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ハッピーエンドのそのまえに  作者: 桜井ゆきな


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心弱き王子の再会

サシャが死んで、アルーシャを王宮から追い出して、アリスに王妃教育をするようになってから母様は憑き物が落ちたかのように穏やかになった。

他の側妃にも子供はいたが、忌々しい光魔法の使い手ではなかったので、王妃である母様の一人息子である僕には脅威ではない。

僕が国王になることは確実な未来だ。

そして母様は自分の教えをいつも真面目に聞いてすぐに吸収する、優秀で、何より自分の話を一生懸命聞くアリスの姿が可愛くてたまらなかったようだ。

「アランの人を見る目は確かじゃ。よくぞ婚約者にアリスを指名したのぉ。」


アリスを婚約者に指名してから5年が経つ頃には僕は、「アリスは僕のことを好きなのだ」と思うようになっていた。

自分からは僕に話しかけることはなかったけれど、僕が話しかけるといつも笑顔で答えてくれた。

その笑顔は最初に作り笑いだと感じた笑顔と同じだったけど、アルーシャに向けていた笑顔は僕の見間違いだったんじゃないか?

僕に見せている笑顔がきっとアリスの本当の笑顔なんだ。

でなければ僕のためにこんなに必死に王妃教育を受けるはずがない。

アリスは僕のことを好きなのだ。

アリスの泣いた顔が見たいとは、もう思わなくなっていた。


学園に入学してアルーシャを見つけた時に最近では忘れていた暗い冷気が自分の中に流れ込んでくるのを感じた。

なんであいつがいるんだ!

男爵家で惨めに一生暮らしているはずのあいつとはもう会うことはないはずだったのに!

名門の学園で、名誉ある魔法学の教師に最年少で抜擢されただと?

ふざけるな!

「母様!アルーシャは光魔法を使っていましたよ!すぐに処刑をしなくては!」

僕はすぐに母様に報告したが、母様は穏やかに笑われただけだった。

「アルーシャは光魔法は使うておらん。通常魔法だけで教師をしているのじゃ。ルーカスに調査させておる。

学園にはアルーシャの過去を知っているものは学園長くらいしかおらぬ。髪の色も瞳の色も変えたあやつはもはやただの男爵家の魔法学教師なのじゃ。」

母様にとってアルーシャはすでに脅威ではなく、興味さえも失いかけていた。

くそっ。

更に学園にはもう一人の光魔法の使い手であるカイルもいた。

ルーカスは僕には光魔法は覚えられないと言っていた癖に息子はちゃっかり光魔法の使い手じゃないか。

カイルが生徒に囲まれて虹を出しているのを見かけるたびに腹がたった。

どいつもこいつもアホじゃないか?虹なんか出されたくらいでキャーキャー騒ぎやがって。

救いだったのは、婚約者のアリスだけはカイルの光魔法に群がらなかったことだ。

やはりアリスは僕のことが好きなのだ。


だけど、アリスとアルーシャが話しているのをたまたま見かけた。

アリスは、初めて中庭で見かけたときと同じ笑顔をしていた。

僕には見せたことのない笑顔を。


やはりアルーシャは消さなくてはいけない。


サシャの死を願ったときと同じように僕はアルーシャの死を願うようになった。

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