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親友の死  作者: クスクリ
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成澤の葬儀Ⅵ(告別式・弔辞)

 今日も高速を使った。朝9時過ぎには小倉を出たが、眠気覚ましに古賀SAで若干の仮眠を取ってしまう。鳥巣に着いたのは11時前だ。34号線のリンガーハットを目印にしたつもりが、行き過ぎてしまって鳥巣市役所前まで来てしまって、慌てて左折した。県道31号線の交差点をもう一度左折すれば八坂神社、古野町を抜けて国道34号線に出れると思っていたが、道が変わっていてもう一度左折させられる。


 ゆきあたりばったりで弔辞を述べようと考えていたが、『待てよ、言いてぇこと失念してしまうんじゃねぇか』と不安になった俺は、車の中でスマホに弔辞を打ち込みだす。そうしているうちに横に豊田の軽が止まる。

「弔辞考えて来たか?」と俺。

「一応何かに書こうとは思うとる」と豊田。

「俺はスマホに打ち込みよるわ」と俺。

 俺と豊田、暫し、車の中で、文章作りに励む。


 葬儀場に入ったら、成澤の嫁に精進料理の昼食に呼ばれた。体重を抑えねばならない俺にはちょうどいい量だった。飯を腹一杯を食って来たばかりの豊田には辛かったようだが、俺にはラッキーだった。着いたら横のセブンで弁当でも買って食べようと思っていたが、弔辞の作成で時間を費やしてしまっていたから。


 受付は葬儀会社の係員がやってくれている。告別式は参列せざるを得ないようだ。じゃないと弔辞は読めないよな。野方とのりみちは今日もやって来てくれた。ありがたい。

 俺と豊田は友人用の席の最前列に座らされる。豊田は茶色の封筒らしきものにボールペンで書いている。

「何か、俺のごとスマホに打ち込んだ方がよかったんやねぇか」

「スマホは字の小そうて見えん」


 僧侶の読経が会場に響く中、先ず日本赤十字の弔辞から始まる。次が俺だ。参列者の視線は俺に集中するだろうが、振り返らないから分からない。俺は、花祭壇に囲まれた大きな成澤の遺影、その前の棺に向かって立つ。別に緊張している訳ではなかったが…。


 弔辞

 成澤、お前ば亡くして、俺の心の中にゃぽっかり穴があいちまったぜよ。

 お前も知っとるごと、俺は天の邪鬼や。心を許した奴としか人生ば通して付き合ったりせん。やから、俺の結婚式に呼んだんも、友達ではお前と豊田だけや。

 高校卒業以来40数年、お前とのことが走馬灯のように脳裏に甦ってくるぜよ。俺がお前を直接知ったんは、高校二年で同じクラスになったときや。修学旅行んときもいつもお前とつるんどったよな。

 そいまでは噂でしかお前のことは知らんやった。中学んとき悪童やったっちゅうな。先行にぼこぼこにくらされて(殴られて)一日中廊下に立たされとったっちゅうな。

 俺は中学二年のとき転校してきたばかりで、借りてきた猫のごとおとなしかったけん、そんなお前にビビっとったんかもしれんな。笑い話やが。

 俺もお前も現役では大学受験に失敗して、仲良く浪人や。ばってお前はすぱっと割りきって役所に就職して40年、真面目に勤めあげて、子供二人大学にやって家も建てて、俺はそんなお前に頭が下がるわ。

 俺らはお気楽な大学生やったけん、明日仕事っていうお前のことなんか全く気にせんで徹マンに付き合わせてしもうた。すまん。お前は疲れとるいうんに、嫌な顔一つせんで俺らに付き合うてくれたよな。今、そんなお前が、「おうYNR」って呼び掛けてくれる声が幻聴になって聞こえてくるわ。

 青春の志賀島でのお前との写真、引き伸ばして持ってきたぞ。棺に入れとくぞ。いずれ俺もそっちに行くけん、一緒に見て昔語りしようや。

 社会人になってもずっとお前との親交を保ってきたばって、残念で溜まらんことがお前と最後に会ったんが二年前やったってことや。その間、一度俺は鳥巣にやって来たんに、何でお前の家ば訪ねんやったかって後悔してもしきれんわ。

 最後に、

 成澤、近頃俺が死ぬんが怖くなくなったんは、あの世で逢って語り合いたいお前が居るからや!

 安らかに眠ってくれ!


 ダメだ!

 完璧に堂々と読み上げるつもりだったのに。亡き大親友成澤のために、いつも通りのべらんめぇ口調で書き上げた弔辞。出だしから頓挫してしまった。でも、情けなくはない。やっぱり、ここで男泣きしなかったら無二の親友の証明にならない。

 涙で咽んで自分でも言葉になっていないのが分かる。まずい、格好悪い。何とか中盤から立て直したつもりだったが、参列者はちゃんと聞き取れただろうか。


 席に戻った俺は、豊田に、「どうやったや?」

「前半はほとんど聞きとれんたやったばってん、何となく分かった」と言ってくれた。


 今日の遺族挨拶は長男のKI君だった。涙声になることもなくしっかりと務め上げた。でも、KI君一週間前、お邪魔したとき、成澤の嫁は鬱で入院しているとか言っていたが、もういいのだろうか。

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