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お隣さんの彼氏として親と会うことになりました

作者: 夏目ななだ

初めての短編小説です!ぜひ最後までよろしくお願いします!

『明日お時間ありますか?頼み事があります』


いきなりLONEでピロンッと来たこの通知。

なんだ?頼み事?俺にか?

大学の友達と一緒に飲みに行っていた時のことだった。

送り主は佐藤さとう小咲こさき。俺のお隣さんだった。

まぁ飲み会中だったので俺はそのメッセージを深く考えることなく無視する。


ただ、このメッセージがこれからのつまらない人生を変えてくれるとは全く思っていなかった。



◇大学で出会いは程遠い


大学生になり始めはおめでたい頭をしていたので、まぁ彼女ぐらい何人かは俺でも作れるだろ。

こんなノリで過ごしてきて早一年が経過したものの、全くもってできない訳である。


そんな俺でも男友達は居るほうでたまに女子の居る飲み会に誘われる。何なら今してるところだ。


「ほな!お先に失礼しまぁーーす!」


友達が可愛い女の子を連れて出ていった。

これがいわゆるお持ち帰りというやつだ。みんなは「あいつやるなーいいなぁー」とばかり言っている。ただそんなこと言っている奴だって目の前に居る女子とはとても仲よさそうに話している。


「世の中って不平等だよなぁ」


なんであんな簡単に女子をお持ち帰りできるんだ!?

過去に告白した時だって


『えっと…ちょっと無理かなぁ。ごめん!』


なんて言われて断られたのに他の奴は付き合ってみない?で成功だろ!?

毎回思うが自分がとても醜い…


康介こうすけ!最近良いことことでもあったかぁ~?」


完璧に出来上がっている友人は一人でチビチビ飲んでいる俺にちょっかいを掛けてくる。

ったく、俺のどこが良いことあったように見えるんだよ。


「あー、それがねぇんだよなぁ~。どっかに可愛い女の子落ちてねぇかなぁ」


その場の空気を崩さない程度に酔ったふりをする。実際のところは案外お酒に強いので酔うことはあまりない。

そんなことを言った瞬間に一人の女の子と目がパッとあった。


なんだ!?俺に気でもあるのか!?なんて思ってみたものの、すぐにそっぽを向かれる。



そんな時のことだった。俺のLONEに一つの通知が入る。


『明日お時間ありますか?頼み事があります』


なんだ急に、頼み?俺にか?

可愛いウサギのアイコンからのメッセージ。

お隣さんの佐藤小咲だった。案外仲のいいお隣さんでしかも美人だという特典付き。


「案外これが良いことかもなぁ~」


「ん?にゃんか言ったかぁ~?」


「いいや?何も?」


別に後にでも返事しとけば良いか…


「康介!もういっちょ行こうぜ!」


「はいはい…」


* * *


「いやぁ!康介ええぞ!良い!なんか良い!」


完璧にアルコールが体中を駆け巡っている。足の歩き方がフラフラで今にでもコケそうだった。


「お前飲みすぎだ。早く家に帰って寝ろ」


「もう一軒でも良いじゃぁん?まず今何時なんだよ~康介くぅん」


「あ?時間?」


時間を確認するためにスマホを開く。

通知欄に例のLONEがあったのに気付いた。


やっべ、忘れてた。急いで返さねぇと。


『ああ、いいぞ』


とりあえず返信だけは済ませておいた。

明日は別に大学があるわけでもバイトがあるわけでもないので時間はあり放題だし。




◇お隣さん



太陽が眩しい今日という日。

小咲さん曰く今日に頼みごとがあるから時間をくれだそうで?


