ニートって行動遅いんよ
ヤバい、どうしよう。もう城壁に着くんだが。
あれから三日かけて運ばれた俺だが逃げれるのに逃げず、まあ明日でもいいかと後回しにした結果、タイミングを逃していた。
このまま城に連れていかれたら積んでね?いや、まあ無理やり脱出はできるだろうが大事になりそうな予感がする。
「そのまま大人してくださいね、私の仕事が増えるんですから」
「はい・・・・・・」
ダメだ、逃げれる雰囲気じゃない。
それにこの道中、暇してる俺の話し相手になってくれたのはこの子だからな。
二足歩行で追い回したのに、簡単に水に流してくれるなんて、彼女はいい子なんだろう。
今逃げたら彼女の責任になるんだよなぁ~、やっぱり彼女の仕事が終わってから逃げだそっと。
いまだに物事を後回しにする俺は、やっぱりくそニートなんだなと俺は思った。
暫くすると城壁に到着した。門兵が御者台の男と話をしている。
御者台に乗っていた男が門兵に木の板のようなものを見せている。どうやら通行手形のようだ。
「では、私の仕事はここまでです。これからはお城でゆっくり暮らしてください。」
馬に乗った状態でアルスは、おそらくは最後の挨拶のつもりで話してきた。
ワイはこれが最後にするつもりはないがね、ぐふふ。
「最後に連絡先をききたいな~って思ったりして」
「ふふっ、なんですかそれ、面白いですね。私はこの都の冒険者ギルドで活動しています、用事があればギルドに直接来てください。もっとも、もう会うこともないでしょうけど。」
そういうと最後に一瞥だけして去っていった。俺は彼女の後姿に「またね」と聞こえない声をかけるのだった。
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御者台の男は、荷台に乗せられた檻に大きな布地をかぶせて目隠しをした。
「しゃべる本なんて気色悪いぜ。嬢ちゃんは物好きだったようだが、都の連中には目立ちすぎるからな。くれぐれも静かにしてろよ。」
釘を刺されたがもう義理を通す必要もない、さっさと抜け出しますか。
俺は馬車が動き出すのと同時に小声で素早く詠唱をする。呪文は一節程度、今の俺には一秒もかからない。
発動した魔法は『鉄を溶かす魔法』。効果はあらゆる金属を溶解させる、大昔にドワーフが開発したとされる今では失われた魔法、だそうだ。
俺を縛っていた魔法の鎖は原型をとどめることができず、容易に溶け出した。
「さてと、抜け出したら早く人間に変身しなくちゃな。もう失敗はできない・・・・・・慎重に詠唱しよう」
そして人間になったら食べ歩きするんだ!、お金は・・・まあどうにかなるだろ。
そう決意を新たに檻から脱出したのであった。
次回王都観光、書いてて面白くなかったら変わるかも?