前説の件、要らないと思いますが…
「いきなり何すんだよ!」
安友はいきなりドロだらけになっており、荷物も散乱していた。
「軽い冗談だよ!気にすんなっ!」
土木もんは、自然の空気を鼻から取り入れて口から吐き出す。それを3回繰り返してから、必至に荷物を拾い上げてる安友の髪を掴むと引きずりだす。
「つーか!トロトロやってんじゃねーぞ!みんな待ってるって言ってんだから、とっとと来いや!」
何本か髪の毛が抜けた気がしたが、全く気にしない。だって、自分のじゃ無いから…。
「おまたっ!悪いねー待ったかい?」
山の麓の小さな無人駅に、ミナちゃんと、ミナちゃんの次に人気があるレイナちゃん。そして何故か、イジメっ子のジャンゴ鈴木とその妹、ジャンゴ小嶋も待っていた。
「ミナちゃんと、レイナちゃんは分かんのに!何で、ジャンゴ(ジャンゴ鈴木のあだ名)とジャン子(ジャンゴ小嶋のあだ名)がいるんだよ!」
抜けた髪を少し気にしながらも、安友が叫ぶ。
「普通さぁ、こうゆう遠足ってのは男性の意外な所に女子は惹かれるもんだろ?だから、ちょっとしたサプライズって奴だよ」
土木もんは、安友に向かってウインクをして親指を立てた。
「ちなみに、ジャンゴとレイナちゃんはカップル成立したから。行きの電車の中で…」
行きの電車の中?見慣れない単語が出てきたので、安友は土木もんに問い詰めた。
「あー…ほら、ココに来るまで皆で電車で来たんだよ。で、僕だけ1回帰ってきてお前を連れてきた訳さ」
自信満々に語りだす土木もん。
「えっ?何で僕だけ仲間外れなの?皆は電車で、僕は土木もんのフンドシから出した臭いドアを通されて荷物は撒き散らかされて、泥だらけで髪の毛が抜ける思いで引っ張られたのさ?」
「そうゆう時もあるさ」
土木もんのサングラスの奥から、1筋のオイルが流れ落ちた。
「意味が分かんないからね!マジで!ミナちゃんも、そう思うよね!」
急に話しかけられ、少し怪訝な表情を見せながらミナが話し出した。
「この泥だらけの、汚ないのはドコで拾ってきたの?」
その問いに、土木もんは首を横に振った。
「僕だよ!安友だよ!同じクラスに居るでしょ!」
ミナは無言で、ジャンゴを見た。ジャンゴやレイナも考え込む。
「安友!見苦しいんだよ!少しは場の空気って奴を読めよ!」
土木もんは、安友を持ち上げるとジャン子の隣に置いた。
「俺は、案内人だからペアは要らないんだよね。ジャンゴとレイナペアとジャン子と安友ペア、ミナちゃんはどうしようかな…」
強引に安友をジャン子とくっつけて、余ったミナのペアを誰にするか考えていると、安友が叫び出した。
「うるせぇぞ!安友の分際でよ!ウダウダ文句言ってんじゃねーよ!…んっ?そうだそうだ!暇な人が1人居たな」
土木もんは思いついたかの様に、フンドシの上のポケットをゴソゴソと漁りだした。
「どこでもランドの兄貴ぃ~!」
ポケットの中から以前、安友のお株を奪った他、変な薬を飲んで強くなった安友をボコボコにした張本人が現れた。
「ここ…何処だ?」
ポケットから出されたランドは、辺りを見渡し聞いてみる。当然と言えば当然であるが…。
「ランドさん!お久し振りです!元気にしてましたか?」
目をキラキラさせ、安友にも見せたことの無い笑顔でランドに近寄るミナ。
「ランドの兄貴!お久し振りです!ランドの兄貴にまた会えて嬉しいです!」
土木もんもまた、今までの態度と打って代わって感激する。
「土木もん!ふざけんなよ!何でソイツが出てくるんだよ!てっきり、100歩譲ってジャンゴの片割れみたいな奴が出てくるのかと思ったのにさ!」
ギャーギャー文句をぶちまける安友に、土木もんのパンチが綺麗に入る。
「うるせぇって言ってんだろ?なぁ?本来ならお前は誘わない感じに話を進めてたんだよ!だけど、急遽ジャン子が来るって言うから、お前を誘ってやったんだから感謝しろや!」
「何だよ!最初から、ジャン子とペアって決まってたのかよ!だったら、あの長い前置き要らないだろーが!マジで!もう3話になるのに、一向に始まって無いからね?遠足!」
土木もんは、安友にアイアンクローを決めると、そのまま地面に叩きつけた。
「じゃあ、そろそろ山に登るから!ランドの兄貴の紹介とかは、歩きながらやるから皆付いてきてね!」
急に張り切りだす土木もんは、先頭を歩きだした。
「くそっ!アイツなんかに、ミナちゃんを渡してたまるか!みんな、アイツの本性を知ったら…くっくっくっ」
安友はヨロヨロと立ち上がると、歩きだした。