男と、鎧とドレスが合体したみたいな服装の金髪ロールの女性。

 何故かやたらと俺ばかり見てくる。

 何だよ? そんなにブサイクが珍しいか?


「……うーん、ゴメン。俺、可能な限り同学年の奴の顔は覚えてるって自負してたんだけど……君の事を思い出せないんだ。でもそのジャージの色は一年だよね?」


 そして何故か、俺に向かって頓珍漢な事を言ってくるユウスケ。

 お前、こんな時でもふざけてんのか? とデコピンでもしてやろうかと、手を掲げて気づく。


「は?」


 ジャージの袖がブカブカだった。あり得ない。最大サイズでもパツパツな身体だぞ。どうなってんだ?

 

 そして今の声。活舌が悪い上に無駄に籠ったような声音ではなく、子供特有の高いソプラノ声。自分の喉を抑え、その違和感に顔全体まで触れる。贅肉が全くない。髪が違う。白い。いや銀髪か? 髪の毛の長さすら校則で制限されるわが高校で、染めるなんてとんでもない。


「あの、ユウスケ、鏡! お前、鏡見てワックス付けてるだろ!? 今も持ってるよな!?」

「お、おう」


 若干、引きながらポケットから手鏡を渡してくる。

 そこに映し出されたのは――、銀髪、カントリースタイルのツインテ(襟足辺りの部分で結ぶ奴)のロリだった。瞳は地球の色アース・アイみたいな色彩に染まり、誰がどう見ても絶世の美少女と称賛するくらいの美貌だ。そして両耳の上の辺りに長さも形も異なる、二つの角のようなものまで生えている。


 問題なのは明らかに、紛れもなく、確実に、そこに映っているのは俺自身だと言う事だった。


「な、な、なんだこれはぁああああああああああああああ!?」


 石造りの空間に、かつての俺とは桁違いに綺麗で愛らしい声が木霊した――。

 

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