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1.青と赤

 空港にあおが乗る宇宙船が到着した。

 青は宇宙船を降り直ぐ傍にある入り口で荷物を受け取ると人込みに揉みくちゃにされながらも出口に向かって歩き始めた。

 そして、ゆっくりと目線を自分と同じ黒髪で平凡な顔と同じような身長の娘のあかとそれとは対照的に綺麗な赤茶の髪と美しい顔の義理の息子になるはずのジョーという高身長の男を捜した。


 出口を出て少し歩くとさらにそこは人であふれかえっていた。


 見つからないかしら。


 思わず不安な思いが浮き上がって来たところでその人ゴミの中から頭一つ飛びぬけた赤茶の髪のガッシリした青年を見つけた。

 そちらに向かって歩き始めると黒い髪に黒い瞳をした自分と同じような姿の女性がこちらに気づいて、走り寄ってきた。


「ママ!」

 青はニッコリ笑って、娘に駆け寄った。二人はお互いの体に腕を巻き付けてしっかりと抱き合った。


「赤!」

 青は体を少し離して娘の顔をまじまじと見つめるとにっこり微笑んだ。

 しばらく抱擁を交わした後、娘は青い瞳の青年に目線を送ると彼女に改めて彼を紹介してくれた。


「ママ、ジョーよ。」

 青は義理の息子に目線を向けると娘を離しゆっくりと向きを変えるとがっしりとした青年を抱きしめた。


「あなたが私の義理の息子になるのね。」

 ジョーは最初ビックリしたように体を強張らせていたが一つ息を吐くと彼女を抱きしめ返して低い声で話始めた。


「僕が赤の夫になるジョーです。会えてうれしいです。」


 青はゆっくりと背の高い義理の息子を仰ぎ見るとニッコリとほほ笑んだ。

「こちらこそ嬉しいわ。でもあんまり抱きしめていると娘に殺されそうね。よかったらどこかでゆっくり美味しいものを食べながらじっくり話がしたいんだけどいかがかしら?」


 ジョーは義理の母を離すと赤の腰を抱き寄せて彼女の持っていた荷物を持つと歩き出した。

「僕もその意見に賛成です。あっちに車を止めてありますのでどうぞ。」

 青は二人が歩きはじめると娘である赤の腕を掴みながらゆっくり歩き始めた。

「二人で引っ付いて歩くのに文句を言うつもりはないけど私が宇宙船に乗って母国に帰るまで知らないところに放置しないで頂戴。この星の言葉も話せないし迷子になっちゃうわ。」

 青が絡めた腕に赤は力を入れると微笑んでいても少し不安そうな顔の母を見た。

「もちろんよ、ママ。ママをここに置いて行ったら何かの事件に巻き込まれるか、回れ右して母国に帰っちゃうかのどちらかだもの。」

 赤は真剣に母親の顔をマジマジと見つめた。


「ところでママ。いったいどのくらい休みをとったの?」

「一か月よ。」

「一か月!!!」

 青は何をそんなに驚くようなことなのかと言う顔をして娘を見た。

「ママが一か月も仕事を休むなんて信じられないわ。どうして? まさか、一か月もこっちにいるつもりなの?」

 青は娘が何を考えたのか察してニヤニヤと笑った。

「大丈夫よ。二人の邪魔はしないわ。こっちにいるのはあなた達の結婚式が終わるまでのつもりだから四日間の予定よ。もっとも式が終わってすぐに空港まで誰かに送ってもらえるなら三日間になるかもしれないけど。」

「ママ。別に早く帰ってほしいわけじゃないわ。」

 赤は心外だと言う顔で母を見た時、そこはちょうど駐車場に停めてあった車の前だった。


「違うの?」

「もちろん違うわ。ただ、ママはこっちの言葉を話せないでしょ。私達がいない間どうすればいいか心配なだけよ。」


 ジョーは荷物を詰めながらも何も言わずにしばらく二人の会話を聞いていたが徐に口を開いた。

『赤。そのことだけど・・・。』

『なにジョー?』

『提案なんだがちょうど親父が休暇をとっているんだ。だから・・・、俺達がいない間は親父に君のお母さんのガイドをさせるよ。』

『えっ、でも、あなたのお父様って確か社長さんよね。』

『ああ。だからだよ。君のお母さんの国の言葉もわかるし観光ガイドも問題ない。』

『大丈夫なの?』

 不安な赤にジョーは力強く頷いた。


「あら、なによ二人とも。いきなりこっちの国の言葉で話を始めちゃって、わ・た・し、お邪魔かしら。」

「違うわママ。私たちがいない間のガイドを彼の父親がやってくれるって話よ。」

「あら、それは嬉しいけど結構よ。宇宙港に送って貰うだけで十分だわ。」

「ママ!」

「だって気を使っての観光ガイドなんていらないわよ。それなら一人でホテルにでも残って本でも読んでるほうがいいわよ。」


 そうだった。

 ママって極度の人見知りだった。


「でも彼の父親なのよ、ママ。」

 青は娘の意見に大きな溜息で答えると本当に嫌そうな声で答えた。

「そうだったわね。」

 青はしばらく考えてから娘に向き直った。

「わかったわ。じゃ、一日だけお願いするわ。」

「ダメよ、五日。」

「二日。」

 二人は、車の前で睨み合った。

「じゃあ三日ね。」

「ありがとう、ママ。」

 赤は母に抱き付くと隣にいたジョーに促され車の後部座席に母親を座らせると自分も助手席に座った。


「それじゃ、今日宿泊するホテルに向かいますね。」

 ジョーは二人に魅力的な笑顔で声をかけると座席の補助ガードを降ろしてやっと車を発進させた。


「ええ、お願いします。」

 青は娘の夫となる義理の息子の魅力的な笑顔に一瞬ドギマギしながらも笑顔でお礼を言った。


 ホント、イイ男って心臓に応えるわ。


 三人を乗せた車はまっすぐホテルに向かった。

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