佐藤小咲は俺のお隣さん。今まで見てきた人の中で可愛い子ランキングトップ5に入ってもおかしくないような可愛い子。


年齢は詳しくは分からないが俺より下だと言っていたので一年生かもしれない。ただ大学生になった機会に一人暮らしを始めたそうで俺の家の隣に住んでいるということだけは知っている。

年齢がそんなに変わらないこともあって、お互いに友達感覚で接しているほどの距離だ。


一つ下でお隣さん、しかも美人(というか可愛い)人がすぐそこに居る。それなのに付き合ったりそんなラブコメ展開にならない原因は俺。


俺は昔から女っけが全くないモテない男だった。中学校の頃に一度だけ告白した時だって断られるだけじゃなくて「まじかこいつ」みたいな対応で徐々に自信を無くしていた。


高校は男子校で女子と出会うなんてなかったので彼女なし=年齢というやつだ。

そんな俺だからこそグイグイ進んで彼女ゲット!ができないのである。

毎日ゲームしては寝て学校、または男友達と一緒に遊びに行く。それはそれで幸せなんだけどやっぱり人生にはバラが必要なんだよなぁ…



「あーっ、なんか久しぶりに飲んだから目覚め快調だわぁ~」


人間朝日を浴びて起きると寝起きが気持ちいと言う。今回の場合はお酒も加算されていつも以上に寝起きが気持ちい。


朝のモーニングルーティーンのトイレを済ませて朝にコーヒーを飲みながらテレビを見ていた、そんな寝起きの時だった。


『今からでも大丈夫ですか?』


昨日の連絡の続きで小咲さんからだった。


『いいよ』


別に何時でもよかったので今からでも何でもない。パジャマ姿だって朝に何度もゴミ出しなどでみられているので気にすることはない。

すぐ来ると思ったので玄関に向かったところ直ぐに玄関のベルがなった。


「康介さーん!来ましたー小咲でーす!」


ドアの向こうから俺の名を呼んでいる透き通るようなきれいな声。

ドアを開けるとニコッと笑顔を見せた可愛い女の子。その笑顔で何度か分からないほど励まされたかわからない笑顔…


「康介さん!おはようございます」


「おはよ小咲さん。なんか今日は話だって?」


「はい。折り入って相談事がありまして…」


「まぁ外で話すのもあれだし汚いけど上がる?」


「はい!お邪魔しまーす!」


何回か小咲さんを家に上げているとは言えども、こんな子を上げるのはやっぱり緊張がすごくて冷や汗をかいてしまう。


小咲さんがリビングに入ったところでスマホを出し例の画面を見せる。


「それで?このLONEのお願い事って?」


「それが…すごく頼みにくいんですけど」


「とりあえず内容だけ言ってくれ。それによって決めるからさ」


正直言って俺には何にもできない内容じゃない限りは引き受けようと思っている。この子が俺に頼ってくれたんだからそれに答えられる様にしたかったから。


リビングにある大きなテーブル席にチョンっと座った後に真面目な顔になった小咲さん。


「私の彼氏のふりをしてほしいんです」


「え?彼氏…のふり?」


予想の斜め上の答えが来て戸惑いを見せてしまった。しかし小咲さんの顔はいたって真面目そうにしている。

この戸惑いを隠すために冷蔵庫から紅茶を引っ張り出して彼女の目の前に出した。


「彼氏のふりって…具体的にはどうすればいいんだ?」


「お父さんの前で、私が康介さんを彼氏として紹介する。その時だけで良いんです」


小咲さんがシュッと肩を縮めている。

もともと小咲さんのお願いに対しては変な勧誘以外は了承するつもりだった。ただそれは荷物が来るから運ぶのを手伝ってほしいだったり、旅行する間にペットを預かってほしいなどを想像していた。

だから今回に関しては俺の頭が回っていない。


「えっと、俺今まで彼女なんて一人も居なかったからフリって言ってもばれるかもしれないぞ?」


「大丈夫ですよ、私がどうにかしますし?そこは心配いりませんよー」


机の下で足をパタパタと降っているところを見ると頼み事がとてもノリノリな感じがする。


「だいたい、なんでそんな彼氏のフリなんてしなきゃいけないんだ?」


「お父さんに言っちゃったんですよ。彼氏できたからこっちは大丈夫って」


「お父さんに嘘?嘘ついたから俺が彼氏のフリって…どういうこと?」


「私のお父さんが、嘘嫌いなんですよ。私が昔にお父さんに嘘ついたときに無茶苦茶に怒られたんです。今だって一人暮らしを半ば反対の中でこっちに来てるんでそこに嘘なんてついたってばれたら…」


