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57部

 暗い路地裏にロープで縛られたスーツ姿の男が二人座らされていた。その男二人を囲むように大柄の男とインテリヤクザを思わせるような男が立っている。

 そこに電灯のない暗い道からもう一人男が近づき、大柄の男に向かって、

「おうコージ、調子はどうだ?」

 大柄の男は険しい顔をしていたが、歩いてきた男を見ると笑顔になり、

「ああアニキ、ご苦労様です。順調なんだと思います。」

 大柄の男の返答がおかしいが歩いてきた男は気にせず、「そうか」と笑顔を向けた後、インテリヤクザを思わせる男に向かって、

「カタ、聞き出せたか?」

 『カタ』と呼ばれた男はメガネのレンズの間の部分を右手の薬指で押し上げ、メガネの位置を調整してから、

「問題ありません。取引時の取り決めや流れ、合流の仕方まですべて把握済みです。」

「さすがだなカタ。贈収賄に関する裏付けの証拠は?」

「すでに押さえました。あとはあれを終わらせれば、この場は完了かと思います。」

「そうだな。コージ、その年上の人の口に巻いた布取ってくれ。」

 大柄の『コージ』と呼ばれた男は言われた通りにロープで縛られた男のうち一人の口をふさいでいた布を取る。

「えーと、安藤さんでしたっけ。

私達に聞いておきたいことはありますか?」

 スーツ姿の男に対して、あとから来た男が聞く。『安藤』と呼ばれた男が

「なぜ私達にこんなことをする?お前らはいったい誰だ?」

「『誰だ』か・・・・・・。

そうですね・・・・・、そうだ。俺達は『佐和田』ですよ。

あなた方もニュース等で何回か聞いたことあるんじゃないですか?」

「あのブラックジャーナリストの『佐和田』か?」

「ええ、そうですよ。

あと、なぜこんなことをするのかでしたっけ?

 それはですね、これから取材に行くからですよ。あなたの本当の取引相手をね。」

 後から来た男はニヤニヤしながら言っている。それを見てカタは肩をすくめて苦笑いを浮かべる。

 安藤が

「私達をどうするつもりだ?」

「どうもしませんよ。私達の取材が終わるまで大人しくしていてくれれば、これ以上危害を加えません。ただ、今日、取材したことはテレビで流れる予定ですからあなた方の今後はどうなるか保証はできませんけどね。」

「どういうこと・・・・・」

 安藤が言いかけたところで、「コージ、布」と男が言い、コージがもう一度口に布を巻いて安藤の言葉を遮った。

「じゃあ、コージ。俺とカタが行ってる間、この二人の見張りを頼む。」

「了解だ、アニキ。」

  男はニヤリと笑いかけて、「行くぞ、カタ。」そう言って、暗い道に向かって歩いて行く。

「コージ、丁重に扱え、相手は一般人だ。怪我するようなことはさせるな。俺が連絡したらこの薬で眠らせてから解放しろ。」

 カタはコージに薬を渡した後、先に道を歩いて行った男を追いかけた。


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