症「ユキ」
1989年二月十日。
なんか今日は冴えている気がする。6:30きっかりに起きて、6:31分に時計を見る。
6:35分に水をのむもうとするが机の上にこぼしてしまう。6:40分に一通りこぼれた水のかたずけが終わる。
すべてわかるというか、すべてわかってしまう。私が急に才能に目覚めたという感じではない気がする。
どちらかというとこの朝を何度も経験しているかのような。そんな感じだ。
私は身支度を済ませ、学校へと走る。私は別の学校から転校してきた。
で、今日が初めて新しい学校に行くわけ。
でもなぜか予想がつく。担任の先生は青山って名前。校長は新井。初めてできる友達は院瀬見夕依。
ま、全部外れてると思うけど。そんな都合よく当たったら人生苦労しないよね。
私は驚愕した。予想通りすべてが的中している。担任の先生は青山っ。校長は新井。初めてできる友達は院瀬見夕依。すべてが当たっている。
正直怖かった。急に能力に目覚めて、ライトノベル的展開になって、魔王倒すことになって……
この能力があれば…ぐへへ。なんて考えていると夕依が話しかけてきた。
「はぅちゃん!あれが松山神社だよ!」
夕依は昔どこかで会った気がするけど、その時と性格が違う。いつもごめんねって言ってきてたような気もする。
と、いうことはおいておいて、今日は夕依が松山神社という神社を紹介してくれるらしい。
別に神社なんて紹介してもらっても……
「この神社はね、雨の神様を祭ってるの。すごくいい神様なんだよ!」
夕依はやけにこの神社に詳しい。神社巡りの趣味でもあるのかな。
私が意外に感じていると神社の奥から1人の巫女服を着た少女が歩いてきた。
「紹介するね。私の友達の桐野江雪だよ!」
夕依の手短な紹介の後にその少女は口を開いた。
「初めまして、桐野江と申します。この神社で巫女をやらせていただいております」
ぱっつんで黒髪、日本人形顔の少女はとても美人だった。何歳なのだろうか。とりあえず私より年下に見える。
というか巫女服が超絶にあっている。
「嫁にもらいたい」
ついつい本音が出てしまった。よくあることだ。私は口が緩いのだ。桐野江さんは急に赤面になって、口をポカンと開けていた。
「そそそっ、そんな///冗談言わないでくださいよぉ///ばかぁ……」
鼻血を出して倒れたい欲を我慢して、ずっと恥ずかしがりながらくねくねしている桐野江さんを横目に、
私は夕依に問いかけてみた。
「桐野江さんって何者なんだ?学校じゃ見かけないよな?」
「桐野江さんは中学生だよ。だから学校でも見かけない。なんかよく悪魔がどうのこうの言うオカルトマニアだよ。」
意外だ。意外過ぎる。こんな見た目してオカルトマニアって……
とその時、後ろからフワッとした感触がした。後ろを振り向いても誰もいないし、誰かがいた形跡もない。
前を振り返ろうとした、すると目の前に逆さづりの顔があった。
「見たなぁ~~~」
「ギャァァァァアァァァ!」
私は大声をあげ逃げようとしたが、すぐに優しい声で
「あっ、驚かせてしまって申し訳ないのです」
と聞き覚えがある声が聞こえてきた。どこかで聞いたことがあるけど、どこかはわからない。
後ろを振り返ると美人な女性が立っていた。当たり前かのように巫女服を着ている。
「はじめましてなのです、はぅさん。夕依から話は聞いているのです」
夕依と知り合らしい。私達よりはるかに大人の見た目をしている。夕依は人付き合いが上手いなと思った。
「それより私が見えるなんて変わっているのです。私はすごく霊感がある人にしか見えないはずなのです」
私は霊的な話をほぼ信じない。なぜなら世の中のものはすべて科学で証明できると思っているからだ。
「なんで霊感がある人にしか見えないのですか?」
私は興味本位で聞いてみた。どうせ帰ってくるのは、冗談なのです。そんな言葉だからだ。
「私、ここの神様なのです。雨宮というのです。よろしくなのです」
あっさり言っちゃたよこの人。いい大人なのに中二病こじらせてるのか。
「むぅ……嘘だと思ってるのです。ホントなのです。試しに夕依の家に行ってみるのです」
と言われ強引に手を引っ張られ夕依の家に行くこととなった。