49部
「彼らが最終局面に入ったようです。
黒木さんの方はどうですか?」
坂本の問いかけに、黒木は苦笑で返す。
「うまくいき過ぎていて怖いくらいだよ。
まさかの北条さんから、和解しようと言ってきたしな。
それに俺の法案に対して、国会議員の専門職化を図るために、族議員ごとに採用する制度にした方がいいとか言い出して、少しそちらよりで成立しそうだよ。」
「乗っかってきたってことですか?」
「いや、どちらかと言うと更に厳しい制度にすることで無能な人間の排除をしたいんだろ。
専門分野に特化した議員を族議員というから、そういう政治家が運営する政治なら、無駄な人員を必要としないからな。」
「現職のどのくらいの割合が残れるのかってことですよね?
減らしすぎても、政権の運営が厳しくなりますし、他国からの批判とかもくるでしょうからね。」
「その点は、大丈夫だろ。
大臣がいなくても各省庁で対応できるんだから。」
黒木がいい、坂本が
「総理は何を考えているんですかね?
今更、黒木さんと道を同じくしたところで得することがあるとは思えないんですが?」
「あの人の真意はわからないが、少なくとも邪魔になることはないだろ。
問題があるなら、『SH』について北条さんが知ってたところだ。
武田警視総監と繋がりのある北条さんが知ってるってことは、山本の耳にもその情報が入っているかもしれない。
そうなると俺達の計画には支障が出る可能性があるだろ?」
「彼の存在が、山本さんにバレているという情報は今のところありません。
しかし、存在が知れたからと言って計画には問題はありませんよ。そうなることも見越して、計画に盛り込んでありますから。」
「気を付けろよ。
前にも言ったが、山本は物事を斜めから見るやつだからな。
見られたくないところも万全の対策が必要だぞ?」
黒木が真面目な声で言うと、坂本が
「その点は大丈夫です。
あと、僕が気になるのは黒木さんの感じた違和感だけですけど、
解決しましたか?」
黒木は黙ったまま考え、
「あの事は一端忘れてくれ。
俺の勘違いかも知れないからな。」
「わかりました・・・。」
坂本はまだ納得していないようだったが、そう答えると電話を切った。
黒木は切れた電話を持ったまま、
「死んだ人間は何もできない。
でも、死んだ人間の意思は誰かが受け継げば残る。
そういうことなのだろうか・・・・・・・・・・・」
呟いて、また思考を巡らせる黒木だった。