ノリノリだった小咲さんの顔が徐々に暗くなって下を向いてしまった。

先ほどまでのテンションは単なるやせ我慢だったと今更気づいた。


別に無理だとは思わない。彼氏のフリだって俺も男だ、可能なのは事実。ただこんな可愛い女の子に俺みたいな彼氏が居るというのをお父さん以外の人に言われたら生きていきにくいのは紛れもない小咲さんだ。


「だから康介さん!本当にお願いします!お礼だってするので!」


「まぁ小咲さんが俺でいいんだったら構わないよ。ただ言った通り彼女なんて居なかったからまともな服ですらないぞ?」


LONEなどで遊ぼ―なんて言われた時には絶対に男友達からだ。しかもLONEに入っている女子なんてお母さんと妹しか居ない。毎度その現実を見せられている…


「康介さんってこれから用事ありますか?」


「いや、これと言って用事なんてないけど」


「それじゃ話は早いですよ!」


小咲さんが晴れた顔でバッと椅子から立ち上がる。


「康介さん!今から買いに行きますよ!あ、お金は私持ちですから」


「え?」


小咲さんは俺の腕を勢いよく掴んではそのまま玄関まで走らされた。

ただ、俺の今の格好はパジャマ。急いで腕を払って玄関から飛び出すのを止める。


「待て待て待て、俺パジャマ!パジャマだから着替えるまで待ってくれ!」


「早く着替えてくださいねー」


意気揚々と靴を履いて玄関を飛び出していった。


要するにこれから二人っきりで服を買いに行くということ。女子と一緒に買い物って過去に記憶がない。なんだこのワクワクする感じ…


「あ、服どれで行こ…」


そんな場合じゃなかった。



◇お買い物!お買い物!




「よし、それじゃ康介さんの服買っていきますか!」


言われるがまま車を運転して早三十分ほどだろうか。

着いたのは洋服店や飲食店などが入っている大型複合施設だった。服を買うのにはうってつけだということか。


車から飛び出した小咲さんは周りを見ずに車が通る道へと飛び出していった。


「康介さん!さ!早く行きますよー」


朝からこの人はどれだけの元気が有り余っているんだ…。まぁ逆に暗い雰囲気のまま買い物されるよりはマシだけども。


少しぼーっと小咲さんを見ながら歩いていると横から車が来ているのが見えた。避けるだろうと思っていたが小咲さんは全くもって気づいた様子はなかった。


「小咲さんっ!」


俺は自分が出せる限りの疾走、足が疲れてるから余り走るなと言っているような痛みだったが間一髪小咲さんを車から遠ざけることができた。


「っ!?」


「くるっ…車が来てるからマジで気を付けてくれ…」


「えっと…」


「あっ」


小咲さんの頭がいつの間にか俺の胸にあった。勢いよくし過ぎたせいで小咲さんが俺の元へ倒れてきたっぽい。ほんわりと甘い香りがする。シャンプーのにおいか?

そんなこと考えてる場合じゃない。


「すまんすまん。勢い強すぎたわ。…申し訳ない」


感覚的にハグのようなことをしてしまった俺はバッと小咲さんを体から引き離す。


小咲さんはジッと下を向いてこっちに顔を見せてくれない。


気まずい…こういう時って何を言えばいいんだ?何にも言わないし顔も見えないから何考えてるかもさっぱりだし…


俺が心の中で焦っていたところ小咲さんは顔を上げた。


「ありがとうございます!いやぁ康介さんが助けてくれなかったらって考えたら怖いですよー。ファインプレー流石康介さん!」


ニコニコ笑いながら言ったと思うと直ぐに背中を向けて先先と歩いてしまった。


なんなんだ?やっぱり俺が密着しちゃったのが嫌だったのか?

