ヒロインになりたかった少女の話2
学園に入学してから私は、片っ端から男の子と仲良くなろうとした。
女の子は仲良くなっても私をお姫さまにはしてくれないから、男の子だけ。
私が近づくと皆喜んでくれたけど、自分が特別じゃないって知ると皆離れていった。だって、仕方ないじゃない。
一番私を幸せにしてくれる人をちゃんと選ばないといけないもの。
そうして残ったのは、伯爵家のカイルくんと、平民だけどなんでもくれるダン、それからそれから、王子様のアラン!!
アランと結婚したら、私は本当のお姫さまになれる!
絶対絶対アラン!
アランは私を可愛いって言ってくれて、時々なんだか冷たい目はしてたけど、とっても優しくて、私はアランのお嫁さんになるんだって決めたの。
「イザベル、最近は殿下と親しくしているようだな。とても良いじゃないか。もっと親しくなれると良いな。」
ディナーの時にお父さまに言われて、私はニコニコ顔になった。
「うん。殿下ともっと仲良くなれるように頑張る。」
「そうだな。たとえ側妃だとしても、とても名誉なことだぞ。」
「そくひ?」
お姫さまじゃなくて?
「愛人よ。あなたの母親と一緒。」
最近はもう私には話しかけることのなかったお母さまが突然会話に入ってきた。
愛人?お母さんと一緒?
じゃあ、突然平民になる可能性があるってこと?
寒くて暑くてひもじい思いをするってこと?
嫌だ、嫌だ、嫌だ。あんな生活もう嫌よ!
今の生活を知ってしまったんだもの。
愛人なんて絶対嫌!私はお姫さまになりたいんだもの。
どうしたらアランのお嫁さんになれるの?
アランに直接聞いたら、困ったように答えてくれた。
「アリスがいるからなぁ。」
「アリスさん?アリスさんがいなくなれば、アランは私と結婚できるの?」
「ああ。だけど、僕だけの力じゃアリスと婚約破棄することは出来ないな。」
「私に出来ることなら何でも言って!アランと結婚出来るなら、私、何でもするわ!」
「カイルの協力があればなぁ。」
「カイルくん?カイルくんなら私のお願いなら何でも聞いてくれるよ!」
「でもあいつは光魔法の使い手だけあって、自分が本当に正しいと思うことにしか協力しないだろうなぁ。」
「どういうこと??」
「アリスが悪だとカイルが思わなければ、協力してもらえないってことさ。」
「わかった!カイルくんにアリスさんを悪い人だと思ってもらえば良いのね!得意よ!任せて!」
私には出来るもの。お父さまの時と同じよ。
嘘はつかないで、本当のことを少しぼかして一番可愛い顔で悲しげに言うだけ。
「アリスさんが怖いの。」
嘘じゃない。アリスさんがいるせいで、私は愛人にしかなれないかもしれないんだから、アリスさんの存在はとても怖い。
思った通り、カイルくんはアリスさんを悪だと信じた。
良かった、これで私はアランのお嫁さんになれる。
本当のお姫さまになれる。