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82部

「どうするんですか?『秘政会』はもう隠れ蓑にできませんよ。」

「小谷さんは相変わらずですね。

 使えないのなら、新しいところを探せばいいし、自分で作ってもいい。

なんなら、もう隠れる必要もないでしょう。あんなにはっきりと僕らの存在を全国区のテレビで紹介されてしまったんですから。」

 この影山秀二という男がわからない。確かにこいつには『秘政会』への思い入れも、自分が境地に立たされているということもないのだから当然と言えば、そうなのかもしれない。

「そんなに難しい顔しないでくださいよ。

小谷さんからすれば、尊敬する山本信繁さんから引き継いだ大事な組織だったのかもしれないですし、創設時の山本さんの意思に基づいて政治家を見張り、都度都度で政治家の汚職やスキャンダルを公にして来たあなたからすれば、このような事態は受け入れられないかもしれません。

 でも、古きを知らずに新しきを始めようとしてきた奴らによって、既に『秘政会』は死んでいたんですよ。」

「殺したのは君だろう?」

 影山はうっすらと笑顔を浮かべて、

「タマゴって、一般人が外見を見ても、大丈夫なのか腐ってるのかわからないですよね?

それと同じですよ、組織としての体裁が保たれているからと言って、中身が大丈夫かなんてわからないんですよ。実際に政界と呼ばれる組織は中身がグズグズに腐っていたのに、日本という国は今も正常に動いているように見えているんですから。

 僕はただ教えてあげただけですよ。『あなたらの中身は腐ってるんだ』ってね。」

「その腐った政界にいた黒木議員の処理はどうするんですか?」

「怖いこと言うんですね。黒木さんは仲間ですよ?」

 影山の態度は明らかに小谷を馬鹿にして遊んでいると言った感じだ。小谷はその雰囲気を感じ、

「黒木が北条総理につけば、あなたのその立場も危うくなるんじゃないですか?」

「大丈夫ですよ。黒木さんは銀行強盗の時に4億円懐に入れてますし、簡単に自分を犯罪者にはしない人です。僕のことを世間に公表してしまえば、自分のしたことも認めなくてはいけない。

 黒木さんには僕と心中するには手放せないものが増えすぎてしまったんですよ。」

「しょせんはあいつも『政治家』だったということですか?」

「まあ少し違いますけど、そういうことにしておきましょう。

 問題は彼が試験に落ちて『政治家』で無くならないかということだけでしょうね。」

「そんなこと起こるわけがないでしょう。あいつが優秀なことは既にわかってますし、何より叔父である黒木雄二の存在があれば、いくらでも手は打てるんじゃないですか?」

「黒木雄二ですか・・・・・・。

彼にもそろそろ退席して頂きましょう。老いぼれがいつまでも上にいたのでは頭打ちになりますから。それに警察もあの人のことには気付いているんじゃないかと思います。」

「・・・・・・そうですか。とりあえず、私はしばらく海外に身を隠します。

今回のことで山本勘二警部と接触しましたし、これ以上私ができることはありませんから。」

「そうですね、お疲れ様でした。よい休暇を。」

 影山は笑っているが、私を無事に海外に逃亡させる気などないことくらいわかっている。人通りの少ないところで殺されるだろうと思っていると、

「大丈夫ですよ。小谷さんには色々お世話になりましたから、殺そうなんて思ってません。

小谷さんが帰って来た時には、日本が大きく変わっていることをお約束しますよ。」

「私に帰ってきていいというとは思ってなかったですよ。」

「僕にとって不都合な存在は消しておきたいと思いますが、小谷さんは邪魔かもしれないけど、不都合な存在ではないですから、安心してください。

 僕は最も不都合な存在をどうやって消すかを考えるのに精一杯なので、小谷さんくらい見逃してあげますよ。」

「その『不都合な存在』というのは山本警部ですか?」

 影山は首をかしげて、

「なんであの程度の人が不都合になると思うんですか?

 あの人も黒木さんも僕の掌で踊る人形なんですよ。僕が操っているだけの人形を不都合に感じるなら、新しい人形に変えるという手もあります。

 残念ながら『その人』は僕の掌から見事に逃げていった人なんですよ。」

 そう言った影山の顔は真剣に『その人』を煙たがっているという顔であり、その中に少しだけだがその人への尊敬のような念もこもっているように小谷は感じ、余計にこの男が怖くなった。

「それでは、私はこれで失礼するよ。」

 そう言って、小谷はそそくさと去っていった。影山はそんな小谷を気に留めるでもなく、

「やはりシンプルに・・・・・・・・」

 と呟いて、ニヤリと笑った。


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