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夢尽蔵のムラ  作者: ONEth Action
第三話 桐野江一家
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症「ムジンゾウ - 弐」

13分後。テストは終わった。

抜き打ちじゃなければと苦痛の表情を浮かべるものもいれば、勉強していてよかったと悦の表情を浮かべるものもいる。

さて、夕依はどうだろうか。答えはもちろん苦痛の表情だ。

「ごめん、はぅちゃん……宝探し部……だめかも」

夕依は今にも泣きそうな顔で言ってきた。彼女の顔を見ると本当に悔しいんだなって。すごくわかる。

生徒数が少ないので結果発表はすぐにある。青山が赤ペンで丸をつけるシュッシュッという音。

夕依は祈るように手を合わせ下を向いている。

「結果発表をします。如月リナさん、82点。」

とりあえず私は安心した。問題は夕依。私は固唾を飲んだ。

「院瀬見夕依さん……58点……」

夕依はそのまま後ろに倒れそうになっていた。部活を作ってくれるためにはふたりとも70点以上が必要。

つまり宝探し部は……だめになってしまった。

夕依はダムが決壊したかのように泣き出した。私の胸元に顔をうずくめてきた。

すると最初から最後まで見透かしていたかのように青山が言った。

「私、別にふたりとも70点以上なんて言ってませんよ。二人合わせて70点以上ですよ(笑)」

緊張から一気に開放されたからだろう。夕依は膝から崩れ落ちた。失神するかのように。

いや、気を失っている。夕依は急いで職員室へ運ばれた。

「少し悪ふざけが過ぎましたね……実はふたり0点をとっても部活は作るつもりだったんですよ」

たしかに今思えば青山の車。宝探し部に必要そうな用具が乗っていた。双眼鏡とかルーペとか。

青山が優しいことは再確認できた。私は職員室の夕依のもとへ行った。

夕依は気を失ってから3分ほど経ってすぐに目覚めた。目覚めた夕依は少しあたりを見回してから満面の笑みを浮かべ、

「やった!宝探し部は本当に作れたんだ!」

と言った。夕依はとてもうれしそうだった。もうずっと何年も前から彼女を見てきたけど、一番の笑顔だよ。

もう「W154834」は何回目よ。100年は超えた気がするよ。「W120584」は悲惨な最後だったよ。この世界なら……よ

莉奈は負けないよ。

気づくと夕依が帰りの支度をしていた。

「はぅちゃん確かうちに借りたい本があるって言ってたよね。帰りにうちに寄ってく?」

そういえば。たしか「無尽蔵にある夢のカケラ」だっけか。それを借りにいきたいんだった。

「わかった。そうするよ」

「あっ、そういえばお父さんがはぅちゃんに言いたいことがあるってさ。なんだろうね」

夕依の父が私に?なにか話すことがあっただろうか。

私はそのことが妙に気になったので速歩きで帰ることにした。

「まっ、待ってよ~おいてかないで~」

夕依はキリキリおいていく私を大声で呼んでいた。なんだろうこの感じ。すごく頭が痛い。思い出したくない。

お母さんはいい人だったって。お母さんは悪いお母さんだったよ。私にお人形を作ってくれた……。そのお人形はお母さんが壊したんだよ?

「……大丈夫?すごく顔色悪いよ?」

「大丈夫、速歩きですこし疲れただけだ……よ」

私は急いで夕依の家にむかった。夕依はずっと心配してくれていた。

*解離性同一性障害

通常幼少期に精神的ストレスを受けたことにより発生する、いわゆる多重人格。

自分がやっていないことを思い出したり、やっていることを思い出せなかったりする。

憑依型は第三者にも明らかにわかるように発生する。

普段とは違う行動言動が見られ、霊的な何かが乗り移られたようになる。

非憑依型は第三者には発見されにくく、まるで自分が二人いるような感じとなる。

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