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59部

「全然アカンやんけ。」

 竹中が怒りと諦めが混ざった感じで机をたたいた。

「竹中さんの気持ちもわかりますけど、落ち着きましょうよ。」

 今川がなだめるように言うと横から三浦が

「そうはいっても、4人のうち3人が住所不定で連絡のしようもない状況。

唯一、住所がわかった西川もここ数日家族ですら連絡が取れないような状態。

竹中さんがああなるのもわかる気がするよ。」

 三浦はそう言って大きくため息をついた。竹中が

「こんなもん、『犯人は自分達です』って言ってる奴らを野放しにしてるんと変わらへんからな。」

「確かにそうですが、現在色んな線から居場所の特定は進めてるわけですし、山本さんも動いてるみたいですから、何か収穫を持って帰って来るんじゃないですか?」

 今川が言い、竹中が反論しようとしたところに大谷が入ってきて、竹中の怒りの矛先が大谷に向く。

「おい、大谷。いつになったら信号のカメラが使えるようになんねん?」

 いきなりの大きな声での質問に大谷は自分が何か気に入らないことをしたのかと一瞬考え、質問の内容にどう答えようか悩んでいたところで三浦が

「ちがうぞ、大谷。別にお前を責めているわけじゃなくて、たまたま、竹中さんの機嫌の悪いタイミングでお前が入って来ただけだからな。」

 大谷は三浦の言うことを聞いて安心したのか落ち着いた感じで、

「法務省側からの文句が多くて実用化できないという話はこの前しましたよね?」

「そう言えばそんなこと言ってたな。」

 竹中が言い、大谷が続けた。

「実はこのカメラの実用化に強く反対しているのが法務省の矯正局の『姫地』という人らしいんです。前科もちの方たちの行動を監視するようなことになるので更生に影響を及ぼす可能性があると言って、カメラの捜査への実用化には猛抗議してるみたいです。」

「その人って聞いたことありますね。確か山本さんが法務省に調べもので行った時にあった人じゃないですか?」

 今川が言い、大谷が

「そのようですね、山本さんが確か保護司関係の話を聞きに行った時に対応した職員だったと聞いてます。」

「そんなやつ一人が反対してるからって実用化できんもんなんか?」

 竹中が怒りが振り戻って来たのか声を荒げて言うと大谷が

「何か別に嫌なことでもあったんですか?」

「別にないは。すまんな話が続かんで俺の怒ってるんは無視してくれ。」

「わかりました。

では、この姫地という人ですけど少し前までは目立った功績とかもなかったんですけど、ここ最近で多くの実績を残していて、出世街道に乗っているようです。

 その影響もあって、今、姫地に逆らうのは将来的に・・・って感じの雰囲気があるみたいです。」

「出世しようとしてる人のご機嫌をうかがって、警察と事を構えようってこと?」

 三浦が驚いて聞くと、大谷が

「最近の警察の不祥事、特に『坊ちゃん狩り』で多くの警察官の退職があったので、信頼回復がまだ徹底できていない中で、国の治安維持を警察に任せておけないと考えている法務省の官僚も多いようです。

 そういう人達と警察庁の次席が対立しているので、そのへんの影響もあってということでしたけど。」

「まだやっとんのか。実用化は無理かもしれんな。

山本達の動きに期待するしかないわけやな。」

 竹中が言ったところで、黒田が出てきて、

「竹中さん、総監が御用があるのですぐに総監室に来て欲しいと言っておられます。

至急向かってください。」

「めんどくさいな。でも、トップから呼ばれてもたらいかなしゃあないしな。」

 竹中はだるそうに立ち上がって部屋から出て行った。

「どうしたんですかね?竹中さんの様子がずっとおかしかったですよね?」

 今川が言ったところで、黒田は課長室に入り小さくつぶやいた。

「もう時間がないのかもしれない・・・・・・・・・・・」


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