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プロローグ

 西暦2030年8月9日、西新宿。


 目が覚めると車の中にいた。


「それにしてももう8歳か。早いもんだなぁ」


 父さんの声だ。


「あら、起きたわね。おはよう」


 母さんの声だ。


「ん、うぅん…」


 車の中で寝ちゃったみたいでまだ眠たい。もっと寝ていたい。


「じゃあ誕生日プレゼント、買いに行こっか!」


 そうだった!今日は壁面ライバーズの変身セットを買ってもらえる日だ!

 あんなにも眠かったのが嘘みたいに目がスゥっと覚めた。


 「うん!」



 買い物が終わって今は地下の駐車場を歩いているところだ。


 僕は今、超うれしい。

 だって美味しいご飯も食べれたし、父さんと母さんのお買い物はちょっと暇だったけど楽しかった。

 そして何より僕の両手には壁面ライバーサイボーグのベルトとビームサーベルガンが入った箱があるんだから!


「早くあっけたいなー!」


「家に帰ってからね」


「分かってるよ!」


 息子の嬉しそうな顔を見た母さんはこれまた嬉しそうな顔で僕を撫でた。


 「その黒くてサラサラな髪の毛を母さんにも分けて欲しいわ」


 「あげない!」


 このおもちゃは誰にも渡すわけにはいかない!


 どういうわけか勘違いしている息子の様子に両親は呆れつつも幸せな表情を浮かべている。


 ドォォォォォォォン!!


 唐突に爆音が鳴り響き、立っていられないほどに地面が激しく揺れた。

 電灯は明滅していたがすぐに音を立てて落下していって周辺が暗闇に包まれる。

 パラパラとコンクリートの破片が降ってくる音がする。


 「地震⁉︎」


 わけもわからず、その場でうずくまることしかできなかった。


 揺れはすぐに収まった。

 そしてビルの非常灯が光り、視界がかろうじて確保された。


「車で逃げましょう!」


「戻った方が安全じゃないか?」


 意見が割れたが答えを決める必要はすぐになくなった。


 目の前の天井に亀裂が走り、轟音と砂煙を伴って天井が崩壊したからだ。


 僕たちは瓦礫の中心に“何か”が立っているのに気がついた。


 2.5メートルはありそうな巨躯、鋭く伸びた長い爪、全身に生えてる毛、そして何より猫をどこまでも凶悪にしたかのような顔が“それ”が人間でないことを物語っていた。


 僕が恐怖で腰を抜かして倒れた瞬間、怪物が腕を大きく横に振りかぶり、薙いだ。


 直後、背後で鳴り響く轟音。


 そんな耳をつんざくような音さえ掻き消す音が、ドサッという人が倒れる音が僕の耳に鳴り響いた。


 全てが静かに聞こえた。


 怪物が何か喋っている。


 なにも聞き取れない。


 でも怪物は焦りと驚きを隠せない様子で降りた穴から出て行った。


 後ろに付いていた手を生温い液体が覆う。


 僕は後ろを振り向いてしまった。


 ついさっきまで僕を愛してくれていた両親は



 胸から上が無くなっていた。



「っあああぁぁぁぁぁぁーーー!!!!!」



 意識がシャットアウトされ、気を失う。




 壁面ライバーズの箱は永遠に開くことはなかった。

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