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41部

「それで、お前はいったい何がしたかったんだ?」

車で移動中に山本が伊達に聞いた。

「憲法学者を訪ねていた不審人物の情報を得るためだとは思われないんですか?」

「五條が言ってた通り、影山の弟について聞くなら誰でもできるだろ。

あえて五條に会う必要はなかった。そうなると別の目的があったとしか思えない。」

「刑務所に入った人間って、三食保障されて、住居もあって、仕事もあって、そのへんのホームレスより良い暮らししてますよね。それが目的でわざと犯罪者になるホームレスだっている。

 犯罪者なんてもっと劣悪な環境で、自分が行った行為の責任を実感して、毎日懺悔して暮らせばいいと僕は思ってるんですよ。

 資料写真で見た五條は、少しふっくらとした印象でした。実際に会ったらげっそり痩せてるくらいの処遇が行われるべきなんじゃないかなと思ってたんですけど、まあ少しやせたのかな~くらいでした。犯罪者処遇の甘さですよね。

もっと、犯罪をしたことに対して反省して、二度と同じ過ちを起させないようにしなければ犯罪者処遇の意味はない。」

「つまり、受刑者がどんな生活してるのかに興味があったから五條に会いたかったってことだな。」

「簡単に言えばそうですね。

ところで、五條に影山光輝の方が黒木議員の裏にいると話していたんですか?」

「五條だけではあの銀行強盗はできなかった。後ろの大物が黒木だと話させるためには少しかまをかけてみたんだよ。」

「ダメだったわけですね。本気でそう思ってるから五條に言ったんですよね?」

「半分だな。その可能性があるがそうだと言い切れる証拠がない。

それより、他に見つかった『佐和田』の写真は黒田さんに送ったのか?」

「新たに二人発見したんですから報告はしますよ。

 こっちに関してはどう思いますか?」

「もしかしたら、『佐和田』っていうのは一人を指すんじゃなくて、グループ名なのかもしれないと思ってる。一人で多くの分野に精通して、調査力も高いんじゃなくて、本当は各分野の専門家がいて、各自調査している。

 だけど、俺らも含めたすべての人が『佐和田貴史』という一人の人間がいると思って、捜査しているから、能力の高い化け物を探してる気になってるだけなのかもしれない。」

「それは僕も思いました。相棒がいるとしても一人でできることには限界があります。

『佐和田』と名乗るだけで、知る人ぞ知るジャーナリストってイメージがあるから取材もしやすくなる。その点、顔バレしないようにすれば、『佐和田』であることが不都合な時には自分に戻ればいいわけですからね。」

「そういうことだな。次は何かすることはあるか?」

「大谷君から、前島和夫財務大臣からクレームが来まくっていて担当者を出せとうるさく言ってるみたいですよ~」

「なるほど、仕方ないな。

担当者として、こちらから丁寧にクレーム対応に向かうとしようか。」

「そう言われると思ってましたよ。」

 ニヤリと笑った伊達は電話を取り出して、大谷と少し話してから

「アポは取っておくから、失礼のないようにお願いしますと言ってましたよ。

どうしますか?」

 伊達は悪いことを考えている笑い方をしている。山本も同じように笑い

「保証は・・・・・できないな。」

 二人はニヤリと笑った。


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