8部
「それで、見つかったんかその男は?」
竹中が山本に聞いた。別れて捜査してから三日が経って、それぞれの捜査状況の確認を終えたところだった。
「残念ながら、佐和田と名乗る男の身柄もどこに所属する記者なのかもわかりませんでした。」
山本が言い、上田が
「もしかしたらこの『佐和田』って名前も偽名なのかもしれませんね。」
「ほんで、USBの内容と週刊誌とかの内容はどうやったんや?」
竹中の問いに答えたのは、藤堂だった。
「見事なまでに一致しました。これらの週刊誌はこの佐和田と名乗る男が書いたものである可能性が高いですね。」
「佐和田という男が、週刊誌を見て全く同じ内容を保存するために打ち込んだ可能性はないの?」
今川が聞き、藤堂が
「それはないと思います。
データの作成日が、どのデータも週刊誌の発売2週間前になってますから。」
「出てもない週刊誌の内容を書き写すことはできないから、書いた本人の可能性が高いということか。」
三浦が言い、藤堂が短く「はい」と答えた。
「ということはやで、この佐和田って男が、週刊誌の記事のすり替えを行った人物ってことやろ?」
「竹中さん、その確認は取れたんですか?」
「どこの会社も自分らのスクープやと。」
「じゃあ、すり替え自体が証明できないので、佐和田が犯人と決めるのは難しいですね。」
「他にわかったことがある人は?」
上田が聞き、三浦が
「イタズラに関してなんですけど、投げ込まれた石の特定が難しく、手ごろそうな石を集めて、鑑識に依頼しましたけど、量が量なので時間がかかるそうです。
電話の方は、特定できたものもあれば、公衆電話からのものもありました。
特定した者に関しては、話を聞いてもらってますが、ほとんどが週刊誌を読んで議員辞職しろと脅すためにやったということで、脅迫罪で捕まえてもらってますが、一人一回多くて2・3回なので、書類送検で不起訴になる可能性の方が高いということです。
公衆電話のものは、近くの防犯カメラから使用者を割り出すために今映像を集めてるところです。」
「どうしたんだ三浦?今回仕事がめちゃくちゃ早いじゃないか。」
上田が楽しそうに聞き、
「別に今回に限っての話じゃないですよ。どうですか警部?」
「ああ、よくやったな。また調べものができたら頼むから、公衆電話の使用者の割り出し頼んだぞ。」
「はい、頑張ります。」
「他は?」
三浦の勢いに負けながら山本が聞いた。
「自殺した奴らやけど、永田町内では常に噂になってる人物やったみたいで、官僚もほとんどそいつらには近寄らへんし、何か頼まれても全部後回しで実行することの方が珍しいくらいやったらしい。」
「献金絡みの事案だったってことですか?」
「そうなんちゃうか。最近もあったやろ議員のお友達の会社が優遇されたんちゃうかってのが。
そういうので今は官僚さん方もドタバタやし、自分らのところで面倒な問題起こさんためにも、はじめから黒い噂のある議員には関わらんようにしてるみたいやで。
自殺者の共通点は、まず国会議員であること、週刊誌報道で悪さが明らかになって家に引きこもっとったこと、過度なイタズラを受けてたことくらいやな。」
竹中が言い終わると加藤が
「現場見てきましたけど、イタズラで済まされるものじゃなかったですね。
窓はほとんど割れてましたし、壁にはペンキとかスプレーで落書きされてましたし、庭にあるオブジェみたいな物も壊されてました。
立派な器物損壊、現住建造物損壊事件でしたよ。」
「そこまでひどいとなると、自殺したくなるものなんですかね?」
藤堂が言い、上田が
「少なくとも、そこにはいたくないと思って、家は出るよな。」
「共通の恨みを持ってる人間とかはいなかったんですか?」
山本が聞き、竹中がため息をついて
「そんなんおったら、もう捕まえてきてるやろ。
共通で怒ってる人間がいるとするなら、週刊誌読んだ国民すべてとちゃうか。」
「確かにそうですね・・・・・・」
山本が言ったところで電話が鳴り、藤堂が出る。
「警部、緑山学院大学の石田さんという方が警部にお話があるということなのですが、どうしますか?」
山本はその名前を聞いて思い当たる人物の顔が浮かび応えようとしたところで竹中が
「警部ってどっちのや?」
「竹中さん、今その話はいいじゃないですか。」
今川が言い、竹中が
「あかんやろ、皆に言っとけや。それで藤堂、どっちのや?」
藤堂は意味がわからないと言った感じで首をかしげてから
「山本警部です・・・・・・」
「竹中さん、言いたいことは後で聞きますので、今はちょっと待っててください。
藤堂、俺はいないと言え、ついでにこの課にもいないと言っとけ。」
「えっ、いいんですか?」
「ああ」
藤堂は電話に向かって言われた通りに伝えていた。
「それで、竹中さんどうしたんですか?」
「ちゃうねん。この前な今川と大谷には言ったけど、俺も警部なのにお前だけ警部って呼ばれるのはおかしいやろ、そこでこれから山本のこともみんなで『山本さん』って呼ぼうって言ってたんや。ええやろ?」
「まあ、俺はそれでいいですよ。何なら、俺は竹中さんのことを警部とお呼びしてもいいですけど?」
「それはあかんな。お前のそれはバカにしてるように聞こえるから。」
竹中が笑顔で言ったところで、藤堂が困った顔で、
「山本警部、電話のお相手の石田さんが声が聞こえてるから出せと仰ってます。」
「やっぱり無理だったか・・・」
山本はそう言って立ち上がり電話に向かった。