意図的ではないとは言えど二十歳前の女の子に密着してしまったんだ。そりゃ世間からしたら許してくれないよなぁ。


* * *


「ほら!ここから私がコーディネートしてあげます!」


小咲さんの後ろをノコノコと着いてきたところは庶民の味方、GEだった。お父さんに会うと聞いたので、お高い店だったらどうしようかと思っていたが俺にでも入りやすい店を選んでくれた。


「康介さん!こんな感じのは…あー、これはちょっと違うなぁ」


服を選んで持ってきては俺の胸に服を当てる。

持って来た服のどの部分がダメだったんだ?俺にとっちゃデザインだって良いしなぁ。


メンズコーナーで服を物色している小咲さん。ひとりで何かブツブツと言いながら選んでいた。


「んー、これどうですかね?一度試着してみてくださいよ!」


ホラホラッと小咲さんに押されて試着室に入れられた。

流石にそこまでしなくても自分で行けるのに…


小咲さんが持って来た服をとりあえず来てみる。

シンプルな服を重ねて着ることによってオシャレを出していた。どうやったらこんなシンプルでもオシャレな服にできるんだ?


「えっと、小咲さん?とりあえず着てみたんだけど…」


「あ、やっぱり良いじゃないですか!それじゃこれで行きましょ!」


小咲さんいわくこの服装は合っていたらしい。

確かに今までの一つ変なワンポイントが入っている毛玉だらけの服よりも百倍ほど違ってオシャレだ。



スマホをジッと眺める小咲さん。次の場所でも探してるのか?


「よしっ!服は大丈夫かなぁ~」


何かを調べている間に元の服へ着替え直す。普段なんて適当に選ぶんだけどなぁ…


俺が終わって出たころには小咲さんの姿はなかった。周りを見渡してみても居ない。


ブゥゥー


スマホが鳴った。確認してみると小咲さんからのLONEだった。


『試着コーナー出て直ぐ左に曲がって行き止まりまで来て。そこに居るから』


らしい。


左の方へ進んでいくとメンズコーナーからレディースコーナーへと移り変わっていく。ちょっと周りを見ても若い女の子ばかりだった。なんか行きにくいなぁ…


そんな中進んでいくと目に飛び込んできたのは女性物の下着だった。


「えっ」


小咲さんどこに居るんだよぉ、頼むから早く他に行かないと俺が居ずらいんだよ。

軽く下を見ながら小咲さんを探していると見覚えのある後姿があった。

小咲さんだ。


「あ、ごめんなさい!ちょっと私も見たいものがあったんで~。ちょっとこれ買うんでレジ一緒に行きましょうか」


右手に持っているものは女性物の下着。小咲さんは何も躊躇ためらいもなく下着を見せてくる。


これが小咲さんのつける下着…。めっちゃ見づらいんだよ。


* * *


服系統の物を買い終えて次に来たのはスーパーだった。

スーパーのかごを持って颯爽と奥の方に入っていく小咲さんを俺は追いかける。


「康介さん、今日の夜ご飯の為に食料買っていくので私が言った物お願いできますか?」


「ああ、そんなの全然構わないぞ」


「それじゃ、まずお父さんが飲むのでビールお願いしたいんですよ」


「ビール?」


「私あまり分かんないんですけど確かキジンでしたっけ?」


キジン。よく俺の親父も飲んでいた横に馬のようなものが書いてある黄色のビールのことだろう。


「ああ、わかるわかる。それじゃ取ってくるわ」


「はい、お願いします」


小咲さんに言われた通りにビールを探しに行く。小咲さんはまだ未成年のはずだからお酒は飲めないから全く知識がないんだなぁ。かと言っても俺もそこまでお酒を飲まないから詳しくないんだけども。


