2:僕のパラレルワールド
過去を変えても、今いる未来は変わらない。
たとえパラレルワールドだとしても、僕は未来の君を笑顔にする。
僕とセツナさんが出会って、次の日。僕はセツナさんとの待ち合わせまで、準備をすることにした。リュックには未来人と怪しまれない程度の道具を入れた。防寒具と2日分の着替え、ブランケット。そしてあの本。ポケットには小型ナイフを忍ばせておいた。どれも完璧だ。僕はまだ3時間程あることを確認して、少し寝ることにした。
「おい、起きろ。おい…。」
荒々しい声に僕は目を覚ました。するとそこには、豪華な服や豪華なアクセサリーを身にまとった男がいた。
「おい、起きたか。ったく、お前は35にもなって寝坊とは、王を継ぐものとして恥ずかしくはないのか?」
は?王?僕は何をしているんだ?呆然としている僕に、ため息をつき、
「まあ、いい。それより今日は強化訓練だぞ。副隊長だからといって気を抜くことは許さないからな。早く準備して行ってこい!」
そう言って男は部屋を出ていった。僕は訳が分からず混乱してたが、とにかく今の状況に合わせて、置いてある服を着ることにした。戦闘服?鎧のような服に違和感を覚えつつ、男が言っていた強化訓練に行くことにした。もちろん場所なんて分かるはずもないので、廊下にいるメイドに聞くことにした。
「すみません。強化訓練の場所ってどこですか。」
「あら、剣斗さん。おはようございます。強化訓練の場所ですか?冗談はやめてくださいよぉ。ここから少し北に進んだ場所に決まってるじゃないですかぁ。」
「え、僕は、阿久斗ですけど。天命阿久斗。」
「もう、冗談やめてくださいよ。何ですか、その変な名前。あなたは、どっからどう見ても剣斗さんじゃないですか。」
「あ、うん。そうだった。ありがとう。」
メイドの女の子は笑いながら用事があると言ってどこかへ行ってしまった。もう何が何だか…。でもとにかく強化訓練に行かなきゃいけないことは分かった。僕はさっき教えて貰った場所に向かった。
「やぁぁぁぁ!はっ!やぁぁぁぁ…あ?あ、剣斗さん、どこに行ってたんですか!もう始まってます
よ。」
近くにいた男が動きを止めて男が話しかけてきた。そこでは、数百人の男たちが木刀を持って戦っている。
「え、何やってんの?」
「ちょっと、剣斗さん、何言ってんすか!強化訓練の剣習ですよ。剣習得訓練。頭でも打ったんですか?」
「そうか、そうだったな。で、何をする?」
「そうですね。それじゃあ…今日こそ俺と一対一の勝負、お願いしますよ!」
「それはやめとけよ。ヤバいよ。」
声をそろえて止めようとする他の男たちを無視して、男は僕に木刀を渡した。
「いや、ちょっ…」
断ろうとした僕に、男は急に真面目になりながら木刀を構えた。
「いきますよ!」
そして男は僕に向かって剣を振りあげた。
「チリリリリリ」
寝る前にかけといた目覚まし時計で起きた。何だったんだ今のは?しかし、よく寝た。なんだか恐ろしいくらい鮮明な夢だったような。そうして、余韻にひたっていると、いつの間にかセツナさんとの待ち合わせ時間になっていた。僕は慌てて髪を整えて家を飛び出した。この夢がその後僕にどれだけの影響があるかは僕はまだ知らない。
少し遅れて公園に着くとセツナさんは昨日と似た、全身黒の服装で待っていた。
「すみません、遅れてしまって。」
僕は、セツナさんに嫌われてしまうか心配になりながら謝った。
「いいのよ。この時代にいるのは最後なんだし、心の準備も大切だわ。それより、君は今から転生するにあたって行かなきゃいけないところがあるの。過去に転移するのはタイムスリップと同じで転移する前の場所と同じ場所に移されるの。この前私が君に転移してからやってほしいことをいったのは覚えてる?」
「覚えてますよ。セツナさんとセツナさんのお仲間を探すってやつですよね。」
「そうなんだけど、あの時私たちがどこで何をしていたかなんて覚えてないし、適当に場所を選んだら地形が変わって海に転移てしまうとも限らない。だから、私が闇魔1000年からずっと知っている場所に来てほしいの。」
「もちろん、行きますよ。」
僕は当たり前というようにこたえた。そしてセツナさんに案内されるがままについていった。
「ここよ。」
そこは僕の家の近くにある、小さな裏山だった。
「え、なんでここなんですか?」
「ここはね、私達悪魔の本拠地あったところなの。すごいわよね。本拠地こそ消えてしまっていても、山と自然は残っていたわ。こんな住宅地の中でもの裏山は崩れなかった。これも奇跡ね。」
とは言いっても、山さえ崩れそうになるとは、どれだけ人間は強かったのだろうか。僕はまたセツナさんのあとについて山を登りだした。山の中腹ら辺でセツナさんは足を止めた。
「ここら辺でいいわね。転移した後はもう本拠地は無くなっているから悪魔たちに襲われたりはしないわ。」
セツナさんはそう注意しながら、魔法陣を書き出した。
「この魔法陣はね、君が持ってるあの本に書かれている、唯一の転移方法なの。今後もあの本は君にとって絶対に役に立つ。転移後に困ったら、読んでみて。…さあかけたわ。君、この魔法陣の上立って。」
とうとう来たのか。僕は楽しみの感情と、自分がセツナさんの期待に応えられるかという不安で落ち着けずにいた。すると、セツナさんは昨日のように僕の手を握り、
「君が心配することは無いんだよ。なぜなら、あの本は君を選んだんだよ。そして私も君を信じた。最後にこれだけ君に伝える。もし向こうでみんなに会って目的を果たせたら、向こうの私に聞いて。
『悪の守護神 閻魔楼』のことを。」
「え、何のこと…」
僕がそう言いかけるとセツナさんは話をさえぎるようにして、僕を魔法陣の中へ入れた。
「ふぅ、我が魂に宿る魔の力よ。この者を過去に転移させるべく、転移魔法を展開せよ!さあ、今度こそいてらっしゃい!天命阿久斗君!」
セツナさんは魔法を唱えた。すると僕の周りが魔法陣の光に包まれ、足が消えだした。本当に今から転移するんだ。最後に僕はセツナさんに大きく手を振った。ん?そういえば、僕、セツナさんに名前言ったっけ?そうか、セツナさんは知っていたんだ。僕が何かの力になると。セツナさんはこの長い間、ずっと僕を信じて待っていたのか。なぜか、僕は涙が溢れた。
「ありがとう、セツナさん!ずっと信じてくれて。僕、絶対、成功させるよ!信じてて!」
そして、セツナさんは僕に精一杯の笑顔と涙を見せた。
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そろそろ、キャラクターを増やしたいな。