表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら人外でした  作者: マウイン
6/6

五話:これからのこと

 

 「はぁ……疲れた」


 あれから女物の服を着せられたまま、魔王城の案内と各施設の使い方を教えてもらい、あてがわれた部屋に到着した所だった。


 魔王城の客室であるこの部屋は最近は使われていなかったそうだ。一人で居るには大きすぎ、調度品などに豪華な装飾が施されていて萎縮してしまう。


 部屋にはベッドの他に椅子が数脚と机、それにクローゼットと姿見や暖炉があり、壁掛け時計の振り子が規則的に揺れていた。どれも埃は被っておらず手入れは行き届いていたが、何か仕掛けられていないか探し回ったが、何かを見つける事は出来なかった。


 最後に探した姿見の前でそこに映る自分の姿に大きな溜め息を吐く。


 「本当の女の子みたいじゃないか……」


 前世の同じ様な年齢の頃と比べてもこんな中性的な顔はしていなかったと思うし、華奢な身体でもなかった筈だ。柔らかな髪に張りのある肌、華奢な身体に年相応の短い手足。そして不安感と共に確認を行ったが男の物は無かった。というより生殖器が存在していなかった。初めは驚いたものだが、そういうものなのだと納得してしまえば気にはならなかった。


 ベッドに潜り込みこれからの事を考える。魔王を殺す為にどうすればいいのか、何をすればいいのか。様々な事を考えるている内に欠伸をしてしまう。


 (色んな事があって疲れたからかな……)


 睡魔に抗おうとするも徒労に終わり僕の意識は深い水底へと沈んでいった─────




 (ん……)


 暑さで目が覚めると周りは暗闇だった。まだ夜なのかと思ったがどうも違うらしい。布に包まれている感じがするのだ。


 (魔王の罠か!)


 必死に抵抗しようと手足をバタバタと暴れさせるが微動だにしない。


 (僕の命もここまでか……)


 諦めようとした瞬間、視界が晴れやかになり光が差し込んできた。その眩しさに目をしかめつつも、誰かがそこに立っているのが確認出来た。


 「何をしていらっしゃるのですか?レオル様?」


 バサリと僕を覆っていた布を捲り不思議そうな視線をターニャが向けてくる。どうやら僕を覆っていたのは掛け布団のようだった。恥ずかしさで悶絶している内に《変化》が解けている事に気付いた。


 (だから掛け布団に覆われていたのか)


 ベッドを直し終えたターニャがこちらに近付いてきて急に僕の事を抱き上げた。


 「あちこちに寝癖が付いておりますので、失礼します」


 どこから取り出したのか知らないが櫛を構えてこちらを見据えているターニャ。


 数分後。

 あまりの気持ちよさに床に伏せてビクビクと震えて腰砕けになってしまいました。


 (魔王の手先め、卑怯な……)


 まず絡み合っている毛を解し、そこから櫛を入れ初めたと思ったら的確にツボを刺激してきて、出したくもないのに艶声が出てしまう程だった。多分だけど尻尾もブンブン振っていた気がする。


 気持ちよさと不覚をとったという気持ちが僕を襲っているがこちらの事はお構い無しにターニャが僕を再び抱き上げて、


 「魔王様がお待ちですので失礼しますね」


 と運ばれる形で部屋を後にした。抵抗を試みたがガッチリと抱かれている為脱出は困難だったと言っておこう。廊下を歩いていると視線が痛かった。メイド姿の頭に角の生えた魔族や肌の青い魔族などの多くの者の視線が突き刺さるのだ。中には撫でさせて下さいと頼み込んでくる者までいた程だ。もちろん拒否したが。


 昨日ぶりの魔王の私室の扉が見えてきた。ターニャがノックをして入室許可を得てから入室する。


 執務机に座り傍らに積まれた書類の山を片付けていた魔王がこちらに視線を向けてくる。昨日よりは露出の少ない服だったが、お腹は出ているし谷間が見える菱形の穴まで空いている服を着ていたので思わず顔を逸らしてしまう。


 「ご苦労だったターニャ。レオル、昨夜はよく眠れたか?」


 まじまじと見ない様に視線を逃がしつつも首を縦に振り肯定の意を示す。


 「そうか、それは良かった。《変化》が解けているようだが魔力切れか?ターニャ」


 「ええ、おそらくスキルを解除しないで眠りについたのでしょう。そのためかと」


 「なら……レオル、これを食え」


 執務机から立ち上がり傍らに置かれていた軽食だろうかデザートだろうか、果物を差し出してきた。拒否したかったが断面の瑞々しさと鮮やかな赤色の果皮が食欲をそそらせる。


 恐る恐る一口食べるとシャリシャリした食感と爽やかな甘味が口内を満たした。あまりの美味しさで差し出された分を食べ終えているのに気が付かなかった程だった。


 「ふふ……気に入ってくれたみたいで嬉しいよ。私もこのアプリルの実は好物でな」


 笑顔になりながら二つ目を差し出してきた魔王。今度こそ拒否しようと思う心とは逆に身体はこの果物を求めてしまい、二つ、三つと次々と食し、皿に乗っていた分を全て食べてしまった。


 「このアプリルの実は手軽に魔力を得られる便利な物でな。これで《変化》に使う分の魔力は確保出来ただろう」


 『スキル《変化》の完全掌握が完了しました。所有権をターニャからレオルへと変更します』


 また脳内に響いた女の声。


 スキルの所有権の完全掌握?変更?


 一体どうなってるんだ?この宝石獣¦《からだ》は?


 「魔王様、大変申し訳ないのですが……スキルを発動させられません」


 「なに?……もしや……」


 机に置いてあった古い本をパラパラと捲り、あるページをこちら側に向けて指差した。


 記述されていたのは宝石獣の生態について。


 その記述には宝石獣はスキル、魔力、魔法に対する力に秀でていて、真似出来るものは全て真似出来たらしい。


 


 

 

 


 


 




  


 


  

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