2話:雇いませんか?
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2話:雇いませんか?
「なにをしている?!早くあいつを討て!」
「「「ハッ!」」」
ウォォォォ!
コザ騎士爵が率いているなかで3人がオレに向かって斬りかかってきた。
素人の動きだ。まぁ騎士爵が率いてるのは、農民兵だからだろう。
こっちは武器を持っていないが、まぁなんとかなるか・・・
「おらぁぁぁ!」
「シネェェェ!」
「この雑魚が!」
1人目が上段斬りをしてきた。それを半身で避け、相手の胸に掌底を当て込み、顔が下がったところを下から顎を打つ。
首から変な音が聞こえた。恐らく骨が折れたのだろう。
2人目は剣を横に振ってきた。体勢を低くして避ける。一人目が落とした剣を拾い、下から斜めに斬り上げる。2人目も沈む。
3人目は槍で突いてくる。突いてくると言っても、突きの体制で向かってくるだけだ。槍の特性を理解していない動きだ。
そのまま避け懐に入り、斬りつけた。
この程度の連中ならどうにかなりそうだ。
オレは2人目が使っていた剣と、3人目が使っていた槍も持つ。
高城流は使える武器はなんでも使う武術だからな。
2本の剣を腰に下げ、槍を構える。
「ちょ・・・ちょっと武が立つからといって、この人数差で何ができる?構わん、全員で掛かれ!」
うぉぉぉぉ!
オレに群がってくる敵。といっても、その足並みはバラバラ。これなら1対100ではなく1対1を100回繰り返すことでどうにかなりそうだ。
次々に襲い掛かってくる連中に対して、槍で突く・突く・突く。躊躇えばこちらが殺られるだけだ。ならば的確に一撃で葬る。
時には前に出て、囲いを崩したり、時には後ろへ引いて敵を引き延ばしたりして、同時に斬りかかってこれないよう動きつつ、一人また一人と突いていく。
だが、もともと農民兵が持っていた槍は丈夫ではなかったようで、20人ほどでガタがきた。
突っ込んできている中で騎乗している男が見えた。恐らく副官だろう。槍をそいつに向かって投げた。
投げた槍は見事に貫き馬から落ちた。
副官がやられたのを見たのだろう。どうすればいいのか兵士の動きが緩慢になった。その隙を逃さず、剣で斬りつけ始める。1人また1人と倒していく。
そのまま相手を全滅に追い込みたいが、こちらは一人だ。なかなか厳しいものはある。
剣もこれで4本目が壊れた。途中、倒した敵の剣を拾って使ってはいたが、物持ちは良くない。
それにこの剣、切れ味は良くなく、斬るというよりも叩き切るという感じだ。余計に体力を奪われる。
それでも、最初100人ほどいた敵も半分の50人程に減っていた。
さてどうするか?既に副官を討たれた動揺は無くなっているが、このままなら何とかなるだろう。ただ後ろが気になる。
プロヴァンス国は弱小だ。この50人ほどが抜けて横陣の横を急襲されれば、本陣はすぐに落ちてしまうだろう。
とすれば、プロヴァンスの連中にこいつらの存在を知らせつつ、時間を稼ぐってことだ。そうすれば少なからず援軍は来るだろう。
まぁ、それを見越して少しづつ丘を下ってはいたんだ。そろそろ気づいてきてほしいんだが、本陣側も攻め込まれ劣勢のようだ。
この部隊を早々に蹴散らして、騎馬隊で逆に相手の横陣を急襲できれば、逆転は可能なんだが。
というか、ここの存在は見えているよな?もしかして気づいていないなんてないよな・・・
一抹の不安が過る。
来るかどうかわからない援軍を期待するのは止めよう。
今は目の前の敵を倒すことだけに専念する。
あと半分だ。気合を入れる!
「さぁ、掛かってこい!ザコ騎士爵ども!!」
オレは挑発を込めて叫ぶ!すると、それを聞いた敵の騎士爵が・・・
「誰がザコだ?!オレはコザ騎士爵様だ!早くあいつを討て!あいつを討ったものは私の直属の兵にしてやるぞ!」
ウォォォォ!
