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夢尽蔵のムラ  作者: ONEth Action
第二話 宝探し
12/35

記「クリカエシ」

「今日は新しいお友達が来ていますよ!」

誰だろうか。でもなぜか「むぅむぅ」ってずっと言ってそうな人が来る気がする。

「入ってきていいですよ、雨宮夕依さん!」

雨宮夕依…院瀬見夕依と同じ名前だ。一度も聞いたことはないはず。それなのに聞き覚えがある。

「むぅ、どうも…宇雅高校から来ました。雨宮夕依なのです…よろしくなのです!」

かわいっ!なんか最近私の周りには個性的な人ばかり集まる。その一貫した特徴。かわいい。

夕依…区別しにくいのでむぅちゃんと呼ぼう。むぅちゃんは指定された席にちょこんと座り、

みんなからの視線を浴びていた。

一限目の授業はむぅちゃんのことであんまり頭に入ってこなかった。


休み時間。私はむぅちゃんに聞いてみた。

「むぅちゃんってさどこから引っ越してきたの?」

「鬼ヶ丘からなのです。当たり前なのです。冗談きついのです」

そっか。もし鬼ヶ丘以外から来ても普通鬼ヶ丘って答えるよな。殺されるから。

「やぁやぁ。私、新井御代アライミヨ。みんなからはヨミって呼ばれてるよ。むぅちゃんよろしくね」

「むぅ?!私のことなのですか?」

「自己紹介の時むぅって言ってたからね」

もう恒例になっていた。私ははぅ、雨宮はむぅ。ややこしくなってきた。混乱していると夕依が話しかけてきた。

「ごめんね、全然話は変わるけど。これ見てくれないかな?…かな?」

夕依が見せてきたのはちょっと変わったビラだった。

* 来たれ宝探し部! 秘密や宝を探す部活です。入部は院瀬見まで! *

ほぅ。部員を集めているのか。私は夕依に恩があったので迷いなく入ろうと思う。

「宝探し部?なんだこれ、すげぇ楽しそうじゃん!」

前から思っていたがヨミはすごく無邪気である。精神年齢が低いって言うと怒られそうだけど。

「宝探し部…楽しそうなのです!」

「へへっ、ごめんね、ありがとう!はぅちゃんはどうする?」

「もちろん、私は入部させてもらうよ」

「ごめんね…!ありがとうはぅちゃん…!」

夕依の喜ぶ顔を見て、すごく嬉しくなった。でも鬼ヶ丘の秘密って何があるんだろうか。

そんなことを考えていたらむぅちゃんが私の腕を掴んで、

「ちょっとこっちに来てもらっていいかな? むぅ…」

って言ってきた。

どこに連れて行かれるのかな。トイレ?運動場?答えは簡単。職員室だ。第一高校の教師は二人。

校長と青山だけだ。ふたりとも二十人の生徒をまとめるのに忙しく、ほとんど職員室にはいない。

だから職員室にはこういう噂がある「職員室で告白すると、絶対に結ばれる」

どうしよう。むぅちゃんに告白されたら。頭から湯気が出て干からびちゃうよ。

馬鹿げたことを考えていたら、むぅちゃんが喋り始めた。

「むぅ、今から言うことは全部事実なのです。だから馬鹿にしないでほしいのです」

むぅちゃんに言われたら何でも信じちゃうよ。日本は宇宙人が支配してるとか、私は神様ですとか。

「あなたが教室にいたら新井御代は狂って、教室にいる全員が死んでいたのです」

「へぇ、私がいたら…ねぇ」

なんでだろう。私が原因になることってあったかなぁ。

「ヨミさんははぅさんの頭を噛む癖があるのです」

えっ、なんでそれを知っているのか。転校してきたばかりなのに。

「なんで…それをしってるの?」

「私はこの世界を千年ほど繰り返してきたのです。おそらくこれで124365回目なのです」

「……むぅちゃんは…何者なの?」

「神なのです。松山神社の」

驚くべきことが多い。神が高校生活を送っている。そういうライトノベル小説がありそうだ。そう思った。

「で、なんで頭を噛む癖がみんなの死につながるのかなぁ…?」

「この土地の人間。つまり鬼ヶ丘の村人は全員OIDに感染してるのです」

OID…たしか鬼を保護するために出来た架空の風土病、カバーストーリーだ。鬼ヶ丘感染症だっけ?

