10話:軍議
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10話:軍議
「守りだ!守りがしっかりしていなければ数の差で、すぐに負けてしまうぞ!」
「攻めだ!攻めなければ数の差はひっくり返せない!」
軍議は難航していた。それは何故か?それは人数で負けているからこそ守りが大切であるという主張側と、人数で負けてるからこそ攻めるべきだと主張する側で対抗しているからである。
この軍議には10人の貴族がいる。総大将のライセン辺境伯、アリオン伯爵、オーリス子爵、ルミオン男爵、ガイア準男爵、キースウェル準男爵、ポンテ騎士爵、ランド騎士爵、ウィル騎士爵だ。
辺境伯が沈黙している中、伯爵と準男爵1人と騎士爵3人が守勢側に、子爵と男爵、準男爵が攻勢側にわかれているのである。
ちなみにキースは攻勢側だ。オレはついこの間、貴族になったばかりの新参者だから口を出すのは控えている。
そんな言い合いが始まってから、既に数時間が過ぎている。もう少しで日が落ちる頃だ。
「閣下!閣下はどうお考えですか?」
「そうです!閣下のお考えをお聞かせ願いたい!」
伯爵と子爵が黙っている辺境伯に意見を求める。最終的に決めるのは辺境伯だからな。さて、辺境伯はどうするおつもりなのか・・・
「コウジュン・ロンド騎士爵。貴公も先ほどから発言をされていないが・・・何か意見はないのか?」
そう言ってくるのは特徴のない至って普通な男性という感じの男爵が、ここでオレに意見をしろと言ってくる・・・
「いえ、若輩者の私では恐れ多く・・・」
それまで沈黙を貫いていた辺境伯が口を開いた。
「先だっての戦ではお主の作戦で勝利を収めたといっても過言ではない。ぜひロンド騎士爵、貴公の考えを聞きたい」
おいおい・・・・辺境伯が騎士爵に意見を求めるのか・・・
「そうだぞ!コウジュン。お前の考えを聞かせて欲しい!」
ここぞとばかりにキースまで加担してくる。
「安心してほしい。ここにいる者たちは、以前の論功行賞の場で異を唱えた者たちとは違うと思ってくれて構わない。すでに前回の戦の映像は、全員観させてもらっている。ここにいる人間は貴公の事を好意的に捉えている者たちだ」
そう言うのは伯爵だ。その言葉にその場にいる者たち全員が頷いた。
「・・・そう言う事であれば・・・まず両者が言っているのはどちらも間違ってはいません。ですが、どちらも正しいというわけでもありません」
「それは一体、どういうことだ?」
オレの言葉に代表して伯爵が答える。
「8000という数の差はただ攻めれば、ただ守ればいいという訳にはいきません。それほどに数の差は厄介であると言えます」
「それはわかっているのだ!だからこそ、攻めと守り、どちらに比重を置くかということを話し合っているのではないか!」
今度は子爵がオレの言葉に反論する。
「お話は最後までお聞きください。このルーブル平原は名を平原と呼ばれていますが、よく見ると起伏が激しく、小さいが崖もある。まずはそこを主戦場とし、敵の数を減らすのが先決だと考えます」
その言葉に辺境伯が疑問を呈する。
「確かにそこはそういう場所だが、軍を展開するには手狭だぞ。それにあそこは戦いにくい」
「それでいいんです」
「どういうことだ?」
「同数で戦うのであれば、わざわざ戦いにくい場所で戦う必要はありません。ですがこちらは数で大きく負けております。であれば、まずはその差を埋める必要があります」
「その場所でどうやって数の差を埋めるのだ?」
「あそこは、我々が軍と合流する際に見えていた場所です。遠目からでも不思議な形状をしていたので、物見を行かせて地理を把握しました」
「いつの間にそんなことを・・・!・・・だから少し遠回りしたのか?!」
そう驚くのはここまで一緒に来ていたキースだった。
「あぁ!でもそのおかげでわかったんだ」
「なにがわかったんだ?」
すでにここにいる全員がオレの言葉を真剣に聞いていた。
「あそこには隘路がある」
「「「隘路?」」」
隘路という存在を知らないのか?もしくは言い方が違うのか?