なにも学んでないのかねぇ。統一した動きをされたら困るから挑発したけど、まさかそこに欲を混ぜてくれるとは・・・
自分が功を取るっていう欲のせいで動きがバラバラだ。これならさっきよりも楽に倒せそうだ。
向かってくる何人かに対して落ちている槍を投げる・投げる・投げる。
投げ槍を受けた兵士は倒れ、後ろの兵士が閊える。
これで幾人かの連中との間に距離が生まれる。これで1対1を50回やれるかね。
そこからひたすらに1人、また1人と斬っていく。オレは敵を斬りながら、今まで感じたことのない高揚感に包まれていた。
現実の世界では、いくら修練をしても、それを試せる場など無く、イメージ上で戦っていただけだった。
それをゲームの世界だけども、少しでも試せるならと始めたのが【戦争遊戯~WAR GAME~】だった。
ハマりはしたが、それでも高揚感はなかった。友人には生まれてくる時代を間違えたなんて言われたこともあった。
世間では武道は剣道や柔道など実戦ではなく礼儀を重んじるスポーツとして発展しているが、武術はそうではない。
実戦を想定した武術は危険だと、社会では役に立たない、もちろん軍略もだ。
それがどうだ・・・今オレが立っていられるのは、その武術のおかけだ。じゃなければとっくにオレは死んでる・・・
これが・・・これが高揚せずにいられるか!
「来いよ!ザコ共!まとめて叩っ斬ってやる!」
オレは自分で自分を鼓舞する!そこからは向かってくる敵を斬って斬って斬りまくった。
途中相手の攻撃を受けることもあったが、どれも浅い傷に留まるよう動いた。
「な・・・なんなのだ貴様は?!・・・こ・・・こんなこと・・・」
コザ騎士爵が狼狽えている。
相手の残りは3人まで減っていた。あのコザ騎士爵とそれを守る直下兵だ。
それも仕方ないことだろう。プロヴァンス国の横陣を突く任務をもらって、ここに来たら一人の男がいて、その一人の男に部隊は全滅されたんだから。
すると、後ろから少数の騎馬隊がこちらに来た。その姿を見たオレはそれが、プロヴァンス国の騎馬隊であることを認識した。
「やっと来たか・・・」
まぁもうほとんど終わってるんだけどな。
「コザ様!敵の騎馬がきています。ここは一度退却を「バカを言うな!」・・・コザ様・・・」
「たった一人に部隊が全滅し、おめおめと退却など出来るか!貴様だけでも・・・やるぞ!」
「「ハハッ!」」
ダッ!
さすがに騎馬の3人相手に正面は厳しいが・・・騎馬兵に対して乗っている兵士に攻撃するのは下策だ。この場合は馬を狙う。
【将を射んとする者はまず馬を射よ】という言葉もあるほどだ。
オレは馬に向かって槍で叩きつける。人間は自分に向かってくる物に対しては避ける本能を持っているが、自分に当たらないと思っている物に対しては避けるという動作は生まれにくい。
それが馬に当てるものだとわかっていなければ尚更だ。
槍で馬に攻撃をしかけると暴れた馬から兵が落ちる。その兵は放っておいて、すかさず残り2頭に斬りかかる。
残り2頭も傷を負って暴れ兵が落ちる。あとはただの兵士だ。そのまま3人に斬りかかる。
1人は斜め斬り!そのまま返す勢いで2人目を横切りにし、残った最後のコザ騎士爵を上段で切り伏せる!
「ちょっ・・待っ!」
ザンッ!
「こ・・・こんなバカ・・・な・・私は・・・準男爵・・・に・・・」
バタン!
フゥ・・・
なんとかなったな・・・っと、後ろの戦況はどうなっているかな。
オレが後ろを向いたその時、
ドガラ・・・
「これは?・・・一体どうなっているんだ?敵の部隊が見えたから来たが・・・」
若い騎士風の男が馬に乗りながらゆっくりこちらに近づいてきた。
既に切り伏せた人間はココから消えている。ゲームと一緒なら既に死亡エリアにいるはずだ。だが、鎧などの装備品はその場に残る。
この若い騎士風の男は、その装備品の数を見て驚いているのだろう・・・
「これはあなたが?」
若い騎士風の男が問いかけてくる。オレはそれを肯定する。
「失礼しました。私はプロヴァンス国のキースウェル騎士爵と申します。あなたは何者でしょうか?プロヴァンスの者ではないと思うのですが?」
騎士爵ということは貴族だ。見ず知らずの人間に対して礼儀を取っている。なかなかな好青年だ。まぁオレとあまり年齢も変わらない気はするけど・・・
「これはキースウェル騎士爵様、ご挨拶痛み入ります。私は【コウジュン】と申します。仰る通り、プロヴァンス国の人間ではありません。ですが、敵という訳でもございません。先ほど、私はあの丘の上で貴国の敵であるダンク国のコザ騎士爵と名乗る部隊に襲われておりました。プロヴァンス国の人間と思われていたからです」
「なるほど。しかし何故この戦争エリアにいるのですか?今は我が国とダンク国との【戦争遊戯】中です。部外者は入れないはずですが・・・」
「ええ、でも現実に今、ココにいます。なんらかの事故で私が入ってしまったのかもしれませんが理由は私にもわかりません。
気づいたらこの場にいたもので。そこで一つご相談が・・・」
「なんでしょう?」
「私を雇いませんか?」
本話を最後まで読んでいただきありがとうございます。
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