4部
「まあ、今までとは大きく違いますよね。
政治家が贈収賄を疑われても、知らぬ存ぜぬで通すか、秘書にでもなすり付けて、自分は関係なかったようにふるまって、平気で国会に出てるなんてのが当たり前でしたからね。
政治家が自殺するなんて、よっぽどだと思ってましたよ。」
山本達は捜査二課の贈収賄に関する部署に話を聞きに来ていた。担当の刑事は、快く迎えてくれて言った。
「そんな簡単に色々話していいんですか?」
山本が聞くと、担当の刑事は笑いながら、
「特別犯罪捜査課にはなんでも答えろとのお達しですからね。それに『鬼引き』の事件を解決したという実績が広まってますし、全国各地の情報を総合的に分析したからこそ、事件は解決できたんだって話になってるんで、どこの部署も協力しようって感じの雰囲気になってるんですよ。」
「そ、そうですか。それで、こちらでも、自殺した議員について捜査はされてたんですか?」
山本が聞くと、刑事は
「していた人もいれば、そうでない人もいると言った感じですね。
捜査してた人物に関しては、情報をまとめてまたお届けしますよ。
ただ、こちらも別件で動いていたりなので、なかなかすぐにとはいけないですが、2・3日中にはお渡しできるように頑張りますね。」
「すみません、ご迷惑おかけします。」
山本が言い、上田と藤堂も頭を下げてその場を離れた。
「どう思いました?」
上田が聞き、藤堂も
「あれは、歓迎しているふりなんじゃないかと思ったのは僕だけですか?」
「警視総監が、自らの進退をかけて新設した課だからな。
いい顔しといた方がいいという判断なんだろ。しかも、その中身は単独捜査で勝手なことばかりして評判の悪い俺とその部下、さらに東京で働いてる奴が偉いと思い込んでるアホな奴らからすれば、地方から来た竹中さんや黒田さんだって気に入らないって感じなんじゃないか。」
「そういえば、東京から追加されたのって大谷だけですよね?
まあ、キャリアなら別に文句は言われないでしょうけど・・」
上田が言うと藤堂が驚いた顔をして、
「えっ、違いますよ。大谷はキャリアじゃなくて、ノンキャリのたたき上げですよ。」
「え、そうなのか?お前と仲良くしてるからずっとキャリアだと思ってたよ。」
山本も驚いて言い、上田が
「そうだよ、上杉刑事部長の直属の部下って言ってたから、キャリアなんだと思ってたよ。」
「大谷は、刑事部長に認められて出世して来てるだけで、階級も巡査部長ですよ。」
「今川の逆パターンだな。」
山本が笑って言うと上田も頷いた。
「それにしても、警察っていう組織の仲間なんだから、もっと普通に接してくれたらいいのにと思いますけどね。」
藤堂が言うと、山本と上田は声を上げて笑い、藤堂が
「えっ、どうしたんですか?」
「いやお前がそれ言うのかよと思ってさ。」
「配属されてきた頃、キャリアは偉いんだぞみたいな感じだったぞ、お前。」
「いいじゃないですか、もうだいぶ前の話なんですから。」
藤堂が恥ずかしそうに言い、山本と上田はさらに笑った。