1話:ゲームの世界へ?
別作品を書いている時に思いついてしまったので書いていきます。
この作品の他に書いているのもあるので、毎日投稿はできませんが、定期的に投稿していくつもりです。
良ければ他の作品含んで見てくれると嬉しいです。
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1話:やってやろうじゃないか
フッ! シュッ! ハッ!
1人の男が道場で刀を振るっていた。その男の背後には槍や弓などの他の武器と言われている物も置かれていた。
刀を一通り振り終わると、床に置いていたタオルを手に取り、汗で濡れた顔を拭う。
そして後ろに行くと刀を元の場所に置き、今度は槍を手にして振り始めた。
この男、高城流古武術の師範を務めている現役大学生、高城 順 22歳。
道場の門下生への指導を終わらした後に、日課の修練を済ませていた。
シュッ!バッ!ザッ!
フゥ・・・
身体は引き締まっており、10人中3人はイケメンかな?と言うぐらいの顔立ちをしている。
いつもの日課を終わらしたところで、片付けを行い、道場を出る。
既に辺りは暗くなっており、雨が降り始めていた。遠くの空には雷が鳴っているようだ。
「そういえば、今日は雷雨になるって天気予報で言っていたっけか・・・」
急いで、家に戻り風呂に入って飯を食う。
この男、武芸の日課の他にもう一つ日課があった。それは、
【一兵卒から勲功を上げ、貴族、そして国王へ成り上がれ!】
というのをテーマにした、【国家間戦争における死者0ゲームプロジェクト】通称【戦争遊戯~WAR GAME~】
一部のゲームファンから根強い人気を誇っているVR戦略シュミレーションゲームである。
何故人気なのかは大きく3つに分かれる。
1つ目は、ゲーム内の舞台が剣や槍、弓、そして馬といったモノが主流だ。
現代でいう、中華の戦国春秋時代や三国志と呼ばれるような時代と言えばわかりやすいだろう。
銃や魔法などのような一発逆転の手など存在しない、己の武と知で戦い抜くという設定。
さらにこのゲームには決まった動きがないのだ。戦場を自由自在に動き回ることができ、
その動きによって戦況が変わるのだ。普通のゲームにはない自由性が売りなのだ。
2つ目は、このゲーム内での戦争で死亡しても、そこでゲームが終了することはないこと。
戦争で死亡するとレベルが初期化され「1」となって、そのまま時代は進むのだ。
これは自分以外のNPCであるキャラクターも同じだ。兵士や仲間もレベルアップしていくが、
戦争で死亡した場合、そのキャラクターはいなくならず、レベルが「1」に戻るだけなのだ。
戦い抜いて精強な軍を作っても、死んだら次戦は同じメンバーでも最弱な軍となってしまうのだ。
それでも好きなキャラクターが死んでも使い続けていけるというのが人気でもある。
3つ目は、このゲームはレベルによって率いれる軍・兵数が変わる。
また身体能力が微上昇するようになる。この微上昇がポイントでもある。
どんなにレベルが上がろうと、決して大地を割るような力は出ないし、瞬間移動かというような素早さは手に入らないのだ。
これはゲームではあるが、現実、強いて言うなら戦国時代を体験できるようなゲームだ。
高城はこのゲームを幾度となくプレイしている。
時には、傭兵としてあらゆる戦場を渡り歩く。
時には、大国の兵士として戦場を駆り、立身出世を目指した。
そして時には、軍略家として兵士を動かす立場にもなった。
このVRゲームは実際に自分の身体をスキャニングして、自分の分身、アバターと呼ばれる身体を操作する。
ネット回線で繋がっているため、動きにラグがでたりして、思うように体を動かせない時もたまにあるが、、
高城 順は自分が磨いてきた武術を試せる場であり、戦術・戦略を学ぶいい機会でもあることから、どっぷりハマっているのである。
高城は部屋に戻り、次はそろそろ本格的に天下統一を目指すか・・・と考えながら、いつものようにゲームをしようとヘッドギアをつけ電源を入れた。
その瞬間、雷が家に落ち、高城の意識はそこで途絶えたのだった・・・
意識を取り戻した高城が最初に見たのは、辺り一面広がる平野だった。
「・・・ここは何処だ?」
ボソッと呟くように出た言葉に反応する人はいなかった。辺りを見回しても見えるのは平野だけで人などいないのだから。
オレは確か、いつもの日課の修練を終わらした後、今度はゲームをやろうと電源を入れたんだよな。
で、気づいたらここにいると。ということは、ここはVRの世界?
でも、この肌に差す日の光や風が肌にあたる感覚が、ここがVRの世界ではないとオレに訴えかける。
それに自分の身体を見てみれば、この身体は現実世界のオレだとわかる。
とりあえずこれがゲームの世界であるのかを確かめる。
「ステータスオープン」
パッ!
出た!出ちゃったよ。
ステータス
名前 :コウジュン(高順)
レベル:1
役職 :兵士
タイプ:剣士
所属 :無所属
これは【戦争遊戯~WAR GAME~】のステータスと同じだな。レベルも「1」だし無所属ってことはゲームの最初ってことか。
自分自身の身体でゲームの世界に入ったってことなのか?バージョンアップされた?でもそんなお知らせは来ていなかったはずだ。
そうだ!ログアウトすればいいのか。ログアウトっと・・・あれ?ログアウト欄がない。
マジでどうなってるんだ?
ドォォォン! ドォォォン!