「あなたが思っているのは<架空の鬼ヶ丘感染症>なのです。鬼ヶ丘感染症は本当にある病気なのです」

う~む。にわかに信じがたいがむぅちゃんがそういうのであればそうなのだろう。

「ほほう、それで?」

「OIDは村人に潜伏しているのです。しかし<鬼>のDNAを摂取したとき。OIDは発症するのです」

「むぅ…発症すれば最後。発症者は即時発症型OID通称<IOTOID>を撒き散らすのです…」

SFみたいな話だ。DNAが発症原因であれば…そういうことか!

「私の頭を噛んだ時。運悪くヨミが私の髪の毛をたべたら発症すると…」

「理解が早くてありがたいのです。そうなった世界が今までに103475回。IOTOIDで村が滅びたのはそのうち103475回。つまり早いこと言うと百パーセントなのです…」

私が話をまとめよう。

むぅちゃんによると、鬼ヶ丘感染症(OID)は架空の病気なんかじゃなく、本当にある病気なのだと。それは村人ほぼ全員に感染しているが私生活には影響がないらしい。ただし発症すると話は別。

鬼ヶ丘の外から来た人間(動物は別)のDNAを体内に取り込んだ時、発症するらしい。症状は「全身の痒み。疑心暗鬼。脳の異常。幻覚。幻聴。殺人欲(特に発症原因に対する)。」らしい。

発症すると即時発症型鬼ヶ丘感染症(IOTOID)のウィルスを体中の穴という穴から撒き散らすらしい。

そうなると核分裂連鎖反応のように村人全員が発症する。

また発症者は発症原因の臓物を食べると治ると思い込むらしい。村を閉鎖したのは戦争から村人を逃せるためなんかじゃなく、OIDの感染を広げないため。

これが私がむぅちゃんから聞いた全てだ。

でもなぜそれを私に?聞いてみた。

「話はすべて信じる。信じるよ。だけどなんでそれを私に?」

「…申し訳ないのです。あなたの力を貸してほしいからのです。実はそのために…幾つか事実を捻じ曲げてしまったのです…」

話によると、私の父親は実際500万の借金なんてしていないらしい。でもむぅちゃんの力で父は堀口組から500万円の借金をしたと思い込んだらしい。そのありもしない借金から逃げるために、如月親子は鬼ヶ丘へ来る。そして今に至るらしい。

「もう一つ聞きたいことが。その…えっと…さっきこの世界を千年ほど繰り返してきた…って…」

「そうなのです。それはあなたが死んだのをトリガーにループするのです…」

私が死ぬ?!私は死んだことなんてないぞ。だってその証拠に…いま生きてるじゃないか…

「はぅちゃんが死んだ時、時が戻るのです。戻る時間はバラバラですが、長くて十年前なんかもありましたのです」

私は少し疑問に思った。さっき事実を捻じ曲げたって言ったけど、それを使って村が滅ぶ事実を捻じ曲げればと思った。

しかしむぅちゃんはそれを見透かしたかのように言った。

「事実を捻じ曲げるには時間と寿命。そして名前の一部が必要なのです。最後に力を使ったのが数ヶ月前。まだ時間が足りないのです。でものこのこしてると気づけば村は滅びる。だからあなたの力が必要なのです!」

この村に来てから様々な驚くべき事実を知った。ときには私を保護するため。ときには私の力がほしい。

でも実は怖かったりはしなかった。今まで退屈な人生を送ってきた私だ。どうせ残りの人生もつまらないものだと思っていた。だけど、いま楽しい。もちろんSF的展開に、というのもあるが、私には心強い仲間がいる。

それが一番嬉しいし、仲間と遊ぶのが楽しかった。

「わかった、むぅちゃん。私むぅちゃんに力を貸すよ」

「ありがとうなのです!ありがとうなのです!もうみんなが死ぬのは見たくないのです!」

話しているうちに時間が過ぎ、号令のチャイムが鳴った。

*OID : 鬼ヶ丘感染症の略称「Onigaoka infectious disease」

*IOTOID : 即時発症型鬼ヶ丘感染症の略称「Immediate onset type OID」

*雨宮夕依 : アメミヤ様。松山神社の神様。院瀬見夕依の友達。高校二年生

*新井御代 : 校長の孫。元気ハツラツ、無邪気な高校三年生

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