* * *


「よし、これで一通りは揃いました」


「それじゃ俺買って来るから出口で待ってて」


「あ、はい…じゃあ出口で待ってます」


小咲さんがレジの横側を通り先に出口へ歩いて行った。

この中にはお酒も入ってるから小咲さんじゃ止められる。しかも年齢以上に若く見えるから仮に二十歳行ってても…引っかかると思う。



店から出たところに小咲さんがやけにソワソワした様子で時間を確認していた。


「どうしたんだよ、そんな時間ばっかり気にして?なんかこの後用事でもあるのか?」


「お父さん、明日じゃなくて今日に来るんでした…時間あと二時間あるかないか程です…」


「はぁぁぁ!!??」


今の時間は四時を回ったところだ。てっきり俺は明日にお父さんが来ると思っていたが今よくよく考えると小咲さんから時間関係のこと一切聞いていなかった。

しかもあと二時間って…


「とりあえず急いで準備しますんで家までかっ飛ばしてください!」


「ああ、分かってるよ!」


急いで駐車場まで駆け上がり車へ飛び乗った。重い荷物を二人とも持っていたので普段以上の吐息音がした。


「あ、あ、安全運転でお願いします!」


「はいはい、その代わり家に着いたら小咲さんメインだから頼むぞ!?」


「そこら辺はどうにかします。康介さんだって彼氏役しっかりやってくださいね!」


「…まぁできるとこだけな」


* * * * *


できる限り渋滞がないような道を使って何とか二十分だけで家に帰ってくることができた。


途中の車の中で小咲さんがブツブツと『これ時間かかる!あ、こっちなら…』と言いながらスマホを凝視していた。多分、全ての予定が狂ってしまったので別の料理を考えてた。


着くころには料理を決められたのだろう。家に荷物を運び終わったとたんに


「さっき買った服を着て、バッチリセットしてからこっちに来てください。その間に私は私で料理を作っておきますから!」


と言われてしまった。


小咲さんのお父さんに彼氏として登場する俺はちょっとでも変なとこが無いように念入りにチェックをし終えたので小咲さんの家へ入った。



リビングに入ると机の上にズラッと料理が並べられていた。綺麗な形をした料理たちを眺めていたところ小咲さんは俺がリビングに居ることに気づいたようだった。


「あ、終わりましたか!こっちももう少しなんで!まぁ後は適当にテレビでも見てゆっくりしててください」


そう言われてもなぁ。女子の部屋に入って適当にゆっくりしろだと?俺にそんなハードなことができるわけがない。どこに座ったら良いんだ?どこを見たらいいんだ?俺式の例えだと、女子の部屋はジャングルの中に置いて行かれて右も左も分からない奴だ。


とりあえずはソファーに座ってボーっと忙しそうに動いている小咲さんを眺める。

料理をチンで温めている間にフライパンを使って何かを焼いていたりと何の動きにも隙が無い。

何も考えずに座っていると小咲さんから


「お父さんあと十分で着くらしいから服とかしっかりしててくださいね!」


「あ、あと十分か…」


あと十分後には俺はこの小咲さんの彼氏としてお父さんの前に座るのか…

そんなこと考えていたら胃が痛い。


胃が痛い思いをしながら時間を待つこと早五分ほどだろうか。机には完ぺきに料理が陳列されていた。どうやら小咲さんの料理は無事間に合ったようだ。


料理を無事に終えた小咲さんが満足そうな顔で隣に座ってきた。


「いやぁ、何とか間に合いました!私はもうすること何て何にもなし!あとは康介さんの演技に掛かってます!」


「そんな期待されても困るんだよなぁ。だってお父さんに質問された時だって何て返せば良いやら…」


「ある程度は私がサポートします!だから私を明らかに避けたりするようなことは控えて欲しいです。怪しまれそうですかーらっ!」


「っ!?」


横に座っていた小咲さんは俺の肩に頭を置いてきた。急にそんなことをされたので条件反射でソファーの端っこまで逃げてしまった。


「小咲さんっ!」


「フリですって!第一、康介さんがそんな私に距離置かないでくださいよ!変なことする訳でもないんですから」


「変なことしないって…いくら何でも小咲さんは無防備というか、フリとはいえそこまでしなくても良いだろ?」


ちょっとでも仲良しアピールをして彼氏のフリをするのは確かに大切だ。ただこの俺にそんなことを無理にしなくても、しかも今は別にお父さんの前じゃないのでする必要なんて一切ない!


