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3話 初変身


「緋空、今から‘あれ’と戦ってもらうぞ」


「へっ?」


 え?


 ま、まさかじゃないよな?


 俺にあの化け物と戦えって言ってるわけないよな?


「無理無理無理無理無理無理!」


 死んじゃう!死ぬって!!


 やっぱりこいつ、俺を殺すつもりで連れてきたんだ!


「生身で戦えとは言わん。策は用意してある。そのためにお前が必要じゃったのじゃ。」


「俺が⁉︎」


 んなこと言ったって、俺にはなんの心当たりもないぞ!


「わしがお前に言ったこと、覚えておるか?」


 俺は頭を抱える。


 人から聞いたこといちいち覚えてるわけないだろ!

 こんな意味不明なの状況なのもこの博士のせいだし、そもそもなんでこんなことになってんだよ!

 俺が‘あの質問’に答えちゃったのがいけなかったのか?


 あっ!


 俺は頭をガバッと振り上げて博士を見る。



“美少女になって戦いたいと思ったことはあるかね?”



 思い出した、思い出したけど…


「まさか…」


「そのまさかじゃな」


 そういうと博士は手の平サイズの赤い宝石を取り出した。


 月明かりを受けてピンク色の光を放っている。


「上を脱げ」


 ⁉︎


「肌に直接触れさせる必要がある。早く脱ぐのじゃ」


「わ、わかりました」


 唐突にに急かされるもんだから流されてしまった。


 俺は急いでワイシャツのボタンを全部外す。


 たまたまブレザーも下着も着ていなかったからそれだけで済んだ。


 博士は宝石を俺に渡してくる。


「これはジュエルといってな。このわしにも作れなかったモノでな、おそらくこの世界で唯一のものじゃ」


 え⁉︎


 それってめっちゃ大事なものなのでは!!?


「じゃが、使わなければ意味がない。」


 俺はゆっくりと頷く。


 その理論に関しては完全に同意するが、俺である必要なくなくか?


「その平たい面を胸に当るのじゃ。それだけでお前は戦えるようになる。」


 もはや俺が戦うのは確定路線なのだろうか。


 俺はジュエルを見つめる。



 …怖い。


 目の前に行こうものなら絶対に殺されてしまう。


 そんな恐怖でジュエルを持つ手が震える。


「なにを怖気付いておる。…あ、そうじゃ」


「なんです?」


「あれ、西新宿大規模テロの犯人の同類じゃぞ」




 ピタリと震えが止まった。


 恐怖心なんかよりも強い気持ちが心の中に溢れかえる。


 なにが俺である必要なくないか?だ。


 俺じゃなくちゃダメに決まってるだろうが。



「博士」


 俺が博士に視線を移すと博士は笑っていた。


 それも今までで一番楽しそうに。


「ようやくやる気になったか」


「はい」


 俺はジュエルを胸に当てる。


 ひんやりとした感触が胸に広がり、何が侵入してくるような不思議な感覚がする。


 それはすぐに身体中に広がり、俺の身体はピンクの光に包まれれ…


 服がシュッと消えた。


 ん?え⁉︎あちょ!


 俺は慌てて身体を隠そうとしてジュエルから手を離してしまったが、ジュエルは胸にくっついていた。


 もう手を離してもいいらしい。


 一瞬慌てたものの、周りには博士しかいないので俺は普通に立つことにした。


 光に包まれた俺の身体は縮小していき、視点が下がる。


 縮小はすぐに止まり、今度はシュッと服が現れて、身体を纏っていた光はピンク色の粒子となって消えた。


 この間わずか20秒である。



 俺は自分の姿を確認してみる。


 全身フリッフリのいわゆる魔法少女って感じだ。


 これは後で分かったことだが、栗色の髪の毛に緑色の瞳、身長は140センチくらいだ。



 そんなことよりも、だ。


 ない。


 男として大事なものが付いてない!



「ふっ、無事成功したようじゃの。こいつも受け取れ」


 そう言うと博士はどこにしまっていたのか、かなりでかい剣を渡してきた。



 いやデカいな⁉︎


 今の俺よりデカいぞこれ!



 だけどすごく軽い!


 めっちゃ簡単に持てる。


 そしてやばい、力が湧き出てくる。


 早くあいつを倒したくてウズウズしてる。


「博士!」


「行ってもよいがお前が男だとはバレないようにするのじゃ。面倒ごとが増える」


 なるほど、女の子として振る舞えってことね。


「分かりましたわ、博士様!」


 博士はすごーく嫌そうな顔をした。


 えぇ?


「要練習、じゃの…」


 そんなに酷かっただろうか?


「もう行け!俺とか言わないだけで十分じゃよ」


 そんなに酷いか⁉︎


 納得いかねぇ…が、戦えるのならそれでいい!


「それじゃあ、行ってきますよ!」


 博士は頷いて懐から無線機を取り出した。


『八号、下がるのじゃ』


 俺は化け物めがけて走り出す!



 八号と呼ばれた女性はピクリと反応し、化け物から距離をおいた。


 急速に近づく俺と、その後ろにいる博士を見て博士の方に行った。



 だが俺には関係ない。


 化け物は俺を見て脅威と判断したのか爪を向けてくる。


 あんなのをまともに喰らったらひとたまりもないだろう。


 だが、今の俺には絶対に負けないという自信がある!


 流れていく木々がゆっくりに見える。


 今!


 思いっきり地面を蹴り上げ、空高く跳ぶ。

 そのまま空中で一回転し、勢いそのまま斬りつける!


「とりゃああぁぁぁぁああああ!!!」


 化け物は咄嗟に振り上げていた鉤爪をクロスさせ、防御する。

 化け物の反射神経と高い判断力が為せた行動だ。


 しかし、俺の大剣は敵のメインウェポンであろう鉤爪をバターのように切り裂いた!


「グルァ⁉︎」


 化け物が目を見開き、顔が驚愕の色に染まる。


 俺はそのまま鎖骨のあたりからまっすぐ下に斬り落とす!


 つもりが化け物が強烈なスピードで後退したせいで胸あたりまでしか斬れなかった。


「フーっ、フーっ!」


 敵は肩で息をし、傷口からは紫の光の粒子が噴き出ている。


 これはもう勝ち確だろう。


 そう思って少し見ていたら傷口に光が集まり、みるみるうちに傷が再生していくではないか!

 しかも鉤爪も元通りになっている。


「なっ!再生するのか!」


 けっこうな重症だったと思うんだけど⁉︎

 これどうやったら倒せるんだろう?


 そんなことを考えてたら化け物が距離を詰めて鉤爪を振り下ろしてきた。


「あぶなっ!」


 間一髪で剣を振り上げ鉤爪を抑えたが、今度は逆の手だ!


「ガァァ!!」


 剣の角度を変えてなんとか防いだものの力が拮抗する。


「ぬぐぐぐぐ」


 侑斗は下に位置してるからだいぶ不利だが、逆にいえばその不利な状況でも化け物の圧倒的膂力を押しのけられているのだ。


 外から見たら異常な光景だろう。



 それにしてもこんなやつどう倒せば…



『困っておるようじゃの?』


 何か聞こえてきた。


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