オレがその場で悩んでいると、いきなりどこからか銅鑼の音が聞こえてきた。
「あれ?この銅鑼の音・・・」
聞き覚えがあった。その音は【戦争遊戯】が開始される合図だ。
オレは急いで音がした方に走る・・・ちょうどあの丘の向こうだ。
丘に近づくにつれ、人の雄たけびのような声が聞こえてきた。それも一人や二人じゃない、大勢の声だ。
声だけじゃない、地響きもだ。それから間もなくオレは丘の上に着いた。
そこで見た光景は、ゲームと同じように人と人が戦争をしていた。
オレはその光景を見ていると疑問に思うことがあった。
ここが、あのゲームの世界なら戦争遊戯中は戦争エリア内に部外者が入れないはずだ。
だけどオレはココにいる。どう見てもオレが立っている場所もエリア内だ。
それに、人が斬られた時のエフェクトがない。人を斬れば、その個所はポリゴンが破壊されたようなエフェクトが発生するはずだ。
それがない。しかも斬られたところは血が噴き出している。リアル過ぎる。でも、倒れてる男たちは時間が経過するといなくなっている。
「どうなってるんだ?」
今、見ている光景が何なのか?オレは今どうなっているのか?理解が追い付かない。
その時だ・・・後ろから気配がした。
ドガラ・・・
後ろを振り向くと、そこには100人程の兵士がいた。そしてその先頭には馬に乗った、この隊の隊長だと思われる槍をもった男がこちらを見ていた。
すると、その男がオレに話しかけてきた。
「なんだ貴様は?」
初対面でかなり高圧的な態度だな、こいつ。ただ状況が分かるチャンスでもあることは確かだ。
「人に名前を尋ねる前に、まずはそちらが名乗るべきでは?」
「なんだと?!貴様!私がダンク国のコザ騎士爵と知っての狼藉か!」
「いやいや、知らんがな」
ダンク国って、確かゲームの登場国の1つだったな。
このゲームって、ランダムで勢力が変わったりするから一概に同じとは言えないんだけど。
「貴様!・・・まぁいい、どうせこの戦が初陣で、怖くなってこの外れにいたのであろう。ふん!さすが弱小国のプロヴァンスだな!情けない奴め!」
プロヴァンス?!
確か、その国はランダムであっても絶対に弱小国になって、どんなゲームスタートでも最初に滅ぼされる国だったはずだ。
どうしてもこの国からのスタートができないため、不遇国だって言われていたなぁ。
で、そのプロヴァンスは今、ダンク国と戦争遊戯中ってことか。時代は最初期ってことになるのか。
そして、オレはそのプロヴァンスの人間だと思われてるってことか。
「どうした?怖くて何も喋れないのか?」
凄い言われようだな、なんか可哀そうになってきた。それにしてもこんな流暢かつ自由にNPCが話せるものなのか?
後ろの部下らしき者たちの表情も舐め切った顔をしてるし。どうもゲームという感じじゃなさそうなんだよな。
どっちかというとゲーム要素を取り込んだ現実って感じがする。ログアウトもできないし。
ここはそういう世界だと仮定しよう。このままだとプロヴァンスは滅亡する。ここでオレがこの戦場でプロヴァンスに味方しても結果は変わらないかもしれない。
それにここで死んだ場合、オレ自身がどうなるかもわからない。ログアウトするのか、拠点で復活するのか。
まぁ拠点といっても無所属の場合は一度死んだら復活はしないんだよな。あくまでも復活は所属国がある場合のみだ。
フゥ・・・
深く考えてもわからないものはわからないか。
とりあえず、この現状をどうするか?後ろでは大規模な戦場、前は恐らく敵で囲まれている状態だ。
その時だ、ザコ・・・じゃない、コザ騎士爵が高らかに宣言し、オレに対して部下に弓で撃つよう命じた。
「まぁいい、この戦の功績で私は準男爵へと駆け上がるのだ!田舎国の弱小プロヴァンスはここで滅べ!」
「ちょっと待ってくれ。オレはプロヴァンスの・・・」
「黙れ!問答無用だ!あいつを討て」
「ハッ!」
ビュッ!
矢はオレの顔に向かってくる。
オレはそれを薄っすら傷がつく程度で避ける。
余裕で避けることもできたが、確認したいこともあり、敢えて当たることにした。
それは痛みがあるのかということだ。ゲームなら痛みはない。傷ができたエフェクトが出るだけだ。
でも今は傷が付いた痛みがあった。それも付いた傷を触れば血が出ており、その手には血も付いていた。
先ほど、後ろの戦場で見たのと一緒ってことだ。これはリアルと仮定して動くのが吉ということだろう。
それとオレは今、無所属となっているから、勝手に乱入したことになっている可能性も「0」ではない。
相手から攻撃してきた、正当防衛だという大義名分が欲しかった。
ちょうどザコ・・・じゃなくてコザ騎士爵が宣言したとき、カメラドローンが来ていたのだ。
ゲーム通りなら、カメラドローンは戦場を回り映像を撮って、その映像を各国の国民がライブ視聴しているはずだからだ。
だからオレは打たれる前に【待ってくれ】と言ったのだ。まぁ、相手は待たず撃ってきたけど・・・
これでオレに何か言われても言い訳は立つ。
さて、降りかかる火の粉は払おうか。
見せてやるよ!高城流古武術の強さを!
本話を最後まで読んでいただきありがとうございます。
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