受験生のチャットA
クリスマスも過ぎ、公の場から華やかなイルミネーションも取り払われ、皆が新年を祝おうとする空気感の中、年越しを最も嫌う人種がいた。もちろんそれは、冬コミの終わりを惜しむヲタク達ではない。
「受験生」だ。
もう、共通テストまで残り僅か。時間が欲しい、あと一か月でもあれば────
普通は寝る間を惜しんで勉強するのがセオリーのはず、なのだが……
今日も私はネットサーフィン。堕落しきったこの生活に危機感を覚えつつも、この抑えきれない背徳感に快感すら覚えるのも事実だ。
そんなこんなで、てんで受験生とは思えない生活を現在進行形で送っている。
そんなある朝(12時)、目を覚ますと友人Nからメールが来ていた。
『最近徹夜続きで精神状態ヤベェ』
うむ。これこそまさに真の受験生。
まさか、こんなに身近にいたなんてな。
俺は驚きを隠せない。
E氏と同じくこちらも単なる学校アンチとしか思っていなかったN氏がここまでの進化を遂げるとは。
ここまでの受験生に仕上がるとは──
俺は、彼の努力に報いるべく、必死に返信内容を考える。
考えあぐねた結果、返信は
『どうせ、勉強してない癖に。嘘松乙』となった。
もちろん、彼に対する不信感からこう送ったわけではない。
しっかり、俺なりに彼に対する評価をしたつもりだ。
ここで、励ましのメッセージを送ると、彼は堕落してしまう。かといって、無関心を装った返信をしてしまうと、彼の承認欲求が満たされない。
厳しい選択を迫られた私は「煽り」に回ることにしたのだ。
ただ、悲しい哉。彼は私の送った「真意」に気づくことができず、「逆切れ」を始めたのだ。遂に彼は私の善意を受け入れてくれなかった。
『ふざけんなよッ! しっかり勉強しとるわ! ずっとパソコンに張り付いてるのはお前の方やろがい!』
まあ、正直「逆切れ」はどうでもいい。
問題なのはどうして彼が「私がずっとパソコンに張り付いている」この事実を知っているのか、だ。色々と思索を巡らせた結果、ストレートに聞くことにした。
『なんか俺がパソコンにへばり付いているってデータでもあるんスか?』
一度、煽りを始めたら最後。
俺はしっかり首尾一貫しないと気が済まないたちなので、某有名人の語り草を引用した。
すると、N氏がこう返してきた。
『お前キッズかよ。寒いしイタいからやめてくれ。鳥肌が立つ。データって、そりゃお前のステータスがずっとオンラインだからな。みりゃわかるよ』
俺の使っているSNSでは相手の状況を逐一見ることができる。
オンラインなのかオフラインなのか──をだ。
ということは、彼は俺のステータスをずっと見ている……?
真理に気づいた俺はすかさず彼に返信した。
『お前、なんでそんな詳細に俺のステータス知ってるん? それってずっとスマホいじってるってことじゃないん?』
三分ほど、返信が返ってこない。
彼のステータスはオンラインのままだ。
私が勝ち誇ったように、したり顔で全裸待機していると、やっとこさ返信が返ってきた。
『んぐう……お前、これで勝ったと思うナよ!』
何処かで聞いたことのあるフレーズとともに彼のステータスはオフラインに切り替わる。
真の受験生への道のりはまだ長いようだ。




