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14話 あ”ぁ”あ”?


 一匹のモンスターとも遭遇しないという極めて安全なダンジョン探索を実現していたルルス一行は、しりとりをしている間に目的地に辿り着いてしまった。この少女が隣にいる場合、ダンジョン内は街を手ぶらで歩くよりも安全な可能性があった。


 上階層の、薬草の群生地帯。

 薄暗い洞穴の中に、ごっそりと生い茂る植物たちの姿が見える。


「やったあー! ここであるなぁー!?」


 洞穴の中で小さな林のように群生する色とりどりの薬草を見て、ゴルティナは嬉しそうな声を上げた。

ルルスは背中から籠を外すと、さっそく薬草の採取にかかる。


「まず抜くだけ抜いちゃってさ。それから纏めて籠に入れようよ」

「賛成! これは籠が一つじゃ足りなくなってしまうぞ!」


 そんな風にして、ルルスは手当たり次第に薬草を抜き始める。


 採取されずにほとんど手つかずで残っている所を見るに、ここに薬草採取の目的で訪れる冒険者はほとんど居ないのだろうと推測できた。ここまで来ることができるパーティーは、そもそも薬草採取なんていうチンケなクエストは受けないし……採取目的でここまで潜るには、費用対効果が合っていないということか。


 精霊でも連れてこない限りは。


 ルルスが群生している薬草を手でブチブチと抜いている間、ゴルティナは鼻歌を歌いながら歩き回って、金属の回転刃のような物を浮遊させて薬草を刈り取りまわっていた。明らかに人ならざるスピードでバババババッと薬草が刈り取られ、舞い上がり、次々と薬草の山が積み上げられている。


 便利すぎる。あの女の子、いくらなんでも便利すぎる。

 何でもできすぎる。


「ようよう、お二人さん!」


 採取に励んでいると、不意に背後から声。


 振り返って見てみると、群生地帯の洞穴の入り口に、五人組の冒険者パーティーが立っているのが見える。一人の腕には腕章。つまり、ギルドの公認パーティーだ。


 彼らはズカズカと洞穴の中に足を踏み入れると、その入り口を塞ぐようにして立ち並ぶ。


「こんな所まで薬草採取とは、変わった奴らだねえ」

「……なんの用ですか?」


 ルルスは彼らの用件に薄々気付きながらも、そう返した。


 リーダーと思しき男が洞穴の端の大岩まで歩いて行くと、そこに腰かける。

 彼はその腕に回された、黄色の腕章を見せつけるようにして腕を組んだ。


「俺たちが誰か、知らねえわけじゃあねえだろうな」

「いや……すいません。わかりません」


 黄色の腕章は、ランクDの冒険者パーティーの証明。

 公認パーティーといえども、序列最下位のランクDは結構な数に上る。

 それらすべてのパーティーを覚えてはいられない。


「ふん、教えてやる。俺たちは公認パーティー……『究極の闇』だ」


 死ぬほどダサい名前の冒険者パーティーに絡まれてしまった。

 逆に覚えていないのが不思議で失礼なくらいだった。


「それで……公認パーティーが、僕らに何の用ですか?」

「この群生地帯はな、俺たちのシマなんだ」

「……シマ?」

「そうだ。ここいらの薬草を採るなら、俺たち『究極の闇』を通して貰わないとな」


 できれば、パーティー名を連呼しないで欲しかった。


「つまり……いくらかお金を払え、ということですか?」

「その通り。ここは俺たちが管理してやってるんだぜ」

「使用料を払うのは、当然だよなあ?」

「リーダーはいつも薬草に水をやったり、害虫の駆除をしてやったりしてるんだ」

「土日以外は欠かさずな」


 高圧的な態度と要求とは裏腹に、かなり植物に良心的な連中だった。

 究極に植物に優しい連中だった。


 そんなやり取りをしていると、ゴルティナが歩み寄って来る。


「ルルよ。このカッコイイ名前の連中はなんだ?」


 最高精霊様のネーミングセンスも絶望的だった。


「ええと……みかじめ料というか。そういう場所代を払えって言ってるみたい」

「払う必要があるのか?」

「無いけど、僕はもはや払ってもいいような気がしてきた」

「そうか。ルルに任せるぞ」

「すみません、いくら払えばいいですか?」


 トラブルになるのも嫌だったので、ルルスは素直に払うことに決めた。


 ダンジョン内の縄張り形成や、こういった形での金銭要求はもちろん禁止されている。

 しかし面倒事はごめんだし、少額ならば、この『究極の闇/改め/緑を守る団』に払っても構わない……こういうのは良くあることだ。


「ザっと、金貨10枚くらいだな」

「…………」


 高すぎた。

 緑化運動への寄付にしても高すぎる。


「それはちょっと……支払えないですね。手持ちがちょっとしかないので」

「いくら持ってやがるんだ?」

「一万四千くらいです」

「なら、有り金ぜんぶそこに置けよ」

「…………」


 ルルスが返答に困っていると、隣に立つゴルティナが突いてくる。


「雲行きが怪しいのではないか?」

「うん、怪しくなってきた」

「我らと彼ら、どっちが悪いのだ?」

「……彼らの方だね」

「なるほど。それでは任せておけ」


 スタスタと『究極の闇』の一団の方へと歩いて行ったゴルティナは、少し離れた場所で立ち止まり、ふん!と薄い胸を張る。


「やいやいお前たち! 話を聞いてみれば、悪いのはお前たちの方であるらしいな! そうとわかれば、お前たちに払うお金などビタビタ一文も無いわ!」


 小柄で細身なゴルティナの、そんな宣言に……


 男たちは、爆笑で返した。


「ギャハハハ! 可愛いお嬢ちゃんだな!」

「俺たちが『究極の闇』だと知って、盾突いてきやがるのかぁ!?」


 男たちが次々と、腰の剣を抜く。

 ルルスはそれを見て急いで駆け出し、ゴルティナの肩を掴んだ。


「ゴルティナ! 足止めして……ここは一旦、逃げよう!」

「どうしてだ? 逃げる必要などありはしない」

「ええと……公認パーティーをボコったら、色々面倒だから!」

「面倒事は嫌いじゃないぞ」

「そうじゃなくてー!」


 そんな風に言い合っていると、リーダーも立ち上がって短剣を抜く。


「そっちの貧相な奴は、てめえの彼氏かぁ? 二度と盾突けねえように、ちょいと痛めつけてやるからな!」


 腕章の彼がそんなことを言った瞬間……


 肩を掴んだ先のゴルティナの雰囲気が、サッと変化したのがわかった。


「あ“ぁ”ぁ“?」


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[一言] やる事成すことヤ○ザか「究極の闇」
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