記「サンゲキ」
夕依、ミコと出会ってから一週間ほど経った。学校はうまくいっている。夕依やミコが私をかわいがってくれる。
「ごめんね、この前の数学全然わからなかったの。話聞いてなくてさ…」
「あぁ、あれね。あれはちょっと夕依には難しいかもね」
「ごめんね、私ってやっぱり馬鹿なのかなぁ~…」
日々を過ごしているうちに少しづつわかってきた。夕依は勉強が苦手らしい。特に数学は苦手なんだと。趣味は可愛いもの集め。
それに比べてミコは物知り。勉強も得意。趣味はコンピュータ。よく話を聞くけど、なんのことか全然わからない。ドスとかベーシックとか…
でも最近夕依の調子がおかしい。よく早退して病院に行くようになるし、ずっと息苦しそうにしている。
でも何か触れてはいけない気がして、本人には話さなかった。しかしこのままでは何も変わらない。そんな気もして思い切って聞いてみた。
「ねぇ夕依。最近調子悪い…?」
「ゴメンネ、大丈夫…私は大丈夫…だよ」
明らかに大丈夫ではない。顔も火照って熱なのか?だとしたらえらく長引いている。私が夕依の調子が悪いと思い始めたのは先週あたりからだ。すき焼きパーティーのときから。
「ちょっと保健室に行こうか。私が担ぐよ」
私は無理矢理にでも夕依を保健室に連れて行った。
「ごめんね、ありがとう…でも本当に大丈夫なの…このままじゃあなたを…」
頑なに保健室へ行かない。でも夕依はこのままじゃ死んじゃう。なぜかそんな気がした。
私と夕依は保健室についた。保健室の先生はいなかった。おそらく職員室にいる。
「私、先生呼んでくるね!」
ドアを勢いよくあけた私の腕を掴んで夕依は言った。
「ここにいて。ここで私と一緒に…」
今まで夕依の発言は最初にごめんねがついていた。ごめんねと言わない夕依に少し必死さを感じ保健室にいることにした。
「はぅちゃんはベッドで寝てて。大好きだよ」
急に告白をされても。なんでかわからないけど私はベッドで横になることにした。夕依は先生の机から注射と小瓶を取り出して言った。
「これは麻酔薬よ。あなたを一秒たりとも傷つけたくないの…」
夕依は私の左腕に注射針を刺してきた。抵抗できなかった。夕依は泣いていた。
「全身がカユイの、目の前をずっとハエとかカが行き来していて。頭からウジ虫が出てきて…すべてがテキに見えるの…息ができないの…あなたを…コロシテシマイタイノ…」
私は耳を疑った。殺したい…?保健室から逃げようと思った。夕依は私を殺してしまう。そう思ったからだ。でも体が動かない。
麻酔が効いてきたらしい。それに眠くなってきた。
「ホントウに…ごめん…ゴメンナサイ…」
夕依はカッターの刃をカリカリと出し、私のお腹を切り始めた。痛みは感じない。もう何も感じない。
夕依の顔は勢いよく飛ぶ私の血と涙でクシャクシャになっていた。私は自分の臓物を初めてみた。自分を構成する一部なのに今まで一度も見たことがなかった。一度も…?
「これはノロイなの。私達鬼ヶ丘ムラのセンゾの…いつか全員ワタシみたいになる。ムラビト全員」
夕依はそう言って私の臓物を食べ始めた。意識が朦朧とし始めた。最後に夕依はカッターの刃を自分の腕にあてて言った。
「ありがとう。ごめんね…」
私に優しい言葉をかけた夕依は、その時までの狂気がなくなっていた。夕依は自分手首を切り始めた。
私は夕依が気を失って倒れるところまで見た。そこで私の記憶は途切れた。
零、終は基本短めです。
とある関係で章を構成し直しました。
第二章幕開けですよ(^^