一話:てんせいしちゃいました!
(んん……)
目を覚ますして辺りを見渡してみる。
(ここはどこだ……?)
眼前に広がる木の数々、密集して茂っている為か陽光を僅かしか透さず鬱蒼としている。それなのに自分の寝ていた所にだけ暖かい陽の光が降り注ぎ、心地良い場所となっている。
顔を上げて見れば木々の枝が不自然な形で曲がっている。まるでこの場所にだけ光を落とそうと意思を持っているかのようにも思えた。
(何故こんな場所に?)
先程までの記憶を脳の引き出しから呼び覚ますと様々な事を思い出した。魔法学校に落ちたこと、露店のおじさんに元気付けられたこと。そして、馬車から女の子を助け命を落としたこと。
あの女の子は無事だった筈だ、それだけが救いであった。二人共に命を落としていたらと考えると背筋が震えた。
しかし、自分は王都に居たはずだ。こんな森の奥に一瞬で移動出来るはずもない。一体何が起きているのだろうか。
(ここでジッとしている訳にもいかないしなぁ……)
頭の中はパニック状態だが先ずは動こうと決意し、起き上がるが不自然な事に気付く。何故か二足では立てず四足で立っている状態なのである。
更に目線の位置が大分低い、うつ伏せに寝転がって顔を上げた時の目線と似通っている。
そして、視界の下の方には灰色の獣の右前足が見えている。下がろうとすると獣の足は消え、前に出ようとすれば視界に現れる。
(もしかして、僕の足か……?)
そうであって欲しくないという考えを思考の片隅に置いておきながら、近くに人がいるかどうか声を出してみようと思い、力の限り大声を出す。
「キュー!!!(誰か居ませんかー!!!)」
確定した。そうであって欲しくないという願いは粉微塵にされてしまった。甲高い鳴き声、灰色のフカフカの毛並みに四足歩行と来れば最早確定的であろう。
(動物になっちゃってる!!!)