王城はまだ遠く
松明に照らされた堅牢な石造りの廊下を、焦燥する足取りで急ぐ影が一人。
カツ、カツ、カツ、カツ、と無駄に広い廊下を、少女の乾いた足音だけが響いていた。
あどけなさの残った顔立ちを曇らせて、少女は手に持つ書類に眼を向ける。
あるところで足音は止まる。少女はひときは豪華な作りの扉をコンコンコンとノックする。
「・・・・・・入りなさい」
凛とした声で招かれた少女は扉をあげて深々と頭を下げる。
「早朝に失礼いたいまします、王女様。占星術師からの緊急伝達です」
王女と呼ばれた女性は少女と同年代だろうか、だいぶ大人びて見えるのはその洗練された佇まいからだろう。
王女は受け取った書類に目を通していく。
【艮の方角に伝説の魔本の兆しあり、これなるは厄災の前兆なり】
「そう・・・とうとう現れたのですね。1000年以上も前に虚空へと封印された、この世すべての魔法が記された本。決して野放しにはできません。」
「至急早馬を走らせなさい!貴族に招集をかけます。七日で兵站を整えなさい!」
「承知いたしました!」
少女は弾かれたように部屋を後にする。残された王女は窓から見える日の出を眺めながら、誰にも見せないであろうため息を一つついた。
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魔本になった元ニートのおんj民である俺、花村 咲斗はどんぶらこ~どんぶらこ~と、檻のなかで馬車に揺られて運ばれてます。
町で檻に入れられてすぐに、俺はこうして運ばれることと相成りました。どうやら?俺は珍しい存在なので女王陛下への献上品にされるとのこと。人権ないんかね?あ、そういやあ俺本だったわ。
暇なので、なろう定番のやつをやっときますか。
「ステータスオープン!」
が、ダメ!※ステータス画面は表示されなかった。リアル系なのかな?。
万が一のために抜け出せるか調べてみる。どうやら巻き付けている鎖は魔法の鎖のようだ。
どれどれ、と自分の理の中から脱出できそうな魔法を探る。
自動で魔法の一覧が表示されるが。
『鉄を溶かす魔法』『反物質を生み出す魔法』『重金属粒子を高速で射出する魔法』ets。
やばい、最初以外物騒な魔法ばかり出てくる。もしかして俺結構やばい存在?。
さて、ふと視線を横に向けると、監視するように先ほど追いかけっこをした、桃髪の美少女が馬に乗って並走していた。
(さっきは気が動転して追いかけてしまったが、まずったかな?バッドマナー)
なんて当たり前の事を考えながら、どう話しかけようか思案していると、向こうから声をかけてきた。
「あなた、本なのにしゃべれるんですね」
嗚呼、前世でもプライベートで女性に声をかけられた事のなかったこの俺が、こんな美少女に話しかけられてる!。感涙の涙を流したいところだが生憎と眼球はないので、代わりにパタパタと喜んでみる。
「みたいだね。とりあえず自己紹介してみる?」
予想外の提案に目を丸くした美少女は、少し思案したあと口を開く。
「私はアルストロメリア、アルスと呼んでください」
「俺は花村 咲斗、よろしくアルスちゃん。可愛い名前だね(デュフフw)」
「ちゃん付けしないでください。気持ち悪いので」
辛辣だった。
「ところで、王城まではどれくらいで着くのかね」
「この速度だと3日はかかりますね、お願いですから出会ったときみたいな事はやめてくださいね」
釘をさされてしまった。まあさすがに大人しくしていようとは思っていたから、言われるまでも無いのだがね!。
暫く馬車に揺られていると前方から猛スピードで走ってくる馬が一頭。おそらくは兵士であろう男性を乗せて疾走していた。急いでいたのかこちらを一瞥もすることなく駆け抜けていった。
「あれは近衛の早馬ですね。何かあったのでしょうか」
「なんだろうね、でも厄介ごとは御免被るよ」
「それは同感ですが、貴方に言われたくはありません」
藪蛇だった。
運命のすれ違いだろうか、目的の魔本は伸ばした手をすり抜けて懐へと入っていく。
嗚呼、これも巡りあわせだろうか。
魔本は揺られて王都へ向かう、どんぶらこ~どんぶらこ~と。
次もでき次第だしますねぇ~。
〈キャラ紹介〉
名前:アルストロメリア
性別:女性
解説:桃色髪の美少女。たれ目に小さい口、薄く通った鼻筋がいまだ幼さを残しているが、数年すれば絶世の美女に育つに違いないだろう。
※未公開情報につき閲覧規制※
〈能力値〉
STR:B 実は力持ち
CON; C そこそこ
POW: A かなり強い
DEX: C 無くはない
APP: S 美少女二次元レベル
SIZ: C 身長150くらい
INT: A 頭いい
EDU: A 旧帝大卒レベル
〈能力〉
不明