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夢尽蔵のムラ  作者: ONEth Action
第一章 鬼ヶ丘村
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記「リンネ」

「はっ! うっ…! 痛い…! イタイイタイイタイイタイイタイ!」

頭が痛い。群発性頭痛。違う。私は殺されたんだ。あいつに。

ということはここは、三途の川か。三途の川で布団を敷いて寝ているのか。

でも天井があるし、そこには蛍光灯だってある。現実的に考えよう。

私は殺されたが、殺されていない。いや生き返ったのかもしれない。

「リナ…結構魘されてたけど大丈夫か?今日から学校だろ?」

私は父がなんのことを喋っているのかわからなかった。学校は昨日行ったはずだ。そして下校した。

その途中で殺されたんだ。まさか…!

私は自室の日めくりカレンダーに目をやった。「1989年二月十五日」どれだけ目を凝らしてもそうにしか見えない。

夢だったのだ。それも今まで生きてきて一番の悪い夢だ。

「大丈夫だよ、父さん。それより朝ごはんは出来てる?」

夢であるのなら落ち込む必要はない。私は昔から意図的に夢を見ない深い眠りが出来るので少し混乱していた。

それよりあの少女は誰だったのかそれが気になる。あいつは父さんが喋ってから不機嫌になっていった。

父さんは何を喋っていた?たしか引っ越してきたことについて喋っていた。

まぁ別に良い。「正夢にならなければ」

私は朝食を食べた。父は母が死んでから家事を勉強し始めた。私だって父さんの手伝いをしたいのだが、

不器用で何も出来ない。野菜炒めで炭を作ってしまうタイプなのだ。

「父さん引っ越しの片づけしておくから、リナは学校へ行ってきなさい」

「いや、私も手伝うよ。その間に学校で発表する自己紹介も考えておきたいし」

いつも父に頼ってばっかりなので力仕事ぐらいは手伝うことにした。別に学校をサボりたいってわけじゃないんだぞ。

片付けは順調に進み、昼食を食べてから学校に行くことにした。

学校は鬼ヶ丘第一高校。一年二年三年全員が同じクラスらしい。私は二年生。

「行ってきます」

私は大きな声で台所にいる父さんに聞こえるように言った。

でも父さんは返事をしてくれなかった。まあ良い。洗い物でガチャガチャしてて聞こえなかったのだろう。

私は速歩きで学校へ向かった。昼から学校へ言っていることをあまり村人に見られたくなかった。

十分程度で学校についた。学校では校長と思わ…いや、この人は見たことがある。たしか第一高校の校長だ。

デジャヴってやつなのか、それともどこかであったことがあるだけなのか。

「どうもこんにちは。如月リナです」

「どうも如月さん。お父さんはどちらです?」

「父は忙しくてこれておりません。申し訳ございません」

校長は少し困った顔をしていた。なにか保護者でないと行えない手続きがあるのだろうか?

「ご紹介遅れましたね。私はこの学校の校長です。新井忠伸アライタダノブと申します。担任のもとへ案内いたしますのでついてきてください」

私は校長の後ろを二メートルほど開け廊下を歩いていた。すぐそこに青山がいた。…ん?

私はこの先生の名前を知らないはずだ。何故か知ってる。この人の名前は青山美智代、私の担任になる人。

「ようこそリナさん、鬼ヶ丘第一高校へ。私は青山美智代です。今から教室へ行きますよ。校長先生もう帰ってもらって結構ですよ」

校長はしょんぼりしていた。冷酷な性格だったけど、自分は少しかっこいいとも思った。自分の理想の教師像というかなんというか。

私は青山の後ろを歩いて教室の前についた。青山は後ろを振り向き、少し笑みを浮かべて言った。

「リナさん。もし前の学校のことを聞かれても、宇雅高校の生徒だったと答えてください。それから引っ越してきたという事実を隠していてください。私はあなたの味方です」

…この言葉、聞いたことがある。思い出した。今日見た夢だ。少し夢と違うところもあるけど、正夢だ。

「わかりました。青山先生」

「あら、理解が早くて助かります。それと私のことは気軽にみっちゃんとお呼びください。生徒からもそう呼ばれていますので」

意外だ、生徒からそんな呼び方をされているなんて。

もしかしてこの人、生徒に対してはとことん優しいタイプなのか?。今までの冷酷さが急になくなって顔が明るくなっていた。

私が夢で感じた青山への好意の理由はもしかしたらこれかもしれない。

青山は先に教室に入り生徒へなにか話し始めた。青山が締めた扉は少し空いていたので丸聞こえだった。

「今日から一人転校生が来られますよ。ご存知と思いますが宇雅高校からです。それでは、入ってきていいですよ~」

私は青山に呼ばれたので開けにくいドアを両手で開けて教室へ入った。教壇へ立ち自己紹介をした。

「はっ…はぅ、はじめまして!如月リナです!こっ、これからよろしくおねがいします!」

夢でも自己紹介していたのに、やっぱり失敗してしまった。これだけは夢であって欲しいと思った。

午後の授業はやっぱりクラスメートの紹介だった。気づけば下校の時間になっていた。


下校の時間。えらく怖かった。またあいつに殺されるのではないか。今まで夢に似たようなことが起こっている。

私はこのまま殺されてしまうのだろうか。

「ごめんねぇ、リ~ナちゃん!」

私はドキッとした。振り向くことさえ戸惑ったが、声に感情がこもっていた。私の後ろにいる人は。

あいつじゃない。

私は振り向いた。

「ごめんね…いきなり話しかけちゃって。びっくりしちゃった?」

やっぱり夢の中で私を殺したあいつじゃない。本当にホッとした。

そこにいたのは青髪で長髪。そして片手で学生バッグを持つ少女だった。

「あなた…は誰?」

「ごめんね、まだ名前を言ってなかったね。」

「ごめんね、私の名前は院瀬見夕依イセミユイだよ。よろしくね!」

すごく語頭が気になるけど、萌キャラって感じがする。すごく可愛い。あいつも可愛かったけど、こっちは子供のかわいさって感じがする。

「よろしくね。うん、よろしく…」

例のことがあって少し疑心暗鬼になってる気がする。夕依からは殺気が全然感じられないはずなのに。

「ごめんね、リナちゃんさ、自己紹介の時<はぅ>って言ってたよね」


-- 「はっ…はぅ、はじめまして!如月リナです!こっ、これからよろしくおねがいします!」 --


確かに言ってる。でも意図的に発したわけではないが。

「ごめんね、だから今日からあなたのことをはぅちゃんってよんでもいい?すっごく可愛かったから…」

この人、すすすすごく可愛い///。断れるはずがない。

「もちろん。私もあなたのこと、夕依ちゃんって呼ぶね」

「ごめんね、ありがとう…」

本当に良かった。友だちができて。それよりも正夢にならなくて。

夢なんて実際に起こるわけがないんだ。

正夢なんてあるはずがないんだ…

そう思っていた

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