「隘路と言うのは、数本の道が一本に纏まっている道の事です。しかも敵側の陣地からはその隘路は見えない。そして急に複数の道が出てくれば、そこに入った敵は分散して前に進む。兵数が分散した上に、狭い道では衝突する面は小さいから少数の部隊でも問題ない。そこから押し込んで隘路を塞ぐ」
「そして、後ろを断たれた隊は混乱する。その隙に各場所で部隊を撃破し数の差を埋める・・・ということか?」
さすがは辺境伯。オレが言いたいことはわかったようだ。
「そうです」
「だが、その隘路から出てきた部隊を押込むためにはかなりの兵の強さが必要なのではないか?」
「おっしゃる通りです。ですので隘路へ押し込む部隊はうちの隊50人が担当し、塞ぎ始めたらそこに騎士爵軍300人を投入し完全に塞ぎます」
「「「なっ?!」」」
「たった50人でそんなことができるのか?!」
「あの道のうち一本は大人が武器を振りかざすと5人並ぶのがやっとの狭さです。それなら50人もいれば問題ありません。他の道はそうでもないので、塞ぐならその狭い道から行くのが最良です」
「だが、たった50人で大丈夫なのか?無謀ではないか?」
辺境伯も他の貴族も心配している。すると横からキースが話始めた。
「問題ないと思います。このコウジュンが指導する訓練を受けたことがありますが、一言で表すなら苛烈です。その訓練を兵たちは半年間、毎日受けていたようですから、その練度はそこらへんの隊にも引けは取らないどころか群を抜いているはずです」
新進気鋭と呼ばれているキースの実体験からくる言葉は他の貴族たちに刺さったようだ。
「・・・わかった。だがそこに敵を誘い出すことができるのか?」
「確かダンク国の戦い方は数の差で戦う正面突破がメインでしたね」
「そうだ。前回は側面からの奇襲を打ってきたが、失敗している。今回は余計な小細工をせず数で押し通すつもりだろう」
「なら、本陣の数を8000、左翼を3000、右翼を950人で配置すればいいでしょう」
「「「なっ?!」」」
その言葉に伯爵が強く指摘する。
「そんなことしたら右翼は一気に潰されてしまうぞ!」
「「「あっ?!」」」
皆気づいたようだ。代表して辺境伯が答えを言う。
「わざと右翼の人数を少なくして、そこから攻めてこいということか・・・数で優っている軍が右翼から攻めてこないのは、あのダンク国の性格上ありえない。そして、右翼の前にある隘路で敵を叩く・・・」
「そうです」
「その作戦が成功した場合、どれだけの兵数の差が埋まると考えている?」
「相手方は本陣1万、左右に5000ずつを配置してくるでしょうから、ざっと数えて、うまくいけば2000人ほどでしょう」
「それで2000人か・・・」
「いえ、2000人もというのが正しいと思われます」
オレのその言葉に今度は子爵が足りないのではと指摘する。
「しかしそれでもあと6000人の差だぞ。他にも何か手を打たなければ・・・」
全員がオレを見る。なんか照れるな・・・っと言っている場合じゃないね。
「初手で1000人ぽっちの部隊にその倍の2000人が倒されたという事実は、相手に精神的不安を与えます。そして不安が回復する前に、もう一手・・・」
ゴクッ!
誰かはわからないが息をのむ音が聞こえてきた。
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今まで黙っていた辺境伯が話始める。
「なるほど、そこで一気に敵左翼を壊滅させるということか。だが、中央の本軍はともかく、左翼は敵が前進してくるのではないか?」
「最初は右翼に攻め込んできますが、時間が経てば、左翼にも攻め入ってくるでしょう。ですが、数の優位はあちらにありますから動きは鈍いものかと思います。
なので、右翼が接敵したと同時に左翼はここまで前進し陣取ってください」
オレは地図上にある、あるポイントを指した。そのポイントを見て伯爵が問いかけてくる。
「そこは確か、丘になっているところか・・・しかし、その丘は特段高いという訳ではないぞ。戦略的に意味があるとは思えないが・・・」
「そうです。特にその丘自体には意味はありません」
「それはどういうことだ?」
「一度前進し、陣取っても意味がない場所で停止する。伯爵が敵方ならどう見ますか?」
「そうだな・・・何かあると思って様子を見るに徹する・・・そうか!時間稼ぎか?!」
「そうです。この作戦は時間が必要です。時が来るまで、中央と左翼の軍はできるだけ戦闘を避け、守りに徹してください。そして時が来れば・・・」
「右翼と連動して、相手の本陣を叩く!ということか・・・わかった。ならばその戦略で行く!皆も良いな?」
「「「ハハッ!」」」
「ならば編成を発表する。中央の本軍は私が率いる辺境伯軍5000と子爵軍2000、男爵軍1000の計8000。左翼は伯爵軍3000、右翼は準男爵軍600と騎士爵軍350の計950だ。騎士爵軍はコウジュンの指揮下に入れ!良いな?」
「「「ハハッ!」」」
オレたちは辺境伯の天幕から出て、それぞれの陣地へと戻っていく。その時、右翼を担当している貴族たちが話しかけてきた。
「コウジュン、準男爵軍は形式上は別の隊ではあるが、右翼の初手が終わった後は、そちらと合流して指揮下に入ろうと思う。これはガイア準男爵も同意している」
「コウジュン殿、明日はよろしく頼む」
「わかりました。こちらこそよろしくお願いします」
それから明日の右翼勝利のための戦術を詳しく話して、翌日を迎えることとなった。
本話を最後まで読んでいただきありがとうございます。
戦術・戦略って難しい。図面で説明したほうがわかりやすいんだろうな・・・と思いつつ、文章で説明しようと四苦八苦です。
「面白い」「次話も楽しみ」など思っていただけたら、とても励みになるので、
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