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7部

「何ですか、それ?」

 藤堂は上田にUSBを見せた時のように聞き、上田が

「同窓会の戦利品なんだってさ。」

「同窓会じゃないし、まだ何が入ってるのかもわからないだろ。」

 山本が言うと藤堂が

「何か重要な情報でもあるんですか?この事件に関連して。」

「いや、わからないけど、渡してきた本人が切羽詰まってるようには見えたからな。それにこれだ。」

 山本はそう言って、くしゃくしゃの紙を渡した。

「えっ、これってその場で保護しといた方がいいんじゃないですか?」

「そう思って、戻るともういなかったんだよ。」

「じゃあ、とりあえず、トラップとかはないみたいですし、開けてみますね。」

 上田はそう言ってパソコンを操作して、USBのファイルを開いた。

「えーと、中にあるのは・・・・、日付付きのファイルが何個かと、写真って名前のファイルが4つですね。」

「とりあえず、一番新しい日付のファイルを開けてくれ。」

 山本が言うと上田は操作して、ファイルを開ける。

「『稲川議員の黒い噂』・『金で心を売った政治家』ですか。なんかきな臭い題名ですね。何かの記事でしょうか?」

「新聞社の記者だから、こんな記事書いててもおかしくないでしょう?」

 藤堂が言い、山本はこの『稲川議員』が気になって、

「上田、この『稲川議員』ってやつを開いてくれ。」

「何か引っかかったんですか?」

「この稲川って議員、さっき竹中さんが持ってた資料に名前があった。

自殺した議員じゃないか?」

上田はパソコンを操作して、『稲川議員の黒い噂』を開ける。

「え~と、『稲川議員は某大手薬品メーカーから、多額の政治献金を受け取り、さらに裏帳簿を作成して、裏金作りをして、およそ3億円近くを脱税していることが判明した。その裏帳簿のコピーと経理担当者S氏の証言を得ているため、この件については噂で済まされる問題ではない。

 独自に入手した裏帳簿のコピーであるため、警察にもまだ知られていない内容を本誌が独占入手した。』って書いてありますね。竹中さんの資料を僕は見てないので、わからないですね。藤堂、竹中さんに確認して来てくれる?」

「わかりました。」

 藤堂は少し離れて電話をして、戻ってきて、

「警部の言った通り、自殺した国会議員だそうです。」

「じゃあ、これはもしかして、今回の事件で追い込まれた議員とかの記事がまとめられたものってことですかね?」

 上田が言い、山本はパソコンの画面上を確認していると、気になったものがあり、指差して、

「上田、これ。」

 上田は山本の指先を確認する。

「音声データみたいですね。再生しますね。」

『あ、あの。これ大丈夫ですよね、私が情報を漏らしたことがばれるなんてことないですよね?』

『ええ、大丈夫ですよ。紙面上では私、佐和田の頭文字のSを使って、経理担当S氏で載せておきますから、河東さんには迷惑がかからないようにしますので。』

『そ、それでも、あなたはうちの経理じゃないですから情報の信用性に欠けるじゃないですか。それはどうなんですか?』

『大丈夫ですよ、あなたの職場には都合よくS氏が何人かいますから、信用してもらえるはずです。少なくとも河東さんには迷惑はかかりません。』

『じゃあ、いいですけど。稲川先生から少なくとも3億円以上のお金を帳簿を別にして、管理するように言われました。

主に大手の薬品会社からの献金を少なく見積もって、その差額を裏金にするように先生本人から指示されました。』

『その裏金は今どこにありますか?』

『さあ、お金は全て先生自身が持ち帰られていたので、保管されている場所等はわかりません。』

『そうですか、ありがとうございました。これは少ないですが謝礼金です。

これを機にギャンブルはやめることをお勧めしますよ。』

『くっ、あなたには関係ないでしょう。』

 音声が終了して、上田が

「あれ、これって、この佐和田って男が取材してる録音ですよね?

 ということはですよ、記事を書いたのも佐和田であって、週刊誌の記者じゃないですよね?」

「この記事がどこに載ってたかは調べられるか?」

 山本が聞き、上田が

「いや、ちょっと今はわからないですね。」

「じゃあ、それはとりあえず後回しだ。他のデータを確認しよう。」

 そう言って、山本達はデータを一通り見た後で、山本が

「これは佐和田の身柄の保護が必要だな。」

「ええ、ここまでの情報を一人で集めていたなら、他の国会議員についても情報を持っている可能性が高いですし、命の危険があるのは間違いないですね。」

「それに、このデータのほとんどが今回の事件で自殺した人関連の情報でしたから、犯人と繋がってる可能性もありますね。」

 藤堂が言ったところで、山本は電話を手に取り、佐和田から渡された紙を見て電話番号を押す。ただ、コールすることなく留守番電話になる。

「くそ、繋がらないぞ。」

「緊急手配しますか?」

 上田が聞き、藤堂が

「でも、取材中で電話に出れないだけかもしれないですし、大事にしすぎても・・・」

「藤堂の言うことも一理あるが、命の危険を感じてたやつが、のこのこ取材してるかって話だろ。上田、要請を頼む。無事ならそれでいいからな。」

「わかりました。」

 上田が走って出て行き、山本は藤堂に向かって、

「藤堂は、まずこのデータを他のUSBにコピーしてくれ。それが終わったら、今回の事件に関係する週刊誌や新聞などを集めてくれ。」

「警部はどうされますか?」

「上田が戻ってきたら、新聞社を回って、佐和田がどこの記者かを探す。

また何かわかったら連絡をくれ。じゃあ頼んだ。」

 山本はそう言って足早に部屋を出て行った。


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