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36部

「え~、ご指定の日の記録はこれですね。」

 管理室を訪れて管理人に話を通すと、管理人がパソコンを操作して、山本と伊達に見せた。

パソコンの操作を伊達が変わり、時間を追って各防犯カメラの様子を確認していく。

 足束教授から大体の時間を聞いていたため、その前後の記録を確認していくと、研究棟に入って来た人間はそんなにたくさんはいず、そのほとんどが管理人によって教員や学生などの大学関係者ばかりだった。その中で、確認が取れなかったのが3人いて、一人は30代くらいの女性で、大きなカバンを持って足束教授の研究室の2階上でエレベーターを降りている。

 もう一人は、50代後半くらいの大柄の男で、足束教授の一個下の階でエレベーターを降りていることが確認できた。

最後に現れた男は40代で小柄な男で正面入り口から入ったもののどの階のエレベーターにもその姿が映されていなかった。どうやら階段で移動したようだ。

「どうやら最後の男が怪しいですね。佐和田の身体的特徴にも合致してますし。」

 伊達が言い、山本が

「そうだな、この映像で男の顔をもっと鮮明に見ることはできるか?」

「ちょっと待ってください・・・・」

 伊達はパソコンを操作して、

「できました。カメラの解像度が低いのと角度がついているので正確な顔までは難しいですけど、おおむねこんな感じですね。」

 山本はパソコンを覗き込み、顔を確認する。

「違うな・・・・・・・」

「何が違うんですか?」

 山本のつぶやきに伊達が聞く。

「俺が一度会ったことがある佐和田はもう少し痩せていて、目元はつり目っぽい感じだった。この映像の男はふっくらしていて、目元が少し垂れてる感じだ。」

「つまり、佐和田だけど佐和田でない人物ということですか?」

「なりすましか、それとも佐和田が生きていると思わせたい誰かが仕込んだかく乱か、あるいは、小谷さんが言っていた佐和田の相棒の金田という男の可能性もあるな。」

「なるほど、じゃあ僕はこれからもう一度足束教授のところに行って、この人であってるかを確認してもらいに行きます。」

「ああ、頼む。俺はこの男がいつ出てきたかを探しておくよ。」

「それじゃあ、行ってきます・・・」

 伊達が部屋を出ようとしたところで立ち止まった。その先に足束教授が立っていたからだ。

山本が

「どうかされましたか教授?」

「いえ、私も一緒に確認しないといけないのではないかというのに先ほど気付きましてね。

追いかけてきたんですよ、ちょうどいいところだったようですね。

あと、他にも佐和田という男が訪ねたであろう憲法学者も紹介しておこうかと思いまして。」

 山本は探るように足束を見たが、足束はニコニコと笑っているだけで、感情を読み取ることが難しかった。山本は探るのをあきらめて

「・・・・・・・・そうですか。ありがとうございます、では早速確認お願いします。

この男で間違いないですか?」

「ええ、この男で間違いないですよ。」

「それではこちらの女性と男性に見覚えはありますか?」

「うーん・・・、写真が不鮮明なので、確実とは言えないですけど、この女性は安藤先生の娘さんだと思います。確か研究のために徹夜で論文を書いたりする先生で奥さんとかお子さんに着替えを持ってきて貰う事があると安藤先生が言ってました。

そうですよね管理人さん?」

 話を振られた管理人が思い出したように

「そうです、あっでも、私はこの人を見たことがないですね。奥さんは何回かお会いしてますけど。」

「そうですか、こちらの男性はどうですか?」

「この人は、たぶん・・・・・、運動部のコーチをされてる人じゃないですかね?

部長をされてる先生方で、予算振り分けを行うのに相談会みたいなのをするような話をされていた気がします。」

「教授の一個下の階で該当する先生はおられますか?」

「そうですね~・・・・・・、

ああ、新藤先生がラグビー部の部長さんをされてますね。

体格もよさそうですし、最近新しい人を雇ったと聞いた覚えがあります。」

「管理人さん、安藤先生と新藤先生は今日は来られてますか?」

「はい、おられると思います。」

「伊達、この写真もって二人に確認しに行ってくれ。」

「わかりました。」

伊達が写真を受け取り走っていった。


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