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16話:刀

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16話:刀



執務室で書類と格闘して数時間。



カキカキカキ・・・・サッ…トントン



「お疲れ様です、コウジュン様。本日の書類は以上になりますが、この後のご予定はいかがいたしますか?」




「マイセンもお疲れ様。これから街に行ってくるよ。鍛冶屋に用事もあるからな」




「かしこまりました。誰か護衛をつけましょうか?」




「いや、大丈夫だ」




ということで、オレは今日やる業務を全て終わらして、街に入っていった。






「あら、領主様じゃない。今日はリンゴがいいのよ。一個持っていって!」




「ありがとう、おばさん・・・シャキッ・・・うん、うまい!じゃあまた!」




オレがこの領に来てから6ヵ月が経ったが、あの頃に比べて街にも活気が出ている。




あの頃は商店通りというのかな。そこは閑古鳥が鳴いている状態だった。




それも仕方なかった。だって8公2民で、物を買う余裕なんて全くなかったのだから。




それが今はどうだ?たった半年でこうも変わるのかというぐらい変わっている。




人口も増えてきているし、農業地も増えて収入も期待できる。でもまだまだ足りない。これに関しては地道に行かないとな。





目的の鍛冶屋に着いた。



ガラガラ…



「いらっしゃいませ!あっ!?領主様!?今日はどうしたんですか?」



「おつかれミリーナ!師匠はいるかい?」



「師匠なら奥で領主様にお願いされてた刀?ってやつの仕上げをしてますよ」



「そうか。奥に行っても?」



「大丈夫です。どうぞ」




オレは奥へと入っていく。




最初にこの鍛冶屋にきたのは刀を探していたからだ。だがこの世界に刀は存在しなかった。あるのは剣だ。剣と刀は全く別の武器だ。




「剣」とは両刃で真っ直ぐの形状をしたもの、「刀」とは片刃で反りのあるものだ。「剣」が刺突に適していて、「刀」は斬撃に適している。




それとこれはあくまでもオレ個人のイメージだが、「剣」は力で切る。「刀」は技で斬る。といったイメージが近いとも言える。




高城流剣術は技で斬る部類に入る。だから剣よりも刀の方がしっくりくるのだ。




目的の刀がないことに残念な気持ちになったが、無いなら作ればいいと思い立った。あいにく正確な刀の作り方は知らないが、大体の工程は知っていた。



だから鍛冶場を貸してほしいとここの主人に聞いたんだ。もちろん最初は関係者でもない素人、それも領主にやらせるわけにはいかないと言われたが、



オレが刀の形状やその特性を教えたら、興味が湧いたのか、なら手伝え。ということになり、オレが知ってる限りの作り方を教えて、そこからは試行錯誤の連続だ。





刀で一番重要なのが玉鋼だ。これは砂鉄を原料、木炭を燃料として作られる。



この玉鋼は純度の高い鉄で、熱することで硬く、粘り強くなり、錆びにくく研磨しやす折り返し鍛錬が可能になるのだ。



ちなみに折り返し鍛錬というのは高温で叩いて伸ばして折り返してを繰り返し不純物を叩き出して炭素量減らし均一化して、より強い鉄とすることだ。



大体15回ほど繰り返すとされている。





そして刀の作り方は、



材料の鉄の塊を加熱して四角い棒状に叩いて延ばす作業である素延べ。




熱した状態で刀の形へと整える火造り。




低い温度で熱して冷まし叩く生仕上げ。




焼き入れのために刀の表面に粘土を塗る土置き。




刀を熱して一気に湯舟に入れて冷やす焼き入れ。




時間をかけて低温で熱し、湯舟に入れて冷ます焼き戻し。




これが上手くいくと刀の特性である「折れず、曲がらず、斬れる」という武器の出来上がりだ。




これが鍛冶師の主に説明した刀の作り方だ。細かい部分は知らないが大まかには合っているはずだ。あとはこれを長年、武具を作っている鍛冶師の経験で作ってもらっている。







「師匠!お邪魔するよ」




「師匠は止めろって言ってるだろ!あんたは領主なんだからな」




「細かいことは気にしない気にしない」




「細かくねぇだろうが・・・まったく・・・」




「それでミリーナから刀の仕上げをしてるって聞いたけど?まさか出来たのか!?」




「あぁ!今できる最高のが今さっき出来た!見てくれ!」




今までは最後の仕上げまで行かず終いだったのに、遂に最後までいったんだな。オレは師匠から刀を受け取る。




日本刀特有の刃文もあるし、自然な反り具合だ。見た目は問題なさそうに見える。




「試しても?」



「もちろんだ。ここにお前の所に卸してる剣がある、丈夫さは知ってるだろう。これを斬ってみろ」




オレは刀を構え眼を閉じる・・・・




スゥ・・・・パチッ!




シュッ!




キン!




ボトッ!




刀は無事だ。刃こぼれもしていない。逆に剣の方は真っ二つに斬れている。




「どうだ?」




すると師匠がオレに感想を求めてきた。自分が作った武器だ。それも領主であるオレ専用の武器だ。聞きたくもなるだろう。




「たった半年間でよくここまでというのが率直な感想です。ただ・・・・」




「なんだ?」




「一対一で短期戦であれば問題ないでしょう。でも戦争遊戯では使えない可能性があります」




「それはなんでだ?」




「耐久性です。見てください」




そういってオレは斬った剣の切り口を見せる。そこには微妙ではあるが、切り口が歪んでいた。




「オレの腕だからというのもあるが、これは刀のしなやかさが足りておらず、切れ味が鈍っている時に起きる現象なんです。

材質の問題なのか、どこかの工程なのか、もしくはその両方なのか。いずれにしても長くは使えないですね」




「そうか・・・・」




「でも良く出来てます。これは買います。現状これでどこまでやれるのか試してみたいですからね。いくらですか?」




「金は要らねぇ!中途半端な武器を渡して金を貰うなんてオレの矜持が許さねぇ。見てろ!今度渡すときはその刀以上のものを作ってやる!」




「それは楽しみです!それと金を受け取れないというなら、せめて原料となる鉄と木炭を送りますから、それは受け取ってください」




「わかった。それはありがたく貰おう・・・・・それで、今日来たのはそれだけじゃないだろ?」



やっぱわかるか・・・そりゃあそうだな。刀が出来上がったら連絡を入れると言ってたのに、その連絡をしないうちにオレが来れば、刀とは違う別件があるというのは。


本話を最後まで読んでいただきありがとうございます。


「面白い」「次話も楽しみ」など思っていただけたら、とても励みになるので、


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