「え、何ですかぁ??無防備だなんて、康介さん私のこと襲っちゃったりします?」


「おい、そこ調子乗るな!」


「えへへ、案外そういうところ面白いですね」


「別に何とでも思っとけっつうの」


そんなことを話していると家のチャイムが鳴った。

そのチャイムは明らかにお父さんが来た合図だと分かった。


「あ、来たみたいだから頼みましたよ?」


「お、おう。任せとけ」


ついに来てしまったこの時が。小咲さんが玄関に向かってしまった、玄関のドアが開く音がする。

襟は曲がってないか、変なごみが付いていないか。社会の窓が開いていないか入念にチェックを済ました。




◇お父さん



「お父さん!久しぶり~」


玄関の方から小咲さんの声が聞こえる。その話し相手は明らかにお父さんだ。


「ああ、元気にしてそうで何よりだな。」


「うん、元気元気!あ、あとこの間言ってた…」


「ああ、彼氏君が居るんだって?」


『彼氏君が居るんだって?』

この言葉を聞いた瞬間にしっかりと挨拶をしないと不味いと思ったので急いで玄関へと向かった。


「えっと…こんにちは。お父さん、聖澤ひじりざわ康介こうすけです」


「私は聞いてると思うが父の佐藤さとう和彦かずひこだ。よろしくな」


「はい!お父さん遥々(はるばる)こちらまですみません。荷物持ちます」


「ああ、すまんね。助かるよ」


何でだろうか。小咲さんが言っていたお父さんを想像していたので、もっと頑固な怖い人だと思っていたのだが比較的柔らかそうな人で物凄く話しやすい。


荷物を持ってそのまま小咲さんの家のリビングまで連れていく。

お父さんはリビングに着くなりダイニングテーブルに座った。


「はぁ、こりゃまた豪勢な。わざわざ作ってくれたんか?」


お父さんは小咲さんが作った豪華な料理を見てたまげている。


「うん!折角こっちまで来てくれたんだもん」


「あちゃぁ~。それだったらちょっとばかし申し訳ねぇことしたなぁ」


お父さんは頭を少し下に向けながら申し訳なさそうに話し出した。


「こっちには長めに居る予定だったんだがこれから予定が入ってなぁ…三十分程居られるか居られないかなんだわ」


「え、そうだったの!?」


お父さんは小咲さんの家には三十分居るか居ないかだと言う。

それを立って聞いていた俺。内心はとても嬉しかった。というか三十分の辛抱だと考えたら心がホッと落ち着いた。


「まぁこのビールも今日はお預けだなぁ。そういや小咲、お前お酒飲めるだろ?」


「え?」


お父さんが小咲さんにキジンのビールを申し訳なさそうに渡す。


あれ?小咲さんってまだ未成年じゃないのか?飲めない年齢じゃないの?


「まだ一回しか飲んだことないんだよ?」


「まぁいや程これから飲む機会があるだろう。練習だ練習、康介君は飲めるのかい?」


「あ、はい!僕はどちらかと言うとお酒に強い方ですね」


立ちながら話すのも悪いのでお父さんの向かい側の席に座る。


小咲さんを見ると早速プシュッと音を立ててチビチビとお酒を飲みだしていた。

本当に飲めるのか…?


「康介君、小咲とはどうだい?上手くやれてるか?」


真正面から見つめられて困る話題が来た。俺が一番今回で恐れていた話題「娘とはどうだ?」だった。

ここでウジウジ答える訳にもいかないので、日頃小咲さんに思っていることを正直に言ってみることにした。


「小咲さんとは上手くお付き合い出来ているつもりです。日頃の些細なことに対してもポジティブに考えていたりしていて凄いと思いますし、ずっと笑顔が絶えない人でこっちまで笑顔にさせて貰ってます。可愛くて優しくて、とくに…ん?」


隣を見るとグタッとしている小咲さんの姿があった。さっきから静かだなとは思っていたがまさかこれだけのお酒で潰れたのか?

