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冒険前に

 朝の散歩をしていると兵士から職質を受けた。なんでも貴重なアイテムが盗まれたのだとか。

 幸いにも冒険者登録も済ませてあるし、これまた運よく身元を保証?してくれる知り合いもできた。

 冒険者カードもすんなり出したし、俺はどこからどう見ても善良な冒険者に見えるだろう。


「昨日の昼頃だが何か不審な人物は見てないか?例えば白い装丁の分厚い本をもってたり」


「本、ですか?いえ、ぜんぜん見てないですね。何かあったんですか?」


「地方から貴重な品が運ばれていたそうだが、この(みやこ)内で何者かに奪われたのだ」


「魔法の鎖で厳重に保管してたらしく、簡単には盗めないはずなんだが。その鎖も跡形もなく溶けていたそうだ。」


「もし怪しい人物を見かけたら詰め所まで連絡してくれ。手間をかけてすまなかったな。」


 そういうと兵士は足早に去っていった。


(ふーん。それにしても、異世界にもルパンみたいな泥棒が居るんだな。機会があればお目にかかりたいものだ)


 前日自分がやったことをすっかり忘れている俺は、そんな暢気なことを考えながら、待ち合わせの場所に向かうのであった。


 ________________________________



 俺はギルド内でパーティーメンバーとミーティングをすることとなった。

 それぞれの役職、立ち位置、連携、パーティー運用に関する話をみっちりと叩き込まれた。

 ノアールは戦士で前衛タンク、アルスちゃんは魔法剣士で遊撃、メイアは神官で後衛、俺は魔法使いで後衛とバランスのいい構成だ。


「私たちはいつもの連携で、サキト君はメイアの指示に従ってね。」


「はぁ、わかりました」


「覇気のない返事だね、ほら!もっとシャキッとしてよ!」


 気の抜けた返事にノアールから叱咤激励を受けるが、こちとら昨日の昼から今まで何も食べてないのだ。腹が減ってやる気がでない。


「すんません、お腹が減って力が出ません」


 俺以外のパーティー全員がやれやれと飽きれてしまった、そのかわり少し空気が緩んだような気がする。ピリピリしてるのは居心地が悪いから、俺にとってはこれくらい緩い方がいい。


「とりあえずみんなで朝食食べましょう。お腹がすいては魔法も鈍る、です」


「ごめん、金持ってないんだわ俺。」


 いい年した男が金ないなんて恥ずかしいが、事実は変わらない。潔く告白して奢ってもらおう。


「金なし貧乏魔法使いを雇ったのはノアール。責任を取るべき」


「ハーー・・・・・・、分かってるよ、ここは私のおごりよ!」


 メイアの容赦のない正論でため息をこぼすノアールは、半ばやけくそになってて面白い。



 朝食を食べ終わると血糖値が上がってきたのか頭がさえてくる。それと同時に気になってたことがあったのを思い出して聞いてみた。


「そういえばアルスちゃんって魔法剣士なんだよね?魔法剣士って珍しくないの?」


「珍しいというか難しいと言った方がいいね。だって剣も魔法も熟達するには経験が必要だから」


 横からノアールが解説を挟んでくれた。聞かれた当人は澄ました顔で残りの食事を食べている。


「ってことはアルスちゃんって天才ってこと?すごい!かっこいいな~」


「べ、べつに天才じゃないです。剣も魔法も必要だから覚えただけです。」


(なんて謙虚なんだ、それにちょっと褒めただけで顔を赤くして可愛すぎる。)


「ふふっ、アルスは大昔の英雄に憧れてるんだよ。」


「ちょっと!余計な事吹きこまないで!」


「照れてる。」


「メイアも黙ってて!」


 現実でも異世界でも、過去の英雄にあこがれるのは共通するようだ。


「ところでその英雄はどんな英雄なんだ?」


「え?魔法使いなのに知らないの?どこの田舎から来たんだか・・・・・・」


「ハハハ、そりゃもう辺境の辺境ですよ。だからぜひ教えていただきたいなぁ~」


 会話の流れではなく、本心で知りたかった。過去の英雄なんて中二心くすぐられる単語を聞き逃せる俺ではない。


「えーっとね、1000年以上も前の話で詳しくは分からないんだけど。世界を滅ぼす大いなる災いを祓ったのが伝説の魔法使い『ロニチェラの魔法使い』だよ」


「『ロニチェラの魔法使い』?それは称号かなにかか?」


「そう、国が認めた魔法使いが称号を受けて魔法使いを名乗れるの。だから厳密には君もアルスも魔法使いじゃない。」


「でもそれだと何て呼べばいいか分からないから、便宜上冒険者ギルドでは魔法を使える者を魔法使いと呼んでるの。分かった?」


「なんとなく。じゃあその伝説の魔法使いが同じ魔法剣士なんだね!」


「そゆこと~。まあほんとに大昔の話だから実際どうだったのかは分んないんだけどね」


 1000年まえなんて途方もないくらい昔の話だ。それでも伝承が残ってると言うことは、それほどの偉業だったのだろう。


(へへ、俺もその魔法使いの次くらいには有名になってやるぜ)


 俺のやりたいことリストに、また一つ項目が増えたのだった。



次無双します、多分

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