6部
「どう思う加藤?」
「どうって何がですか?」
三浦と加藤も自分達の捜査に向かう移動中に、三浦が聞いた。
「警部は何かいつも面倒な捜査は全部俺にやらせてるんじゃないかと思うんだよ。」
「いや、そんなことないですよ。実際に三浦さんが調べたことがきっかけで捜査が進んだこともありましたし、重要な捜査は他の誰でもない三浦さんに頼もうって感じなんじゃないですか?」
「いや、警部はまだあのことを根に持ってるんだ。だから、俺に大変な仕事ばかり振るんだ。そうに違いない。」
「何かあったんですか?」
加藤がさすがに三浦のことが心配になったので聞いてみると、三浦も答えるべきか考えているようだったが、
「実はさ、警部って無茶な捜査ばっかりするし、単独で勝手に動いて、上層部に怒られるなんてよくあったんだよ。だから、警部を監視する役目の人が今までに何人かいたんだよ。」
「三浦さんもそうだったんですか?」
「いいや、その時の監視役は上田さんだったわけだよ。」
「じゃあ、何で三浦さんが嫌われるんですか?」
「俺の仕事は、警部ってなんていうのかな・・・、カリスマ性みたいなものがあって、よくない言い方すると『警部に毒される』みたいな部分があって、監視役の人が警部のやり方を認めてないかをさらに監視する役が俺だったんだよ。」
「それはそれで大事な仕事だったわけですよね?」
「大事だったんだけどさ。監視役の人は正々堂々私は監視してますって感じで警部に接するから、警部もその人が悪くないことは知ってるんだけど、俺の立場は警部にその役だってばれないようにしないといけなかったわけだよ。
要するに内緒でずっと監視してたんだから、印象はよくないってことだよ。」
「それがばれたんですか?」
「そうだよ、ばれた瞬間から俺はずっとパシリのように使われてるわけだ。」
「大丈夫ですよ、パシリに重要な捜査なんてさせるわけないじゃないですか。
きっと信頼してるからこそ、大変な捜査を任されてるんですよ。」
「そうかな?」
「そ、そうですよ。
さっさと結果を出して警部に褒めてもらいましょう。」
「まあ、加藤がそこまで言うなら、そうなのかもしれないな。」
「えっ、あ、ありがとうございます?」
「よし、上田さんより役に立ってみせるぞ。
まずは、事件のあった所轄の鑑識に投げ込まれた石について調べてもらう事と、通信記録の取り寄せ、あとは・・・・・・」
三浦が急にスイッチが入ったように捜査内容を話始めたので、加藤は驚いた。
先ほどのうじうじ言っていた人物とは同一人物に見えないほどの集中力で、捜査に必要なことが何かを考えているようだった。
「よし、加藤。お前は鑑識に行って石の捜査に関して依頼してくれ、俺はその間に通信記録の開示請求と自殺者の全住所の確認を済ませておくから、鑑識から戻ったら、合流して、自殺現場を実際に回って、石探しだ。 そっちが終わったら電話してくれ。」
三浦はものすごいスピードで、廊下の奥へと消えていった。加藤は自分が山本警部の立場だったとしてもあの人は絶対に重用するだろうと思って、鑑識に向かった。