表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/35

16話 地元の死ぬほど怖い神格


 『究極の闇』の中には、恐怖で泣いてしまっている者もいた。


 そのうちの一人が這いずりながらルルスに近寄ってきて、その足に縋りつく。


 黄色の腕章を付けた……『究極の闇』のリーダーだ。

 彼は顔を涙でグシャグシャにしながら、ルルスのことを見上げた。


「た、助けてくださって、ありがとうございます……! も、申し訳ございませんでしたぁ……!」

「これまでに……こうやって、何人脅して来たんですか?」

「は、初めてだったんですぅ! ちゃ、チャンスだと思いましてえ! ちょっと、ちょっとだけ、お金が取れればいいなと……!」

「ううん……本当かなあ……」


 ルルスが彼の発言の真偽を図り損ねていると、ツンツン、とその脇が突かれる。

 ゴルティナだ。


「お困りか? ルルよ」

「ええと……ちょっと、彼の言ってることが本当かわからなくて」

「我ならわかるぞ」

「なにが?」

「嘘か本当か」

「どうやって?」

「下等種族の嘘っぱちなど、我がちょちょいと見ればバッチリピカピカにお見通し!」

「……マジで?」


 えっ、本当に?


 そんな能力もあるの、この子?

 怖すぎない?


「……それって、僕の嘘とかもわかるっていうこと?」

「見ようと思えば!」

「もしかして……僕にやったこと、ある?」

「仮とはいえ! 婚約者にそんなことをするわけないではないかー! プライバシーであるからな!」

「……よかった」

「もしも使うとしたら、浮気調査くらいであるぞ!」


 怖すぎた。


 というより、ゴルティナとの初接敵の際。

 初手でゲームオーバーにならなかったのが不思議だった。

 おそらく、お互いにパニくっていたのだろう。


「……じゃあ、彼が嘘をついてないか見てくれないかな?」

「ガッテンピカピカ!」


 謎の掛け声と共に男のことを覗き込んだゴルティナによれば、彼らの言っていることは嘘ではないようだった。


 つまりは、こういったギャング紛いの行為に関しては初犯。

 初犯で神格に喧嘩を売ってしまうとは、何とも運の無い連中だ。


「他に、人に危害を加えた経験は?」

「ぁ、ぁりません……!」

「ゴルティナ」

「ガッテンピカピカ! 嘘であるな!」

「す、すぃません! 喧嘩とかしょっちゅうしてました!」

「喧嘩以外では?」

「なぃですぅ……!」

「ゴルティナ」

「バッチリキラキラ! 嘘であるな!」

「すいません! お婆ちゃんの財布から、小銭取ったりしてましたぁ!」

「そういうしょうもないの以外は?」

「本当に無いです! マジの犯罪はしたことないです! これが初めてです!」

「ゴルティナ」

「ピカピカキラキラ! 本当であるな!」


 本物の初犯だった。


 しょうもない軽犯罪歴以外には何も無い。

 ただの調子に乗って、チンピラ紛いの行為に手を染めてしまった緑化運動家の集団だった。


「ずみまぜん! 許じでぐだざい! たまに、酒場で盛り上がったりしてたんです! こういうお小遣い稼ぎなら、俺たちにでも出来るんじゃないかって! わりと簡単なんじゃないかって!」

「なるほど……そうなると、微妙に話が変わってくるぞ」

「何が変わる?」

「つまりね?」


 ルルスは、彼らを協力者として囲えるかもしれないということを話した。


 元々、精霊であるゴルティナがこちら側の世界で長く滞在するには、用意しなくてはならない物がある。つまりは戸籍やら何やら。さらにゴルティナが精霊であるということは、外部に知られると非常に厄介なことになるので、極力隠さなければならない。


「どうして隠すのだ?」

「国やギルドが絶対に放ってはおかないから、すごく厄介なことになる。わりと国際問題になる」

「厄介事は嫌いじゃないぞ」

「僕は嫌いだな」

「好きじゃない方に合わせよう」


 『究極の闇』が常習犯ならいざ知らず。


 本当に初犯の出来心なのであれば……二度とこういうことをしないと誓わせて、一時的な協力者になってもらっても良いかもしれない。空の戸籍などが売買される闇市場などには、ルルスは明るくないが……公認パーティーの彼らなら、いくらか伝手があるかも。

 彼らが外部に喋るという可能性はあるものの、「あの女の子って、実は死ぬほど強い神格なんだぜ」という話を信じる者はいない。


 しかもゴルティナの恐ろしさを骨の髄まで体感しているわけだから、軽くギブもしておけば、よほどこき使わない限りはなかなか裏切らないだろう。


 地元の死ぬほど怖い先輩みたいな感じで。

 地元の死ぬほど怖い神格なのだが。


「我は、あいつらを許したわけではないぞ」

「だから、その……こき使ってやるのさ」

「なるほど! 懲罰として使役するというわけだな! 我は良いことを思いついたぞ!」

「良いこと?」


 ゴルティナはそう言うと、未だに立ち上がれていない男たちに振り返った。


「よーしお前たち! 命令であるぞ! ここら一帯の薬草を採るのだ! 籠一杯にするのだぞー!」


 なるほどね、とルルスは思った。


 その後、『究極の闇』総出で行われた薬草の採集活動は、すぐに籠を満杯にしてくれた。


 しかも、薬草を狩りつくさないように配慮まで。やっぱりこの人たち、『究極の闇』じゃなくて『緑を守る団』に改名した方がいいな、とルルスは思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] がッテンピカピカ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