キジンの缶を持ってみると中身は何にもない空っぽだった。


「あ~小咲は母さんの方に寄っちゃったか」


「お母さんですか?」


「ああ。あっちもあっちでお酒にめっぽう弱くてな。一本飲むだけで直ぐに寝ちゃうんだよ」


「そんな所も似るんですね」


「可愛いだろ?だからな、こんなお酒にさえ弱い小咲だ。さっきの惚気のろけ話をちょっと聞いただけでも君が心の優しい人だって分かったよ。私はね、人を見る目だけは自信があるんだよ。その目で見た君はよかった」


やはり俺が思った通りだった。小咲さんは厳しい親だと思っていただろうがそれは愛情があるからこそ厳しくしてしまったのだと思った。


何故か親しみやすい小咲さんのお父さんはすごくおじいちゃんのような、失礼だがその様な安心する感じで俺の緊張などは一切なくなってしまっていた。



お父さんは小咲さんを見ながら席を立った。


「小咲がこのようだし私は帰るよ。あとのことは君に任せる」


「あ、はい!任せてください」


胸を張って答えた俺を見てニコッと笑顔を見せながら家を後にしてしまった。

結局はご飯も何も食べずほんの一瞬の嵐、いや春風が去っていた。




◇二人っきり



「小咲さん?大丈夫か?お父さん帰ったぞ?」


「康介…さん」


小咲さんが重そうにしている体をゆっくり起こして椅子に座りなおす。

目を何度もパチパチとしてとても眠そうな小咲さん。


「私を、ベットまで…運んでくれませんか…動ける気が。無理です…」


「ベットまでって…どうやって運べば良いんだよ?」


「そりゃぁ…お姫様抱っこ…じゃないん、ですか?」


「第一お前が嫌だろ。俺にお姫様抱っこされるなんて」


「良い、です…よ。してください…康介さんなら。いいです…」


うっとりとした目をして俺のことを見つめてくる小咲さん。今にでも椅子から倒れそうにしていたので戸惑いつつも肩を持って倒れるのを防いだ。

しかしこれからどうすればいいんだ?そのままベットに運んだ方が良いのか?いや…俺にそんなこと出来るわけがない。


―これは理性を抑えるのだけでも相当苦労する。


「あのな…俺は彼氏役をしていたが童貞もやし男だぞ。そんな奴にお姫様抱っこって…美女と野獣超えるぞ」


「それだったら私は、獣になったら…平等に、できますよね?」


「なんだよそれ」


「あー!もう!」


小咲さんが行き成り立ち上がると一瞬ふらっとした様子で俺の元まで歩いてきた。


「なんだなんだ?」


「…」


黙ったまま俺の元へ倒れこんでくる小咲さん。倒す訳にもいかないのでしっかりと支えたのはまだ良いとして…このシチュ二回目のはずなんだけどマジで慣れん!理性飛ばしそうでマジで怖い!


「私は。私は、康介さんがですね…本物の彼氏が、良いんです!」


「お前、酔ってるだろ。変なこと言ってるぞ?ほらベットまで行くから歩け…っ」


唇に柔らかい感触。目の前には小咲さんの顔。ほんのりと香るお酒の匂い。今、俺は人生初めて女子にキスされた瞬間だった。


「んっ、これで、分かってくれましたか…康介さん。しかも、私…Dカップは…あるんですから」


頬を真っ赤に染めた小咲さんは体を完ぺきに俺にくっ付けた状態だった。

え、え、え…本当に脳が思考停止して真っ白になった。今まで彼女なんて出来ないと思っていた俺がこんな可愛い女子とキスをしてしまった…しかも柔らかい感触がする。感触がすると言うより押さえつけられているような感覚だった。


「…ちょちょちょちょっと待ってくれ。小咲さん?」


「…」


小咲さんは俺に体を預けたまま寝てしまっていた。

理性が爆発寸前だった俺はとりあえず小咲さんをベットの上まで運んで寝かせた。


小咲さんの唇を見るたびにさっきの感触を思い出してしまう。こんな可愛い女子が俺に好意を寄せてくれていた…こんなことがあっていいのだろうか神様。


読んでいただきありがとうございます!前書きにもある通り今回が初めての短編小説です。

これを書いた理由は自分のダメな書き方などを皆さんに指摘していただきたいからです。

話のリズムや描写などで違和感やこうした方が良いよ!などがある場合は参考にさせていただきたいので感想での指摘よろしくお願いしますm(__)m

ダメだじでも大丈夫です!

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